求婚は突然に
おーい。ちょっと待て。今、目の前で私の手を握っているのはどこからどうみても11・12歳くらいの少年。つまり私にとっては小学生! ランドセルだよ! 私がまだ未成年だから犯罪じゃないかもしれないけど、悪いがショタの趣味は無い!
「あ、あのね、リーリアス殿下……」
「昨日のようにリアスと呼んではくれないのか?」
いや、だってそれは君が王子様だと知らなかったからであって。第一私は街人! 平民! どう考えたって身分がつり合わないでしょう! しかもこの世界の人間でさえないのに。まぁ、異世界人であることは内緒だけどもさ。
あんれ〜〜? いつの間に君立ち上がったの。私が座っているお陰でリーリアス王子に見下ろされる体制になっている。そして徐に彼は握っていた左手に唇を落とした。
(えぇぇぇ!!!)
二日連続で手のひらにちゅーです。
「レビエントがカノンに口付けした時、本気で殴ってやろうかと思った」
あわわわわっ。あんなお綺麗な顔を殴るなんてダメですよ! 姿絵を売っていたおじさんも言ってたけど、この国の女性にレビエント様は人気ですからね。傷でもつけようものなら悲鳴が上がりそうだ。
あれ? でもそれって、王子は嫉妬してくれたってこと? 本気で本当に……そういう意味で私が好きなの?
「あの……殿下?」
「なんだ」
「その……、何で……」
私のどこが好き? なんて恥ずかしいこと言える筈が無い。けれど気になる。昨日初めて会ったばかりで、しかも相手はこんな一般ピーポー。どうして結婚なんて言えるほど私を気に入ってくれたんだろう。
ごにょごにょと言葉を濁してると、彼はふっと大人びた笑いを見せた。だから君はお子様でしょーが!! なんで余裕たっぷりなのさ!
真っ赤になった私にリーリアス王子の顔が近付く。そして耳元で囁いた。
「カノンが好きだ。出会ってからの時間なんて関係ない。お前を誰にも渡したくない。だから……」
どんどん近付く王子の顔。そして唇同士が触れそうになった時、あまりの衝撃にフリーズしていた私はようやく我に返った。
「ちょちょちょちょちょっと待った―――――!!!! 私は一般人なんですってば!! どう考えたってこんなの周りが許す筈無いでしょう!! しかも君はまだ子供でしょうが!!!」
「……俺は今年30歳だ」
憮然とした顔でそう言ったリーリアス王子。
あら、中身は立派な大人? 君もしかして、名探偵的なアレですか?




