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人はそれを餌付けと呼ぶ

 急に黙り込んでしまったレビエント様の様子が気になり、内心冷や汗をかきながら返事をじっと待つ。すると今までとは違う、大真面目な顔が私に向けられた。


「君はさ、竜がつがい……伴侶に望む相手を見つけた時、どうやって気を引くか知ってる?」


 私がソッコー首を横に振ると、レビエント様が苦笑する。


「動物の求愛行動は様々だ。角や羽の美しさを披露したり、歌を唄ったり踊ったり、恋敵と戦ったり。けど、その内の多くは生活力を見せてアピールする方法が多い。立派な巣を作って雌を待ったり、また意中の雌にエサを運んだりね」

「そうですね……」


 雌を得る為に孔雀が羽根を広げたり、キリンが長い首をぶつけ合って喧嘩するとか言うのは元の世界でも聞いたことがある。そういった本能的な行動は世界が変わっても大差ないのだろう。

 けれど何故突然そんな話になるのかその意図が分からず、私はただ相槌を打つ。


「それは竜も例外じゃない。竜は自分のつがいを見つけたら、まずエサを分け与えて誠意を示す。リーリアスが君にしたようにね」

「……はい?」

「つまり、あの子が先に君へ飴を手渡したのは、親切心からではなく求愛行動だったって事だ」


 ……するってぇと、アレですか。リーリアス王子が私に飴を譲ったのは求愛していたのであって、受け取った私はそれに応えたことになると。貰った代わりに私が渡した飴も当然求愛の意味があって、私達は飴屋のお兄さんの前で互いに告白しあっていた訳ですか?


 こ……こっぱずかしいぃぃぃぃぃいい!!!!!! なんじゃそりゃぁぁぁぁぁああ!!


 ん? いや、ちょっと待って。なら、さっきの求婚は? 竜の求愛行動を当然リーリアス王子は知っている。そしてそれに私が(意図的ではないにしても)応えている。それなのに言葉でプロポーズしたら「ちょっと待て」ってどうよ? 求婚した側からしてみれば突然手のひらを返されたも当然。


 え、何? 私悪女?

 もしや、いたい気な少年の恋心を持て遊んでいると思われても仕方ないのでは? しかも相手は一国の王子。そんなことがバレたら今度こそ牢屋一直線……


「……?」


 くすくすと軽い笑い声が聞こえて、私はどっぷり嵌っていた思考から浮上した。顔を上げれば向かいに座ったレビエント様が優雅に足を組んで笑っている。まるでモデルさんのような美しさですが、それって私を見て笑ってるんですよね?


「あのー……」

「君は赤くなったり青くなったり一人で忙しいね」

「……はぁ」


 好きで百面相してるんじゃないんですが。もしや持て遊ばれてるのは私の方??

 とりあえずあの飴の受け渡しは無かったことにしてください!! 知らなかったからには不可抗力でしょう!?


 ……ってあれ? いつの間にかレビエント様の姿が見えません。

 ちょっと待って! 混乱させるだけさせといて一体何しに来たの、あの人!?


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