かつて見た夢
※注意書き
例によってあれこれ誤字が多いと思います。
あと、オチがほぼ作者の私怨で構成されていますのでご注意下さい。
この作品を読んでどんな思いをし、どんな被害を被ったとしても、当然ながら作者の責任ではありません。
21世紀の末に突如勃発した第二次日中戦争末期、日本はついに中国人民解放軍の本土上陸を許してしまう。誰もが絶望した中、両軍を物理的に壊滅させることで図らずも民衆を救ったのは、巨大な虫であった。擂り鉢状の巣穴へ兵士や軍用車両を巻き込み喰い殺しては、瞬く間に蛹となり羽化しその美しい姿を見せた巨大な羽虫。その羽撃きで両国軍の航空機を撃墜しながら勇ましく飛ぶ姿は、生き残った民衆に勇気と希望を与えた。そして時は過ぎ22世紀、あの時間近に羽虫の羽化を目撃した少女は年老いて病に冒され寝たきりの生活を送っていたが、それでもあの時目にした"救世主"の勇姿を忘れられずにいた。
老婆は子や孫に羽虫の逸話を語り継いだが、その一方で多くの人々はそれを単なる虚言或いは幻覚扱いし鼻で笑っていた。老婆の子や孫達も、認知症の弊害による虚言だろうとその話を真面目に信じてはいなかった――ただ一人、老婆を愛してやまなかった少年を除いては。
少年は老い先短い祖母へ再びその羽虫が飛ぶ様を見せることを夢見ていた。程なくして老婆は永眠したが、それでも諦めきれない少年は『せめて祖母が見た羽虫をこの手で育て、再び大空を飛ぶ姿を見たい』と思った。だが成長するにつれ辛い現実にぶち当たり夢を失った少年はそのまま大人になり、うだつの上がらない中年サラリーマンとして独身のまま不毛な日々を送っていた。そしてある年のこと、それまでに例を見ない凄まじい不況の煽りを受けた中年の勤め先が倒産してしまう。失業した中年は必至で勤め先を探したが、就職先は見付からない。
絶望した中年の前に、一人の若い女が現れる。流離いの占い師であるという女は中年に『幼き日の夢に向かって全力を尽くすべし』と助言する。その時中年の脳裏に、ふと幼い頃の純粋な"夢"―――即ち『祖母が見たという羽虫を育て、再びこの国の空へ羽ばたかせること』を思い出す。早速動き出した中年は、羽虫の手掛かりを探しに家財の全てを売り払い放浪の旅に出る。
長旅の末に、羽虫の正体が限られた生育条件でのみ巨大に育つある種の下級神格或いは妖怪に等しいものである事を知った中年は、同時にその卵を入手し育成に取りかかる。だが育成は困難を極め、羽虫は一般的なサイズのままただ一つの卵だけを残して死んでしまうばかり。そうこうしている内に中年は老人となり、足腰さえ動かなくなってしまう。やがて行き倒れている所を地方自治体によって保護された彼は老人ホームへ収容され、ただただ漠然と機械的に生き続けるだけの日々を送ることとなってしまう。
そして老人が90歳の誕生日を迎えたとき、彼の前に一人の少年が現れる。二つ上の兄の孫であるという彼に嘗ての自身の面影を見た老人は、少年に祖母が見たという羽虫の話をする。話に興味を示した少年に、老人はずっと隠し持っていた羽虫の卵を託す。そして老人の夢を引き継ぐことを決意した少年の、壮絶な自由研究が始まる。
次回、羽虫の正体が明らかに!