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右斜め上の王道

 騎士二人が去った客室。結局リーリアス王子と二人きりになってしまった。

 私はぎこちない動きでソファに座り、目の前の彼を見る。見た目は殆ど変わらないのに、騎士やメイドさん達に命令する姿はまるで昨日と違っていて、なんだか萎縮してしまう。


「カノン」

「……はい」

「急に呼び出してすまない。昨日の礼と、聞きたいことがあったんだ」


 歳の割りに口調も随分大人びてるなぁ。昨日は全然しゃべってくれなかったから、私が知らないのは当然か。

 エメラルドグリーンの瞳がこちらを見ている。あぁ、綺麗だな。当たり前だけれど瞳は昨日と同じだ。


「昨日はありがとう。道が分からなくなっていたので助かった」

「あ、いいえ。あれ位大した事は……」

「それと今日、隣に居た男は誰だ」

「……はい?」


 隣って、やっぱあれ? パレード見物していた時のことだよね? なんでそんなこと聞くのだろう。でもルードさんに迷惑をかけるわけにはいかないので取りあえず名前は伏せておこう。


「あのー、それってパレードの時の……ですよね?」

「そうだ」

「彼は私の面倒を見てくれているお兄さんです」

「兄か」

「……えぇ」


 どうやら血の繋がった兄妹だと勘違いしているみたいだけど、私にとっては親戚のお兄さんみたいな存在なのであながち間違いではない。余計なことは言わずにおこうと考えていると、リーリアス王子は何故かほっと息を吐いた。どことなく先程までの硬い空気が和らいだ気がする。少なくとも眉間の皺はなくなった。


「あの、わざわざお礼を言ってくださる為に此処へ?」

「あぁ、そうだ。それと……」


 彼は立ち上がり、テーブルを回って私の目の前に立つ。そして何故かひざまづいた。流れるような仕草で私の左手をとり、小さな両手で包まれる。

 あ、温かい。手を繋いで歩いた時よりも温度が高い気がする。子供は体温が高いと言うから、それでかな?


「カノン」


 昨日は一度も呼んでくれなかった私の名前。リーリアス王子は顔を上げ、真っ直ぐに私を見た。その目が余りに真剣で何も言えなくなる。

 そんな彼が紡いだ言葉は――


「カノン。私と結婚して欲しい」


 ……くらり


 部屋が揺れたと思ったら眩暈でした。何だこの展開。王子様からの求婚。ただし相手は幼い子供。しかも竜。


 これも王道と言うのでしょうか?

 

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