表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼らのはなし  作者: りら
1章
8/60

謝罪


次の日は土曜日で休みだった。というか、今日からいわゆるゴールデンウイークだ。

俺は帰省しないから、遅めに起きて一通りの家事をやりコーヒーをのみながら休んでいると、インターフォンが鳴った。

画面には楓がいて、いそいでドアを開けた。


「齋藤君大丈夫なの?!」

「・・・ん。これ、返しに来た」

「全部たべれた?」

「おいしかった」

お盆に乗せられたお皿と土鍋を受け取る。


「お昼なにか食べられる?また持っていくよ」

「いや・・・」おなかの音が鳴る。

「よかったらうちあがって狭いけど。何か作るから。」

「いや、そこまでは」

「いいからいいから」

「・・・梨奈かよ」楓が笑ってくれた。

「梨奈ちゃんのうつっちゃった」僕も笑えた。


ソファーに楓を座らせ、ご飯を早炊きで炊く。みそ汁と、ニラとカニ缶でかに玉を作る。梅干しと漬物も添える。ちょうど御飯が炊きあがった。


「出来たよ~」机に出来立てを並べる。自分で言ってあれだが、なかなかの出来だと思う。美味しそうだ。


「・・・一緒に食べないの」

「食べていいの?」

「いいよ」

「じゃ、ご一緒させていただきます」


自分の分も、持ってきておいたら、机はぎゅうぎゅうになった。

『いただきます』

楓と一緒にご飯を食べるなんて、ほんと給食の時以来だ。

2人で無言でご飯を食べる。でも、「・・・うまっ」ともぐもぐおいしそうに食べてくれる楓を見るだけでおなかいっぱいだ。


『ごちそうさまでした』

「片してコーヒー持ってくる。まってて」

「ん」


食後のコーヒーを2人で飲む。無言の時が過ぎる。いまが話す時かもしれない。


「齋藤君・・・あのさ」

「・・・楓で楓でいい」

「・・・楓、小学校の時守れなくてごめん」

「いいよ・・・とは、簡単に言えない」

「分かってる。謝って俺が楽になりたいだけだ。でも、謝らせてください。本当にごめんなさい」

「この間の・・・」

「・・・裕也君?」

「あれ、ほんと?」

「あ、うん、というか、小学校の時楓のこと好きになって以降、今まで女の子のこと好きになったことがないから、そうなのかなって」

「・・・あの時否定してたじゃん」

「本当にごめんなさい。本当は好きだった。楓のこと」

「なんだよそれ・・・」

「自分の中でまだ受け入れられてなくて・・・って言い訳だから。だから全部俺のせいなんだ。楓のこと守れなかった。好きな人のこと守れなかった」涙がこぼれる。

「泣くなんて卑怯だろ」

「う、ごめんなさい」

「机の上の写真・・・」

「あ、隠すの忘れてた・・・。気持ち悪いよね。楓のこと忘れられなくてずっと机の上に写真飾ってたから、こっちにも持ってきたんだ」

「首のも、ちらっと見えた・・・」

「あ、勾玉?本当ごめん、気持ち悪すぎだね。これもずっと持ってる」

「・・・今でも俺のこと好きなの」

「・・・好きだよ。ずっと」

「俺、彼氏いる」

「速攻振られたね。でも、付き合いたいとかそんなんじゃない。おこがましいけど、また・・・友達になりたい」

「・・・もうなってんだろ」

「いいの」

「いいもなにも、もう梨奈と凛と俺とずっといたんだから、友達だろ。てか、はずいわこの会話、大学生にもなって」

「はは、たしかに」

「・・・さくちゃんははずいから、朔良ってよぶから」

「ありがと楓」



仲直りできたゴールデンウイーク初日。

友達に戻れたゴールデンウイーク初日。

忘れられない大切な日。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ