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王城はご近所です

 

 王城と言ってもここは既に王都。そして今私が居る通りの一本隣が王城へ続くメインストリート。そんな訳でここから二十分も歩けば王城の外門へ着く。

 脇道を通ってメインストリートに出れば更にそこは賑やかだった。建物には色とりどりのリースや国旗が飾られ、流れるのは音楽家達が奏でる陽気なお祭の曲。再びお祭り気分を煽られ、自然と私の鼻歌も復活する。そうしていつの間にかリアスくんと繋いでいる手を軽く前後に振りながら歩いていたら、くいっとその手をひっぱられた。


「リアスくん??」


 隣を見れば、彼はある店の屋台にキラキラとした熱い視線を注いでいる。まるで蒼竜様を見た時の子供達と同じ、興奮と憧れを抱いているような目だ。視線を追った先にあったのは手ぬぐいを頭に巻いた若いお兄さんが飴細工を作っている屋台。


「うわーっ! キレー!」


 私も一緒になって屋台を覗き込む。流れるような素早い動きで伸ばされたり、棒に刺さってくるくる回されている白い飴。仕上げにお兄さんがハサミを入れれば、あっと言う間に白竜様を模した飴の出来上がり。


「すごーい!!」


 私がその出来に関心している間、リアスくんは並べられたカラフルな飴をじっと眺めていた。竜だけでなく鳥や魚、馬や花の形をしたものもある。確かに眺めているだけで楽しいお店だけれど、それ以上に先程まで無口で無愛想だった少年の可愛らしい姿に頬が緩む。

 私はお使い用に持っていた籠から自分の財布を取り出して、彼の隣にしゃがんだ。


「リアスくん。私飴が食べたくなっちゃったら、ついでにリアスくんのも買ってあげるよ。どれがいい?」


 途端ぱっと彼の頬が赤くなる。あれ、なんだこの反応。益々可愛いじゃないか。

 遠慮しているのか中々欲しいものを言わなかったけれど、最後にそっと指を差したのは緑色の花の飴。私がまずそれを買い、お兄さんがリアス君に飴を手渡す。すると彼はそれを私に差し出した。


「え? これはリアスくんが食べていいんだよ?」


 だが彼は首を横に振るだけ。とりあえず貰っておけばいいのかな?

 彼から飴のついた棒を受け取るとその顔が再び赤くなり、そして嬉しそうに目を細めた。どうやらこれで正解みたい。あ、もしやレディーファースト的な? 流石上流階級。こんな小さな子供でもしっかり紳士的マナーが身についているらしい。

 私が自分で食べる為に買ったりんご型の飴を代わりにリアスくんにあげれば、素直に受け取り口に含んだ。

 あら、笑えるんじゃん。やっぱり笑顔は可愛いね。子供はこうでなくっちゃ。


 お兄さんにお礼を言って屋台を離れ、再び私達は手を繋いだ。目の前には真っ白な王城。まるでシンデ○ラ城のような建物だ。城下に住んでいる私は毎日見ている光景だけれど、見飽きることは無い。平民には到底縁のない場所。でも生きている内に一度は中に入ってみたいものである。


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