表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第3話 二人のノーデリカシー

ある日、恋人を食われた娘が獣のところへ向かった。

当然娘は獣に食われた。

しかし、娘は毒を飲んでいた。毒はやがて獣をも侵食し、獣は死んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「は!?居候!?」


「しーっ!声大きいってば!それに、あんま言いふらすのやめてね」


学校、放課後、帰り道、亮太。

いつもはくだらない話ばかりだが、今日はその話一点につきた。


お母さんに口止めされたけど、腐れ縁の亮太にならいいよね。記憶喪失のことは伏せてるし。


「へーえ、15にして男と一つ屋根の下ねぇ」


「ちょ!その言い方」


亮太はにひひひひ、と笑う。

ほんとにデリカシーがない。一番は僅差でこいつで二番は茜だ。

裸を見られた…いや、見せたのは確かに私だけど、でももっと別な反応があっても良かった。


「明日紹介しろよ!その変態外人!」


「えー明日?」


「どうせ休日は暇だろ」


「暇じゃないですー私にはもうスマホっていう忙しアイテムがあるんですぅー」


「はいはい、じゃあ10時に行くな」


「あーもう勝手にして」


亮太は私のご近所さんだ。

幼稚園の時から一緒で、まあ俗に言う幼馴染って関係なんだけど。

そういう気は一切おこらない。なぜなら亮太だから。


「そういや、お前この前誕生日だったよな」


「誕生日って…もう4日前なんですけど!」


「覚えてただけ感謝しろって、ほらよ」


もらったのはスマホアクセサリーだった。

クマが両手でぶらさがってるようにみえて、私が好きなユーモアと可愛さを内包していた。


「わっあんたにしてはいいセンス」


「俺の誕生日に3倍返しな」


「ちょ、ホワイトデーじゃないんだから!」


「女だけ卑怯だぜほんと」


悪い奴じゃないんだけどほんとに口は悪い。

最近そこがいいっていう女の子増えたけど、どこがいいんだかさっぱりだ。


そうこうしてるうちに私の家に着いた。


いつも通り、指紋認証のオートロックを開け、門の中に入る。


「なーいっつも思うんだけど、お前ってどっかいいとこのお嬢さんだったりすんの?」


「いや?あーでも親族の結束?みたいのは強いかも。週一でそーいう集会あったりするから」


「へーえ、逆玉の輿じゃん」


「そうだよー!だからもうちょっともててもいいはずなんだけどなあー」


「鏡見てから言えよ」


「お願い真顔で言わないで」


それからまた少し、いつものよーにふざけあってだべって、亮太と別れた。

あーあ、やっぱいいなぁ友達って。

高校行って、大学いって、大人になっても、亮太とはこの関係を続けていきたいなぁ。


あいつはもうちょっと女の子に対する接し方変えたらモテるんだと思う。

イケメン嫌いで通ってるけど、それでも男子からの支持率は高いし。

あいつのオープンノーデリカシーさえなんとかなれば…いや無理か。


そんなとりとめのないことを考えて、真里は自分の部屋のドアを開けた。


茜がいた。


「わっ!?」


完全に日常モードに入っていた真里は不意を突かれた。

茜は最初に会った時のように、真里を見つめ佇んでいた。


「茜、どうしたの?」


自分の部屋に異性がいるというシチュエーションに慣れていない真里。

ポーカーフェイスにつとめているが、その内心はかなりてんぱっていた。

一方、茜はそんなことなどつゆもしらず、まっすぐに真里を見つめ、


「なんか、真里の部屋ってにおうな」


おめでとう茜くん。

あなたは2位に大差をつけてノーデリカシー男1位に輝きました。


「あんたって…ほんっと…デリカシーのない…」


ドキドキした分の寿命を返して欲しい。

かなり沈んだテンションになった真里は怒る元気もなくし、脱力した。

あーもう、記憶と一緒にデリカシーも忘れちゃったんじゃないでしょうね。


「いや…そうじゃなくて」


茜は、真里に手を伸ばす。

とっさのことで真里は反応が遅れた。

茜は真里の髪をかきあげ、鼻を首に近づけた。


「いい、香りだなって」


限界だ。

真里はそう感じた。何がはわからないが。


次の真里の行動は早かった。

茜が視認できないほどのスピードで茜の背後に回りこみ、重心が傾き過ぎない絶妙な力加減で背中にタックルをかまし、扉に損傷を与えないギリギリの力で閉める。


ここまでの行動を一息で行った、そのせいだけではないだろう、真里の鼓動の激しさは。

真里は背中を扉につけ、ずるずると座りこんだ。腰が抜けたとも言う。


「もう、なんなのあいつ…!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ