26話
俺はガラガラを回すのに無難に火の玉を右手に作り投げて回した。普通に放つでも良いんだが、投げるほうが命中率高い気がするので投げただけだ、別にたいした理由はない。ちょっと他の人と一緒だと面白くないって思ったのもあったが…ちなみに番号札42番で42番を出すという稀なことを俺はやってしまった。
北枝の出番が近づいていた。北枝はいつの間にか巨大ハンマーを肩に担いで順番を待っていた。ハンマーの頭部は黒い金属で身長の半分くらいデカイ円柱仕様、柄は一応灰色の金属みたいだが細い筒状の棒であり、その設計だと折れるんじゃないってくらい細い。さらに北枝は背が低い部類なので身長くらいあるハンマーがより巨大に見える。
「ほい、次70番のかたぁ~」
「…いってくる…」
北枝は文也にそう言って巨大ハンマーを軽々持って壇上にあがっていった。北枝は壇上でハンマーを肩から下ろし、ガラガラの前に立ちハンマー投げのように自分の身体を軸に回転し始めた。
北枝は遠心力とハンマーの重さでブッ叩くみたいだな、多分あの大きさのハンマーだからガラガラは回るだろう。
そして北枝の回転がどんどん加速していく。
俺はちょっと不安になってきた。そのまんまハンマーがどっか飛んでいかないか?っていうぐらいかなりの速さで回転している。大丈夫かな?と北枝を一番知ってそうな文也に聞こうとして、
「あれ?文也どこいった?」
さっきまで横にいた文也の姿が消えていた。
ガァンッ!――――すさまじい音がした。
文也を探している間に北枝のハンマーが取っ手を捕らえたようだ。
そして物凄い速さで・・・・・ハンマーが空を飛んでいた。
ズガァァーーン!――――俺の後ろの方でも、すさまじい音が響いた。
ハンマーは演習場の入り口付近の床に突き刺さっていた。そしてハンマーの突き刺さった僅か数cm後方に文也が立っていた。あんなとこにいたのか…それを見た俺は、もしかして北枝ワザとやったんじゃないか?と思ってしまった。北枝ならできるんじゃ…まあ俺に被害ないし問題ないな。
それにしてもあの速度で飛んできたのにクレーターにならず穴が少し開いたくらいですむなんて、流石演習場…ちょっとのことじゃ壊れんか。
「ほい48番ね、次71番のひとぉ~」
この騒動で静寂の演習場だったが、桜先生は何事もなかったように次に進めた。
桜先生の言葉に俺は引っ掛かった。北枝が48番…俺は42番。
俺はトーナメント表をみた。1~32がAグループ、33~64までBグループ、同じように65~96がC、97~100がDとなっている。Dに入れば有利となっており俺も北枝もBの2ブロック、順調に上がれば3回戦でぶつかることになった。今までの抽選で俺の2回戦までの相手はDの面子であり、3回戦もいたとしてもCだったからいけるかもと喜んでいたが、残りの1つの枠に北枝が入るとは・・・北枝があと1つ番号が後ろだったら同じBでも準々決勝まで当たらなかったが、俺は運良く勝ち進んでも3回戦は勝てる気がしない。
周囲はさっきのハンマーのこと無かったかのごとく、淡々と進んでいく。そして99番、文也の出番となった。残りの枠は74番と100番、未だにDグループのひとつが残っていた。
「カナデ、放してくれ。」
さっきのハンマーの時以降から北枝はしかっり文也の服を掴んでいた。北枝も壇上まで付いていく気はなく、文也の服から手を放した。そして文也が壇上に向かって歩いていく。
何か秘策があるとか言ってたが、何をしてくれるのやら。
文也は壇上に上がるなり―――先生の前で土下座した。
文也は筋肉野郎の前ではなくもう一人のちんまい桜先生の前で土下座をした。確かに今までの中にも筋肉野郎が無理ならば、桜先生にお願いすればと考え頼みこんでいた人もいたが、すべて断られていた。しかし土下座までして懇願する奴もいなかったな。
「自分はこのガラガラを回せそうにありません、担任の先生でもある桜先生に教えてもらいながらも、力も知恵も持っておりません。どうか!どうか!この愚か者にどうか救いの手を!」
文也は額まで床につけ土下座している、プライドはないのか文也よ…
「ふむ、確かに私は小塚君の担任でもあるし…ちょっとは叶えてあげたい気持ちはあるんですが、自分自身の力でやって欲しいって思う気持ちもあるんですよね…土下座程度では足りないかな~」
「土下座だけでは足りないというなら、パシリでも構いませんし、何かできることなら何でも協力します!お願いします!」
「ん~でもな~」
桜先生はある方向をみて、ふと何かに気づいたようで口元が少しニヤリとした気がした。桜先生の視線の先には北枝が立っていた。
「ふむ、あれが試せるかもしれない…しょうがないな~なんでも協力してくれるって言うなら明日に私の研究室のじっけ…私の研究室に来てください。あと北枝さんもちゃんと連れてきてくださいね。」
「今実験って言いませんでしたか?しかしカナデもですか?俺だけでは足りないのでしょうか?」
「うん、足りない。全然足りない。小塚君なら北枝さんの説得できるでしょ、てか憑いてくるでしょ。明日北枝さんもつれてきてくださいね♪」
「分かりました…説得してみましょう。しかしアレを回してもらってからです。」
「OK、OK、分かってるよ。ほいじゃ回して~」
桜先生が持っていた杖、確かアーティファクトだった木製の杖が成長して取っ手に絡みつき、勝手に回し始めた。
ガラガラガラ
「ほい100番ね。あめでとう、運が良いね。それじゃ明日ヨロシクね、ちゃんと北枝さん連れて来てくださいね♪」
俺たちの抽選は無事?終了した。今から準備期間として1回戦は1週間後から始まることとなっている。
どうもにゃあプーです。今回はちょっと短いかもしれません、いや~やっと大会の抽選が書き終わった、2話も使うとは…まあ自業自得なんですけどね。
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