ドッキリを希望します!!
漫画とかであるよね。背景に“どーん!”とか“バーン!”とか書いてあるやつ。今私が見ている光景に効果音をつけるとしたら正にそんな感じだと思う。
(お、美味しそう~~~~~!!!)
今、私の目の前にあるのは超超豪華なフルコース料理の数々。フランス料理なんかと違い、日本と同じくこの世界では食事を一度にテーブルに出す。その為、ぴしっと敷かれた濃紺のテーブルクロスの上には前菜からメインまで所狭しと高級料理の品々が鎮座している。
皆様お気づきでしょうか? そうです。私はまだ王城の客室におります。その理由は簡単。私を呼んだ張本人リーリアス王子が夕食の時間になっても帰してくれなかったからです。
「あの……」
「カノンは何が好きなのだ?」
「いえ、そうじゃなくて……」
「食べたいものがないなら下げるか? コックに別の料理を持ってくるよう言って……」
「そんな勿体無い!!」
「カノンは食べないのだろう? なら……」
「食べます! 食べますから!!」
慌てて言えば、隣に座ったリーリアス王子がにやりと笑った。
はい。何コレ。おかしいよね?
まずおかしい事その1。私はね、アリッサさんのミルフィーユが食べたいと言ったんです。だから帰りたいと。なのにどうしてこんな豪華フルコースをご馳走される羽目になっているのでしょうか?
おかしい事その2。何故王子は私の隣に座っているのかな? テーブルは丸です。丸テーブルに二人だけです。だったら普通向かいに座るよね? 何故に隣?
そんでもっておかしい事その3。その美味しそうなお肉が刺さったフォークは何故私に向かって差し出されているのですか! それ自分で取ったなら自分で食べれば良くない? え? 口開けろって? それはアレですか? 『あーん』的なアレな訳ですか? てか、そんな羞恥プレイ出来るわけないでしょうが!!!
えぇ? 食べないなら料理を全部下げさせる? あーもう分かりましたよ!! 食べればいいんでしょう! 食べれば!! こちとら一般人ですよ! こんな豪勢な料理をポイッと捨てられるわけ無いんだから!!
ニコニコと笑いながら料理を食べさせてくるリーリアス王子。何だろう。この疲労感。私は一歩も動かずに美味しい料理を食べていると言うのに、またもやライフポイントがじわじわと削られているよ。部屋に二人っきりなのがまだ救いか……。
ん? 今度は何? 次は私が食べさせる番? あのねぇ、そんなバカっプルみたいなこと……。あーもう! 分かった! 分かったから!! やればいいんでしょう! やれば!
はい、どうぞ。って、うわぁ。美味しそうに食べるなぁ。こんなにいい顔されたら料理作ったコックさんも満足だろうね。
(…………ん?)
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! しまったぁぁあ!!! もしかしてこれも竜の求愛行動に入るの!!? 私の馬鹿――――!!
もう何でもいいから早く“ドッキリ”の看板持った人出てきて!! お願い!!




