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神様、妹になる  作者: 白影ゆうき


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10/11

神様、弱体化する!?

 俺は姫島先輩の自宅に来ていた。

 学校では高級感触れる椅子に座っているの、自宅も凄いものだと思いきや。

 4畳半のワンルーム。ほつれた畳に冷蔵庫もない部屋は、帰る場所として機能している最低限の拠点。

 寝る必要も食事をする必要もないとは言え、閑散としすぎた部屋に寂しさを覚える。

 今日、姫島先輩の自宅に来たのは、前回のメイド騒動もそうだが、もっと根本的な問題点を解決するべく相談に来ていた。


「それで、相談と言うのは?」


「その……神格についてなんですが……」


 何もないおいてない部屋の畳に座る。

 ボロボロの部屋なのに、窓から差し込む日差しと姫島先輩の優雅な雰囲気が相まって、ボロ部屋からヴィンテージ部屋へとランクを上げていた。


「何をしようとしても、必ず神格を使うんです」


 バイト以前も、神格を使って問題を起こしているのは先輩も承知。

 なので、初めに神格の制限を設ける封印を先輩自らが施していた。


「でも、最近は封印前よりも神格が増している気がするんですが……」


「……そうだろうな」と返す先輩。


 日常の中で、神としての日々成長している鈴。

 成長度合いで言えばここ数日で、出会った頃の2倍は力を増しているらしい。

 このペースでいけば、俺の抑制だけではどうにもならないのは目に見えていた。

 だからこそ、ダメもとで聞いてみた。


「力を100%抑える方法ってないんですか?」


 俺の中で、常識を身に着けるなら。まず何かあった時に神の力を使えばいいって考えを取り払わないと先に進まない。

 俺は今後のリスクも考えて何か対策を講じる必要があると先輩に相談した。


「……力を抑える装具はある」


「じゃあ、それを!」


 緊張の面持ちで続けた。


「それは、我々神が……人間に成り下がる行為に等しい」


 俺は先輩の言葉の意味をくみ取れなかった。

 そりゃ力が使えなければ人と等しい存在になるかもしれない。

 でも、この期に及んで神が人間に成り下がりたくないって言い訳をしていられる状況でもない。

 鈴に常識を身に着けるため、果ては神界の未来のため。

 俺はそれの何がいけないのか再度訪ねた。


「つまり、人間が神を殺すことも可能だという事だよ」


 俺は息を飲んだ。そんなこと、考えたこともなかった。

 事故や病気も含めて、基本。地球上の生物が神を傷つける事は出来ない。

 だが、神の力を100%失ったときのリスクは甚大。

 どうしてこのような道具があるのか聞くと、神界でも重罪を犯した者に課せられる罰として作成された。謂わば、枷だ。

 その話を聞いて、鈴にも枷を着けてもらう覚悟が俺にはなかった。

 確かにお調子者で、常識もないお転婆な奴だ。

「仕方ないなぁ、お兄ちゃん」「お兄ちゃんのためだよ」「お兄ちゃんだけ特別!」

 鈴の言葉が脳裏を過る。俺はいつの間にか鈴を妹として受け入れていた。

 そうなると、妹にリスクが生じるのは兄としても看過できない。


「やっぱり、大丈夫です。鈴に……妹が危険な目に合うのは、俺も嫌なので」


 言ってて恥ずかしくなる。

(鈴には見せられないな)

 俺は覚悟を決め、真剣な眼差しで先輩の目を見つめた。


「やはり、君を選んでよかったよ……」


 にこやかに笑みを浮かべる先輩は、いつもの制服姿なのに神々しさが増して綺麗だった。

 ポケットからスマホを取り出した先輩は、1通のメッセージを誰かに送信した。

 すると、ものの数秒で役員3人が瞬間転移してやってきた。


「お待たせしました会長」と頭を下げる副会長の氷室。


「君の案は、我々生徒会が徹底的にサポートをするから心配する必要はない」


 生徒会の4人は、神の姿に変えて俺の前に立ち並ぶ。

 これまで見たどの芸術作品、絶景よりも美しく。4人から放たれる黄金の光に包まれ、心の不安が取り除かれた。

 神が4人。正直、明日隕石が降ってきても何とかしてしまえる程の安心感に、俺は生徒会のサポートの元、鈴に神格を抑える装具を預かることにした。

 俺は深く息を吐き、鈴のことを思い浮かべた。あの無邪気な笑顔、天然のお転婆ぶり、そして時折見せる神としての才覚。その全てが、俺の妹という感情に結びついている。だとすれば、神格を制御する装具は、鈴の未来だけでなく、俺たちの生活すら左右する存在だ。


「……わかった。俺が責任を持って、これを扱う」


 そう決意を口にした瞬間、空気が少し重くなるのを感じた。生徒会の4人は静かに頷き、黄金の光の中に立ち続ける。装具はまだ袋の中にあるが、手に取れば鈴の力を制御できる一方、彼女の神性の全てを縛るもの。使うかどうか、選択の重みが俺をじっと見つめ返してくるようだった。


「君なら大丈夫だろう」と姫島先輩の声が響く。


 その言葉は心強いが、同時にプレッシャーでもある。俺は袋越しに装具を握り、ゆっくりと呼吸を整えた。これから始まる常識教育は、ただのバイト以上に、神と人間の境界線を試す日々になる───そう直感した。

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