結構押しには弱いのです
「今日は誰かと一緒に来たの?」
「…………」
「おうちはどの辺?」
「…………」
前言撤回。何とか名前だけは教えてもらえたけれど、やっぱり動物と人間の子供じゃ勝手が違うようです。
困ったなぁ、と隣に立っているハロルドさんに目線を送る。だが肩を竦められてしまった。多分ハロルドさんも似たようなこと訊いて駄目だったんだろうな。
「じゃあさ、どこに行くつもりだったの?」
「…………」
再び無言。けど今度はそれだけではなかった。迷子の少年リアスくんがある方向を指差したのだ。その先にあるのは――
「……王城?」
すると彼はこくんと頷いた。やっぱり貴族の子息だったみたい。しかも新節祭で王城へ招待されるような大物貴族。
「とりあえずお城へ連れて行って貰えばいいんですかね?」
「そうだな。警備の騎士にでも預ければ親御さんと連絡が取れるだろう。じゃあ俺が……」
ハロルドさんが言い終わる前にリアスくんの手が再び動く。その先は……私のスカート。
あれ? なんで? なんで君は私のスカートの裾を握っているのかな?
ぎゅっと口元を結んだまま私を見上げてくるリアスくん。待て待て。睨まないで。少年とは言え整ったお顔に睨まれると迫力があるんだって。
そんな私達を見てハロルドさんが一言。
「どうやら懐かれたみたいだな。流石カノン。悪いが城へはカノンが連れて行ってやってくれないか?」
「えぇ!! でも私はお使いの途中で……」
「大丈夫だって。城はここからそう遠くないし、別に急ぎの用じゃないんだろ?」
「まぁ。そうですけど……」
「じゃ、頼んだよ」
すばらしいほど良い笑顔で押し切られてしまった。さっさと店の中へ戻るハロルドさん。残されたのは私とリアスくん。今もまだ彼は私のスカートを握ったまま離す気配が無い。マジっすか。
「……じゃあ、行こうか。リアスくん」
スカートを握られたままでは歩きにくいので、彼の手をそっと解いて手を繋ぐ。びっくりした顔をしていたけれど嫌ではなかったみたい。その証拠に歩き始めればぎゅっと握り返された。
というわけで、迷子を王城へご案内です。