神様、ボランティアをする
後日、生徒会室に呼び出しを食らった俺と鈴。
「なぜ今日呼び出されたか分かるかい?」
高級感ある椅子に腰かけ、これまた重厚感のある机に肘をついた姫島先輩の目が鋭く光る。
「分からないわ」
即答する鈴。
何となく心当たりのある俺は、冷や汗を流しながら姫島先輩から視線を逸らす。
「どうやら満里君は察しているようだね」
先輩はすっと立ち上がり、一枚の紙を鈴の前に突き出す。
「これはどういうことだ!」
そこにはネット記事のスクリーンショット。
『ゲーム内で規格外のキャラが無双――新手のチーター出現か?』
添付された画像には、鈴が狂喜乱舞しながら敵を蹂躙する姿がバッチリ映っていた。
「そ……そんな……」
鈴は目をかっぴらき、記事を凝視する。
(よし、流石に反省したな……これで少しはおとなしく……)
「……私がチータァァァァァ!?」
次の瞬間、鈴は紙を床に叩きつけ、足でバンバン踏みつけた。
「ふざけんじゃないわよ! 神である私がチーター!?
むしろチーターを天罰で消した、正義の神プレイヤーでしょ!!」
(……いや、どう見ても悪魔だったけどな)
首元にナイフを突きつけられたかのような緊張感が部屋一面を埋め尽くす。
異質な空気間に鈴がゆっくしと姫島先輩の方に顔を向ける。
普段の端麗な雰囲気は一切なく、悪魔も退く表情の姫島……ラフィーネ。
バチバチに神仕様に変身していて、その場で正座をする鈴。
「私が言いたいことは分かるかい?」
あまりの変貌ぶりに俺もつられて正座してしまっていた。
「えっと……流石に、やりすぎたのか、なぁ……と」
間違った返答をすれば殺されかねない。それを理解した上で慎重に答える。
俺は鈴の隣で背中がびっしょりになる冷や汗をかき、固唾を飲み込み。
「……そうだな、流石にやりすぎだな」
正座をしている鈴の視線に合わせて腰を落とし「じゃあ、これからどうすればいいか分かっているよな?」と極道の取り立てを彷彿させる。
鈴は何も口にすることなく、ただただ首を上下に激しく振った。
するとヤ〇ザは鈴から俺の方に顔をグルンと向け「また、やらかさないか、兄の君がしっかり見張っててくれるか?」俺も首がもげそうな勢いで首を縦に振った。
生徒会室を後にした俺たち。
「それで。これからどうしたらいいか、本当にわかってるのか?」
信用できない鈴に疑心暗鬼に問いかけると。
「わかっているわよ」と事の事件を重く受け止めていて、反省もしている様子だった。
「流石に今回はちょっっとやりすぎたかもしれないから、その罰としてボランティア活動をするわよ!」
『ちょっっと』ってところが気にはなったが、本人にやる気があるのであれば今はそれで良しとした。
「ボランティア活動ってのは?」
「要は神が問題を起こした時に、それを帳消しにする奉仕をすることよ」
神の世界も人間社会とあんまり変わらないんだなと思ったが。
「人間界での評価を上げれば、神見習いとしての名誉も回復できるはず!」と意気揚々と宣言捲く鈴に、また嫌な予感しかしなかった。
『また、やらかさないか、兄の君がしっかり見張っててくれるか?』と姫島先輩から言われていることを思い出し、俺も袖を捲くって鈴を見張ることにした。
「私が人間を助けるのだから、殺人犯でもテロリストでもおちゃのこさいさいよ!」
「物騒なこと言うなよ」
道すがら、困っている人がいないか街中をパトロールしていた。とは言え、事件も含めて探して見つかるようなものではなく途方に暮れていると。
「もういっそ自作自演で行こうかしら」
とんでもないことを口走る鈴。
「ダメに決まってるだろ!」
俺は鈴の愚策を指摘するも「どうして?」と不思議そうな顔で見つめてくる。
「何もないならそれが一番平和じゃないか」
「でも、人間の政治家もよくやってるじゃない米の価格騒動とかメディアの仕込みとか」
鈴は政治家の闇ともとれる暴露を赤裸々に語る。
「待て待て待て! 確かにそうかもしれないが、人間の愚行が神見習いのお前がやるとイメージ的にもよくないだろ!」
渾身の説得に何とか理解をしてくれるも「じゃあ奉仕はどうするのよ」と振り出しに戻る。
「俺に言われても……あっ」
小さい女の子が一人。ママと呼びながら泣いていた。
俺はジロリと鈴に目をやるも「どこかに困った人は落ちていないかなぁ」と不謹慎なことを言いながらもまだ子供には気付いていなかった。
鈴の仕込みでないことを察して「あそこに女の子が泣いてるぞ」と知らせた。
目を輝かせながらスキップで少女に近づく鈴。
(泣いてる女の子にそのテンションはおかしいだろ)
「どうしたの~?」と少女の視線に合わせてしゃがみ込み、一応心配そうに声をかける鈴。
「ま、ママが、ママがどっか行っちゃった……」
迷子かな。と思っていたのに「ママどっか行っちゃったの!? 任せて死者蘇生ですぐに蘇らせるから!」とあらぬ方向に事を進める鈴。
変な魔法陣を展開させ、色とりどりの光が輪になって浮かび上がる。魔法陣の中央からは、なんか足みたいなものが見え始め、俺は鈴の腕を取り必死に止めに入る。
「待て待て待て! どう見てもただの迷子だろ!」
俺の呼び止めに「なんだ、ただの迷子か」と魔法陣と足っぽい何かがふわりと消えた。




