雲の上の人でした
王城の門が開き、まず見えたのは銀の鎧に身を包んだ騎士達。綺麗に整列し、足を上げる角度まで揃っている。そしてその後ろに続くのが豪華に花々で飾られた馬車。勿論乗っているのは各国の王族達。その姿が見えた途端人々の歓声が大きくなっていく。
初めに現れたのは蒼の国、蒼竜の一族だった。
「群青色の髪をしているのがアズヴァイ陛下。隣がウェミル王妃。その後ろ、瑠璃色の髪の男性がアクリア王太子殿下だよ」
隣に座るルードさんが解説してくれる。因みに今私達がいるのは二階建ての本屋さんの屋根の上。視界を遮るものがない絶景ポイントだ。同じ事を考えている人はちらほらいて、大抵地元の人達。この本屋さんはルードさんがよく通っているお店らしく、パレードを見たいとお願いしたら快諾してくれたらしい。
ついでに言うと、今パレードしている騎士さん達は皆貴族の子息達。観衆の注目を浴び、王族の傍を守るパレードの役は人気で、毎年身分が上の騎士に持っていかれてしまうのだそう。日本と違って身分社会だから仕方が無い話だけど、なんだかズルイ。そう言うと、ルードさんは「参加するよりこうしてパレードを眺めるほうが楽しいよ」と笑った。ルードさんはやっぱり大人だ。
「カッコイイ……」
思わず溜息が漏れたのは、黒の国、黒竜の一族が乗った馬車が見えた時。黒髪と黒の目が親しみやすいという欲目があるのかもしれないけど、浅黒い肌に堀の深いアジア顔の陛下と艶やかな黒髪の王妃はとにかく素敵だった。陛下似の若い二人の王太子達もカッコよくて、ちょっとした心のアイドルを見つけてしまった気分である。
次いで現れたのは紅の国、紅竜の一族。
「あ、レビエント様?」
男装の麗人、もとい美少女顔の王太子殿下を見つけて私は思わず呟いていた。それを聞いたルードさんが首を傾げる。
「あれ、レビエント様は知ってるんだ?」
「はい。昨日お見かけしました」
挨拶して手のひらにちゅーされました、と言っても信じてもらえないと思い簡単に訳を説明する。レビエント様の乗った馬車には国王陛下と末の姫が乗っていた。当然お姫様も超絶美人だった。
そして次は目に優しい緑色で飾られた馬車。翠の国、翠竜の一族。馬車には国王陛下と王妃、そして三人の王太子殿下が座っている。歳は離れているようで、一番上から二十代前半、十代後半、そして十歳ちょいくらいの少年。
「……え?」
屋根の上からでもはっきりと見える。翠竜一族の馬車に乗っていた幼い第三王子。それは、リアスくんだった。




