前世の記憶持ちの場合
*前世の記憶・知識に対して攻撃的です。それを踏まえて読んでください。
作者本人としてはその設定小説を批判しているわけではありません。ただ、こういう考えもあるよという意味合いで書いています。寛大な心で読んでください。
よく小説なんかで前世の記憶・知識がある主人公のお話がありますよね。転生した知識を使って困っている人達を助けるとか、身近な人の最悪な未来を救いたいというのなら私もその知識を使うことは納得出来ます。まあ、その場合はその人は自らのエゴをキチンと自覚してる事前提ですがね。何故って、そんなの決まっているじゃないですか?
前世の記憶がある場合は本来のその人の無垢な魂や心をその前世の記憶が乗っ取るか、本来であればその人間が成長という過程で得る人格を奪ってしまうというだからです。前者は他人が別の人間の体を乗っ取るという事。後者は本来成長と共に経験して得るべきものをズルをして得るということ。
前世の知識の場合はどうなんだ?前世の知識のお陰で救われた命に対しても同じことが言えるのか?当然同じですよ。当たり前でしょう?
前世の知識がある場合、それを活用して救われた命があることは確かに素晴らしい事だと思います。けれど、それは本当に正しい事なんでしょうか?本来辿るべき工程を大した努力もせず答えを提出する。それはズルです。そのそしりを受けても構わないという個人問題で終わるものではありません。努力をしなくても解決するという前提が出来てしまえばその前世の知識のある人が解決してくれるという考えを抱く人が出てしまいます。そんな考えを抱くのは全てが全てではないでしょうが、もしその前世の知識の人が対処出来ない問題が発生した場合そんな考えを抱く人は直ぐには問題解決に努力はしないでしょう。きっとあの人が何とかするという楽観的にみるでしょう。
もし、その人達がはじめから問題解決の為に協力してくれたなら助かった命があったならその人はどう責任を取るのでしょうか?私なら責任なんて取れません。命はその人の全てであり、たった一つの命ですら人間である私には背負えないものだからです。単純な目先だけの問題しか見ない人間ならば、一層何もしないというのが最良な選択だと思います。
ああ、因みにこれらを無自覚でする人間は最悪ですね。自覚がないというのはタチが本当に悪いですから。無知も同じくですがね。
ここまで散々語ってなんですが、実は私前世があるなんて全く信じてないんですよね。私こう見えて神様を信じているので、神様がそんな不平等を行わないと信じています。まあその辺りは個人の自由ですから聞き流して下さって構いません。
さてここからが本題です。確かあなたは前世の記憶があるなんて言って色々問題を起こしましたよね?ああ、言い訳は結構。あなたの証言、周囲の証言、その他の資料からおおよその事は知っていますからね。じゃあ、何故自分がここにいるのか疑問に思いましたか?それは私が最終的にあなたの処遇を決めるからです。おや、私があなたの処遇を決めるのを疑っていますね。まあ確かに私みたいな人間がこんなことをするのはおかしいですよね。実は私も不本意なんですが何故かそういう事をする役職にいつの間にかなっていて、本当に不思議です。人が人を裁くなんて本当嫌な話です。
おっと、少し話が脱線しましたね。私があなたに面会している理由の続きですが、資料や報告書だけでその人物を見極める事が私には不可能だからです。勿論、この一度限りの面会であなたという人物を理解出来るなんて思い上がってもいません。だからあなたへの処遇は暫くの間保健室登校をして貰いながら3日に一度こうした面会を続けて、その間様子を見て決めます。一部の頭に血がのぼった方々は、あなたを退学にしろなんていますがそんなのは私には関係ありません。文句があるなら私をこんな役職に就けた方々に言って貰います。
まあ、投票で決まった身なので大多数の生徒や教職員の皆様に文句を言うという非効率的行動ですが。捕捉までに、3日に一度なのはそれなりに私も多忙だからです。それでは、第一回桂木めいさんの面談を終えます。お疲れ様でした。
「委員長」
「んー、なんだい副委員長君」
「何故委員長はどんなに問題がある生徒に対しても、一定期間猶予を与えるのですか?」
「さっきの面談でも言っただろう?一度だけ話しただけで人を量れるはずはないからって。」
「……、彼女の起こした問題を考えれば猶予など与えなくてもよいのでは?」
「それは短慮だ。長い目で見ればここは頑張りどころだ」
「……どういう意味でしょうか?」
「そのままだ。学校生活は長い人生の中でも、多大な影響を人に与える。良い意味でも悪い意味でもだ。ここでただ処分を与えて終わりというのは他者を平然と切り捨てるという意味でもある。それが当然だという思考を抱かせるのは危険だからだ。あとは私情だ」
「私情とは?」
「間違えを起こしてただ切り捨てられるのは見てて気持ち良くない。あとは、チャンスはキチンと与えるべきだ。」
「チャンスですか?」
「人は反省することが出来る生き物だ。そして間違いを必ず起こす生き物でもある」
「それがチャンスを与える事と関係があるのですか?」
「ある。今回の場合チャンスを与えるという事は許しを与える機会でもある。友達同士で喧嘩別れしたら後味悪いだろう?それなら、さっさと仲直りさせればいい」
「……友達同士の喧嘩ですか?」
「ああ。私から見ればそう見えた。本人達がそう思ってなくてもな。短慮も良くないが、ごちゃごちゃ考え過ぎるのも良くない。お互い相手を利用していた部分もあるんだから似た者同士で気も合うだろう」
「件の女子生徒2名を嫌っているように聞こえますが…」
「気のせいだ。寧ろ好ましく思っているよ。自分に正直なのはいいことだ。まあ、欲望が丸出しは良くないがな。今回の件でお互いが自分の悪い所に気付かせる手伝いをするのが、私達の仕事だ」
「簡単に言いますね」
「簡単な仕事をしたいなら監査を辞めればいい。私と違って辞められる立場なんだからな。なんで、委員長は辞退出来ないんだろうな。意味が分からん」
「生徒と教員から信頼出来る人材として選ばれましたからね。」
「しかしあれは詐欺だろう?この学園に入学したからには最低一年は部活動に所属しなければならない。それを逆手に取って実は次期監査やら生徒会の人員探しが目的だったと聞いた時は流石に別の学園に転校してやると思ったぞ。」
「御愁傷様です」
「副委員長には可愛げがないし、辞めたい。」
「おや、そうすると監査の特典を受けれなくなりますよ」
「監査の仕事がなくなればストレスから解放されるから問題ない。ストレスがあるからその反動でいつもより酷いだけだ」
「……。」
「監査辞めたい」
委員長の発言は極論です。委員長本人も自覚していてわざとあんな言い方しています。委員長は現実主義者で独自の考えを持っています。作中で現実主義者?と首を傾げる部分は零れ話で明かします。委員長の可愛げのなさがよく分かる話になります。
おそらく各方面から苦情が来ると思います。しかし作者は後悔していません。責任・問題点をこの設定小説では描写していないものが多いような気がしたので書いてみました。