見た目は子供。中身も……子供?
結論から言いますと私、高科風音はリーリアス王子と婚約することになりました。
私からすると『お友達からお願いします』という心情だったのだけど、チンタラしている間に私を他の男に盗られたら困ると彼が主張し、こんな結果になりました。ただ正式な結婚はリアスくんが成人し、私も結婚に納得してから、と言ってくれた。それでも既に翠竜の王家皆さんは嫁決定な扱いでしたが……。まぁ、そこは考えるのを止めよう。女は度胸だ。
「あのー……、リアスくん?」
「…………」
陛下達とのお茶も無事に終わり一息。けど何故今こんなことになっているんだろう?
王城にお呼ばれして3日目。今日いっぱいで新節祭は終わり。明日の朝にはリアスくんも翠の国に帰らなきゃならない。
二人の想いが通じたのは昨日。そして翠の国の国王陛下と王妃、兄王子達と面会して婚約のお許しを得た(て言うか既に決定事項だった)のは今日の昼間。そして現在すでに夕方。
私はまだ与えられた客室にいて、そんでもってリアスくんと並んで居間のソファに座っている……って言うよりむしろリアスくんが私の腰に引っ付いている。
「リアスくん。いい加減離してくれないと帰る準備ができないよ」
無言で横からしがみつく腕に力を込めるリアスくん。ちょ……ちょっと待って、このままではお腹を圧迫されすぎて内臓が飛び出そう。
「リアスくんってば……」
「なんで家に帰るんだ! カノンは俺の婚約者だろう!」
「それはそうだけど。此処に滞在するのは元々3日って約束だったし。まさかこのまま一緒に翠の国に行くわけにも行かないでしょう?」
「別にいいじゃないか、このまま共に国へ行っても! 荷物が必要なら取りに行かせる!」
頑なに私がヘルケさん達の下に帰るのを嫌がるリアスくん。可愛いなぁ。
でも此処にいる間大人の男性のような言葉や仕草で私をドキドキさせたり、安心させてくれたりしたくせに、今じゃすっかり幼い子供に逆戻りだ。
「私もその内翠の国にはいくつもりだよ? でも、お世話になった人達に挨拶もしなきゃいけないし、急に私が居なくなったらヘルケさんのお店も人手が足りなくて困るでしょう?」
せめて次の従業員を雇い、周囲に迷惑がかからないよう準備をするまで待って欲しい。そう頼めば、リアスくんは不承不承頷いた。
「その内っていつまでだ」
「えーと、一月後ぐらい?」
「長い!!」
「え、えぇぇぇ!! じゃあ、半月?」
「駄目だ! 長すぎる!!」
「そんなこと言ったってぇ」
何百年と生きる竜のくせに、たった半月が長すぎるってどういう事なの!!?




