神様、正体を明かす
生徒会の雑用を初めて2週間が経った。
書類整理やデータの集計をするのかと思いきや、街に出て困っている人がいないかパトロール・人助けをすること。実態としては前回俺たちがやったボランティアと何ら変わりない。
疑問に思った俺は姫島先輩に訪ねた。
「生徒会の雑用って聞いてましたけど、町のボランティアばかりなのはなぜですか?」
先輩は、着いて来るように手招きをする。
「この後、一人で生徒会室に来てください」
ダウナーな声に耳がゾクゾクとするも、一人で生徒会室に呼ばれた不安が施行を停止させた。
鈴には先に帰るように伝えて、俺は言われた通り一人で生徒会室に向かった。
いつもより重く感じる扉を開けると、そこには先輩のほかに3人の生徒が会長の机の左右に立っていた。
「あの……一人で来たんですが……」
恐る恐る尋ねると、椅子をターンさせて俺の方を向く先輩。
「彼らは初めましてだね」と俺の緊張とは裏腹に、3名の紹介を軽快に始めた。
副会長────氷室瞬。18歳。端正な顔立ち。銀髪で目元が鋭い。
書記───月島瑠璃。18歳。小柄で華奢、黒髪ボブ。丸い眼鏡をかけている。
会計───緋村楓。18歳。筋肉質で引き締まった体格。髪は短く、日焼けした肌で活動的な印象。
自己紹介と共にそれぞれに会釈を交わす。
「お察しの通り、彼らも神の使いだよ」
先輩の一言に、3人の姿が淡く光を帯び、金色の瞳と頭上に光り輝く輪っか。空気まで静かに張り詰め、俺は思わず立ち尽くす。
「俺に……どんな罰が……」
きっと物凄い天罰が下るに違いないと感じ取った。
しかし、俺の一言に姫島先輩はクスリと笑みを浮かべた。
「そう言うのじゃないから安心して」
3人の役員達も姿を解いて、普通の姿に戻った。
「今日君を読んだのは、君の妹……いや、エリザベス嬢様について知っておいて欲しいことがあったから」
(エリザベス嬢様?)
未だ理解が出来ていない俺を他所に、先輩は説明を続けた。
「エリザベス嬢様は我々神界の最高神のご息女になられる方」
「え、え? 鈴が、最高神の娘ってこと?」
「そうです」
驚いた。何に驚いたって、もちろん最高神の娘ってのに驚いたが。それ以上に、最高神の娘なのになんであんなにポンコツなのかってところに驚愕した。
「満里君の言いたいことも分かる」
先輩は言った。鈴がポンコツなのは、溺愛した父が甘やかしたから。
先輩は言った。鈴に常識がないのは、誰も教えるものがいなかったから。
先輩は言った。このままではポンコツ神が生まれてしまうから何とかしないといけないと。
「詰まる所、我々はエリザベス嬢様の目付け役。君が常識を教える教育者ってところだ」
俺は頭を抱えた。
青春時代が一介の神……いや、最高神の娘なのでかなり偉いのかもしれないが。それでも俺の平穏を乱した所業に腹を立てないわけがない。
「俺の青春はもう戻ってこないんだぞ!」
俺は生徒会の役員全員に怒鳴った。
別に誰かに誇れるような高校生活ではなかったかもしれないあ、それでも俺は幸せな学生生活を送ってた。
それが、1人のおてんば娘のせいで台無し。しかも、今後もそいつの面倒を見ないといけないと宣告された。
「無論、君の貴重な時間を頂くわけだ。我々も無償でとは言わない」
続けて先輩は言った。
「もしエリザベス嬢様に常識を植え付けて、神として恥じぬ存在になったのなら……最高神様よりどのような願いも叶えてもらえるよう進言するよ」
その言葉に俺の耳はピクリと動いた。
よくある『どんな願いでも叶う』話。これには落とし穴があり、人の心は動かせなかったり、死者を蘇らせることができなかったり、願いは3つまでと制限があったりとする。
「……ちなみに、願いってどんなことでも大丈夫なんですか?」
「ああ、最高神様のお力であれば何でも可能だし、いくつでも構わないよ」
俺の心拍数は爆発的に上がる。体温が上がって興奮していることが自分でも分かる。
どんな願いを幾つでも。これほど甘美な言葉があるだろうか。
先程の怒りなど忘れ去り、内なる興奮を抑えていた所。神妙な面持ちで会長は続けた。
「それだけこの問題が重大という事だ。その認識を努々忘れないでくれ」
目には見えないが、確かに感じる言葉の重み。
生徒会室全体の雰囲気が重くなり、空気がピリリとひり付く。
「この件、君に任せても大丈夫かい?」
改めて姫島先輩……いや、今はラフィーネ・フィローゼとして問いかける。
ことの重要さをしっかり受け止めたうえで、俺も真剣な眼差しで応えた。
「……任せてください」
各して、ラフィーネ・フィローゼ含め、神界との契りを交わした俺。
今後は真剣に鈴に社会の厳しさと、常識を植え付ける役割を全うすると心に誓った。




