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第10話 真実


御堂に入ると、明かりがついたのがわかった。

横で茜の息を飲む音が聞こえる。

ーーー予想はしていたけど、一族勢ぞろいってことか。


「あーあ…せっかく平日にきたのになぁ。いい大人が仮病ですか?」


「…篠宮家第7代人柱篠宮真里、貴殿の使命を言い渡す」


この声は…大叔父さまかな。

こんな渋い声もだせるんだね。

真里は一歩前へ出た。


「…お父さんと、お母さんいる?いたら…産んでくれてありがとうって、伝えてください」


そのとき、一人の女性の泣き声と、それを取り押さえる物音が聞こえた。

お父さんもーーきっと腕に爪を立ててるのかな。そうだったらいいな。


「真里、これは…」


「茜、あなたはね。ここの神様っぽいのよ」


「真里殿、貴殿の使命はーーー」


「毒を飲んで、神に食べられること、ですよね」


ずっと考えていた。

茜のことも、家のこと、夢のこと。

それは全部、繋がっていた。


「…真里っ!」


もう見えないけど、茜が苦しんでるのがわかる。

私は茜の手を握った。


「あかね、私夢に見たの。茜さんのーーーあなたを最初に殺した、女の人を」


茜が頭を押さえるのがわかる。

ーーー茜さんが教えてくれた。夢を通して、茜さんの記憶を見た。


「…なんと、こんなことが」


「茜って名前は、その人の名前ですよね?…本当の名前、教えてあげてください」


「…山犬様は、山犬様じゃ。名などない」


「あはは…そう、ですか。それはちょっと…残念です」


ばた、と真里は倒れた。

全身が鉛のように重かった。体の熱がどんどん失われていくのがわかる。


かけよろうとした茜は、その強烈な甘美な匂いに思わず距離をとってしまった。

ーーーいけない。これでは真里を傷つけてしまう。

真里はそんなことを思うあかねを想像して、少し笑った。

そして、大叔父様の方を向いた。


「…なんで、わかったんですか?ここにくるって」


「…監視モニターじゃ」


「…そっか…今はそういう技術があるから、毒の効果も引き伸ばせたりしたんですね」


全てはこのときのためだったのか。

うちは代々薬剤師で、一週間に一度の定例会はその動きを監視するためのものだったのか。


そして、ずっと、この日のために、私は生きてきたんだ。

真里は自分の目に涙があふれるのを感じた。


そのとき、たくさんの人が倒れる音とと、女の人の叫び声が聞こえた。

両親だった。両親が制止を振り切って真里の元へ向かおうとしていたが、再び押さえつけられたらしい。


「真里っ!!真里ごめんなさい!!あなたの!15の誕生日の時に毒を入れたのは私なの!!私が、あなたをっ」


「お、かあさん…!」


「っ!真里!!ごめんなあ!!こんなととになっちまって!!もっとお前の欲しいものいっぱい買って、好きなものも毎日食わせてやりたかった!!!」


「おと、うさん…」


よく耳をすませば聞こえる。

たくさんの人のすすり泣く声や、声を殺している様子。

ーーー一族の人たちも、みんな私の死を悼んでくれている。


ああーーーなんだ私、めちゃめちゃ愛されてた。

涙は全然止まる気配がなかったが、真里はどこか満たされた気持ちになった。

あかねに向き合う。


「あかね」


「嫌だ…!!真里を傷つけたくない!!」


「もう、辛い、でしょ?」


「だめだ…いやなんだ…!!!」


激しい風が通り過ぎた。

見えないけど、わかった。

茜が、本当の姿に戻ったんだなって。


「あかね」


”…来るな”


もう人語を話さない。

真里は、あかねの方へ近づいた。


「あかね」


”…お前だけは、お前だけはいやだ”


「ーーーそれは、私が茜さんに似てるから?」


あかねがたじろいでいるのが見えなくてもわかった。


「好きだったんでしょ、茜さんのこと。だから、恋人さんを食べちゃったんだよね」


”…なぜ、そう思う”


「決死の覚悟できた茜さんに殺されてもいいって思ったんでしょ?」


”…だが、今はお前が”


あかねに手を伸ばすーーー綺麗でさらさらした毛並みだった。


「多分、真っ黒で綺麗な狼なんだね。目は真っ赤だけど」


”真里っ俺はお前が、”


「あかねーーーもう、苦しいよ。楽にして」


”ーーー真里”


真里は、暖かい風が自分を包むのを感じた。

これは、あかねだーーーあかねの力が私を包んでいるのだ。

真里は自分の意識が遠のくのを感じた。

そのとき、誰かが自分の頭を撫でているのを感じた。

撫でられることは嫌いだったが、なぜか”その人”にならいいと思った。

”ーーー真里、あなたに覚悟はある?”

”ーーーずっと、あかねのそばにいるって”

私の答えは決まっていた。





真里の体が白く輝いた時、突風が社を襲った。

森の木々は倒され、社は崩壊した。

しかし、不思議なことに、死傷者は一人も出なかった。


その数日後、地元の新聞の片隅には、一人の少女が行方不明と報じられた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


森の中、少女は一匹の多いな狼を上に寝そべっていた。

今日は満点の星空だった。


「あのね、あかね」


”ん?”


「私、あかねに飲まれる時ーーー会ったんだよね。茜さんと」


”な、なに!?”


「…ちょっと何その反応。なんで動揺してるの」


”そ、そうかーーー茜は魂ごと飲み込んだから、俺の魂と同化してるのか”


「…キャラ違う」


”それで、茜はなんか言ってたか?!”


「…ふーん。教えようと思ったけどやーめた」


”真里!”


「ほんっとあんたってデリカシーのないやつ!!」






娘は恋人のことを愛していた。

また同時に、山犬様も愛してしまった。






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