11話
クラスに入ると薫がもうすでに帰ってきていた。
「おかえりなさい、祐樹さん。何か廊下で話してましたね、なにかあったんですか?」
「別に、俺にはあんまり関係ない話、文也の話だな。」
「小塚さんがですか?たしかに少しゲンナリしてますね。」
ちょっと疲れたように文也は入ってきて席に座った。
「薫のほうの専門授業どうだった?」
「私のほうはつまらなかったです。なんかアーティファクトとむきあえとか言われてしまって…タロットカードとにらめっこです。」
「にらめっこしてなんか掴めたか?」
「いいえ、全く何も感じられませんし、変化しませんし。」
「みな全く違う感じなんだな。俺はヤバかったし、文也は精神的ダメージみたいだし。」
「ヤバかったって、怪我してるじゃないですか!大丈夫なんですか?どなたにやられたんですか?」
「ああ大丈夫、ちょっと切れただけ。もう手当てしてもらって、もう治ってる。なぜ相手を知りたがる?」
「そうなんですか………手当てできなくて残念です。…敵は自分で調査でもしようかしら…」
そのとき桜先生がクラスに入ってきた
「さぁみなさん、専門授業楽しかったですか?さてそんなみなさんにプレゼントでぇ〜す。」
桜先生は本を配りはじめた、電話帳くらい分厚い本を…
こんな分厚いの本、何に使うんだよ…まあ隣でさっきからグタッてなってる奴を起こすにはもってこいだけどさぁ〜。
「この本は明日からの午前の授業すべて書いてあります。もう魔法の基本は教えましたし、あとは自分のいると思う授業をとってください。武術、魔法学、魔導学などいろいろあります。自分にいらないと思えば自主的にトレーニングしても構いませんよ。」
重要な話なので横の奴を起こそうと思ったら、すでに起きてやがった。こういう時の文也の勘はどうやって感じてんのか知りたいよ。
「武術でも空手や合気道など無手もあれば、剣術、槍術や薙刀などいろいろありますし、魔法学も初級者から上級用まであり、さらに属性別にわけてあります。アーティファクトなどに興味がある人は魔導学など行ってみると面白いかもしれません。」
なるほど完璧な選択授業になるのか…
「それでですね〜テストは夏に行われる学年別武術大会の成績が点数なので、強くなるですよ〜。まあ負けても授業たくさん受ければ問題ないですよ〜、自主的の人はここで上位取らないと夏休み補習ずくしで休みないかもしれませんよ〜。」
「夏休みなくなるのは死活問題だ、大事なイベントが行けなくなる。授業は受けていたほうが良さそうだな〜祐樹はどうする?」
「いや、文也。そこも問題だけど、学年別武術大会ってほうが問題だろ。今日の前衛の感じから下手すると死ぬぞ」
「1ヶ月後の5月中旬から抽選がはじまりますから、それまでにある程度強くなっててくださいね〜。あっそうそう、出欠はとりますので朝は必ずクラスに一回集まってくださいね。それでは今日はお終い、また明日ね〜」
桜先生はクラスから出てってしまった。
ガタガタッっといきなり隣から聞こえてきて見ると、もう文也が立ち上がって窓から逃げようと準備していた。
そしてあることを思い出した。
「オラァ、ちょっと待てぇ文也!止まりやがれこの変態!」
「誰が変態じゃ!」
文也が思ったとおり振り返り返事をかえしてきた、その間に詰め寄り腕を捕まえる。
「逃げんじゃねぇー!俺がどうなるかわかんねぇじゃねぇーか!」
「そこは祐樹ならなんとかなるさ、邪魔するな!俺は逃げる!」
「ここから飛び降りたって無駄だ。すぐに追いつかれる、おとなしくしてろ文也!」
「いやそこはなんとかして見せるさ!だから放せ!」
「…無駄…」
「いや無駄じゃない、男子寮までいければ、逃げ…き…れ……る……」
気がつくともうすでに文也は北枝にシャツのスソを掴まれていた。
俺たちは一度落ち着いて自分たちの席までいった。文也ももう逃げる気はなくなったようですんなり自分の席についた。
「いつの間にきてたんですか?北枝さん…」
「…終わるときにはいた……あと北枝でいい……」
「マジかよ、カナデはすでにいたのか…気配消してやがったな…」
「…逃げるから…」
そして北枝は俺にむけて紙をだした。
「…お礼…」
「ああ・・・サンキュ」
俺は北枝が出した紙を貰うと、紙は麻婆豆腐と書かれた食券だった。
「あの~その可愛い子、誰ですか?」
横から様子を窺っていた薫から質問がきた。
「ああ、そういえば薫は知らなかったな。ほら紹介してやれ文也。」
「北枝カナデ、後衛攻撃型でAクラス。後衛科で何故か懐かれた。以上」
「何故か懐かれたって…私は神崎薫です。よろしくね、カナデちゃん♪」
「…よろしく薫…」
「それで?小塚さん、なにがあったらこれほど懐かれるのですかね~?」
「知らん。後衛科行ったらこの状態になった。それとき事情を聞くと…」
「…お兄ちゃん…」
「とこんなことを言いだし、ずっとこの状態。周りからは変な目で見られっぱなし。」
「文也はさっきはもう精神的に耐えれなくなって逃げ出したってとこ、逃げないよう俺に監視が頼まれたってわけ」
「さっきの事態はそういうことですか。かなでちゃんの態度を見てると言わせてる感じではないみたいですし、まあ保留にしときましょ。違ったらどうなるか分かってますね?」
薫が変なオーラ出しながら文也を睨んだ。
「分かってるよ。そして真実だから俺は大丈夫と…んじゃ帰ろうぜ、四人で帰ったほうがまだ視線がマシだ。」
「ダメですよ。私たち茜先輩との約束ありますから残ってないと…」
「そういえばあったな、今日もいろいろあって忘れてたよ。」
「なら俺も残る、二人で帰る力なんて俺にもうない。さらに茜先輩に聞かないといけないこともあったし。カナデも残ってて大丈夫か?」
「…大丈夫…」
ちょうど噂話をしていると
「ちゃ~お、いま~すか~?」
ナイスタイミングで茜先輩がやってきた。
「おぉ~、ちゃんとユウユウも薫ちゃんもいっるね~~んじゃ、行こうか」
茜先輩はサッサと行こうとする。
「ちょっと待ってください茜先輩。ユウユウって俺のことですか?」
「そうだよ~祐樹だしユウユウ♪」
いや確かにユウは付いてるが安直すぎないか?
「ついでにサラッと俺がいないかのように振舞わないでくださいよ茜先輩。」
「君だれだっけ?」
「小塚文也ですって。俺は眼中にもないんですか?」
茜先輩は文也をじぃーーと見て
「あー君か、パスって言わなかった?」
「なんでダメ?理由を聞かせてくださいよ。」
ギュピーーンと効果音が聞こえそうな感じで茜先輩は動いた。
「あーー!あなた、北枝カナデじゃない?」
「……そう、あなた誰?…」
「私は2年の白銀茜。カナデちゃんは2年生の間で有名だよ、今年の1年生の実力No1って話だし。はいコレ」
俺たちと同じ名刺?を渡していた。
「カナデちゃんも一緒にいこうね。」
北枝は文也を見上げて
「……お兄ちゃんも行くの?…」
「ん?俺はどうやら無理みたいだ、ダメだし2回もくらったし眼中にないみたいだし。無理矢理行くのも気が引けるからな」
「…そう、ならいかない……」
茜先輩はショックを受けて固まっていた。