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お迎えと書いて拉致と読む

 パレード見物が終わった私はただ今一人で出店巡り中。騎士であるルードさんは警備の当番の為に既に仕事へ行ってしまった。


 通りに立ち並ぶ様々な出店の中に王族の絵姿を売っている店を見つけ、思わず立ち止まる。人の姿を描いたものもあれば竜姿のものもある。若い女性にはレビエント様の絵が人気らしい。店員さんに勧められたがそれを断り、私は翠竜様方の絵を手に取る。そこには確かにリアスくんの姿があった。


(本当に王子様だったんだ……)


 そりゃあ騎士達が探すわけだよ。

 この絵の彼は笑っているけれど、先程パレードの馬車に乗ってこちらを見ていた表情は正に不機嫌そのものだった。何でだろう。まぁ、理由を考えても仕方ないか。昨日は偶然だったとは言え、もう会うことのない人だ。

 絵は買わずに店頭に戻し、私は再び歩き始める。そう言えばまだアリッサさんのお店の新節祭限定ミルフィーユを買っていなかった。毎年すごい人気だと聞いているから、売り切れる前に早く買いに行かなくては!!

 そんなこんなで人ごみをすり抜け通りを南に進んでいる時だ。ぽんっと肩を叩かれたのは。もう! 誰なのこんな時に!

 相手を威嚇する勢いで後ろを振り向けば、そこに居たのは二人の騎士。あれ、見たことのある顔。確か、昨日王城の門の前に居た中年のおじさんと若いお兄さん。


「君、馬屋のカノンだね?」

「……は、はぁ。そうですが」

「一緒に来て貰うよ」

「えっ! ちょっとなんで……」


 抵抗する間もなく両側から二の腕を掴まれる。んん? 何これ?


「突然何なんですか!!」

「君も悪目立ちしたくないだろう。だったら黙って来なさい」

「そう思うんだったら腕を離してくださいよ!」

「ダメだ。君を逃がしたら減給される」


 え、なんですか。そのサラリーマン的な悲哀が滲み出た表情は。

 お兄さんはともかく中年騎士は全く引いてくれそうに無い。これって私が諦めるしかない感じ? 確かに周囲の人達はなんだなんだとこちらをチラホラ見ている。このままじゃ、完全に私が犯罪者みたいじゃない。


「こんなの完全に拉致じゃないですか」

「拉致ではない。送迎だ」


 両側固めといて何が送迎だ。お出迎えならもっと丁寧に扱ってくれないかな。


「……せめて掴むのは片手だけにしてください」


 囚われの宇宙人みたいな扱いは真っ平ごめん! それに、


「私、アリッサさんのミルフィーユが売り切れる前に帰りますからね!!」


 私がどれだけこの日を楽しみにしてたと思ってんの! これだけは譲ってたまるか!!

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