神様、ゲーマーになる
「人間つまんなーい!」
「いきなりなんてこと言うんだ」
先日。生徒会長に神格の制限をされてから、思うように力が使えず生活に苦労していた。
雨が降った日に無理やり力を使って晴れにしようとしたら無数の雷が降ってきたり。
遅刻しそうになって学校に瞬間移動しようとしたら天井を突き抜けて身動きが取れなくなったり。
最初に出会った時の神々しさはどこへやら
「お兄ちゃんはつまんなくないの!?」
「八つ当たりするなよ。俺は別にゲームとかして時間潰してるし」
「ゲーム!」
ぱちり、と鈴の瞳が輝いた。どうやら神様の世界は娯楽が少なく、人類の電子ゲームには特に興味を持っていた。
俺は自室にあるパソコンで今流行りのゲームをいくつか提案した。
シューティングゲーム・王道RPG・ほのぼの育成ゲームなど。
「銃で殺し合いたいわね」
仮にも神見習いの鈴であれば人類くらいは容易に滅ぼせそうで、殺伐とした発言に苦笑いしか出来なかった。
操作はそれほど難しくなく、キーボードでキャラクターを動かしてマウスで照準を合わせて打つ。
最近のゲームはキャラクターの動くも豊富で、銃とは別に各キャラクターに固有のスキルがある。ピンチになった時に戦況を覆すスキルは単純な殺し合いではなく、頭脳戦でもあり。これが若い層で人気を博している。
「操作は大体こんな感じ。とりあえずチュートリアルで慣れたら試合してみてもいいんじゃないかな」
「こんなにボタンがあるのに半分も使わないのね」
ゲームのチュートリアルを淡々とこなす鈴。
始めこそ戸惑っていたが、呑み込みが早いのか。
(…………俺よりうまくね?)
何とも言えない気分になりながらも、いざ試合に挑戦させた。
60人のバトルロワイアルで1チーム3人ランダムで組まされる。
最後まで生き残ったチームが勝つシンプルなルール。
早速一試合目。
鈴が選んだキャラクターはスピード重視のとにかく早いキャラ。
「さぁ、見つけ次第殺していくわよ」
テンションが高い鈴。
「とりあえず殺すって言うの辞めようか」
遠方に敵発見。パソコンの画面にわずかに映っているか程度でかなり遠い。
鈴が装備している武器は連射速度の高いサブマシンガンと一撃が大きいショットガン。
(これはスナイパーでも難しい距離だな)
「見っけた!」
鈴はサブマシンを構える。
スコープは等倍で正直敵は蟻みたいに小さい。
「さすがにその距離は無理だろ。大体リコイルの操作も……」
ガガガガガガッバシュ!
『ユーザー:しじみの親戚 ダウン』
「よし! まずは一人!」
「…………は?」
あの距離はプロゲーマーでも流石に当てられない。
オートエイムを疑う程の精度。
てか、俺のアカウントだからチートだと思われたらアカウント消される。
そんな不安はお構いなしで、画面に映った敵をドンドンなぎ倒していく。
「きゃははは! 死ね死ね死ね!」
狂喜乱舞する鈴の姿は神と言うより悪魔だった。
幸いにもチートと誤解されることなく何度も1位を搔っ攫い、高ランク帯まで上り詰めた鈴。
正直、俺よりうまい鈴に嫉妬はしているが見ていて気持ちのいいプレイなので何も言えずにいた。
バシュ!
『ユーザー:英語より日本語 ダウン』
「あっ」
ここにきて初めてのダウン。
これまでキャラクターの性能をフルに使い、銃弾を避けまくっていた鈴。
今回も相手の銃弾を縦横無尽に避けるかと思いきや、一撃で倒された。
「なにあいつ」
「いや、ここからは相手プレイヤーのレベルも高いから」と宥めるも。
バシュ!
『ユーザー:英語より日本語 ダウン』
バシュ!
『ユーザー:英語より日本語 ダウン』
数試合重ねても一向に勝てなくなってきた。
「……これは」
チーターだ。
鈴の神がかったエイムを機械の力でカバーをする違法行為。
ランクの高い所で目撃が多く。
プロのプレイヤーもこのチーターたちに悩まされていた。
「こればっかりは仕方ないよ」
「………………」
異様に静かな鈴。
その表情は、普段の可愛いさは消え去り、憎しみと憎悪に満ちた般若が如く。
「あいつら……絶対殺す」
次の試合が始まった途端。
鈴はパソコンの画面に向かって頭を突っ込んだ。
「おい! 俺のパソコン壊す……な?」
画面から飛び出た下半身をバタバタさせる鈴。
めり込んでいると言うより、ゲームの画面内に入り込んでいた。
「あいつらは私の手で直接天罰を下す」
ゲームのキャラクターをほったらかして、鈴自らが武器を拾い敵を殲滅していく。
「おらおらチーターは全員しねぇぇぇぇ!」
ゲーム画面から鈴の声が響く。
銃弾が当たっても全くダメージの通らない鈴。
バシュ!
『ユーザー:プロゲーマーになる ダウン』
バシュ!
『ユーザー:ニコロで配信中 ダウン』
バシュ!
『ユーザー:縦ロール ダウン』
次々に敵を倒しまくる。
もはやゲームではなく蹂躙だった。
「チートは犯罪だし、気持ちは分からなくないが……」
今、鈴と一緒にプレイしているユーザー達が不憫で仕方なかった。
一人で57人のユーザーを倒しきり、見事優勝。
「やった! 全員殺してやったわ!」
画面には満足そうな表情で笑う鈴がいた。
『チート検出 ユーザーのアカウントが停止します』
「あ、俺のアカウントが」
ゲームアカウントは抹消されゲーム画面が真っ暗になった────鈴をゲーム内に残したまま。
「お兄ちゃーん! ログアウトのボタンがない!」
俺の平凡なゲーマーライフは、またしても神様に破壊されたのだった。




