誕生日
4月になり、大学2年生へ進級した。
あれからも朔良との関係は相変わらずで、何も変わっていない。凛に言われたからと言って、何も動けなかった。俺から壊すってどうしたらよいか分からないし、告白するにしても雰囲気大事だしそもそも朔良逃げそうだし断られそうだし…で何も出来なかったのだ。ただ、相変わらず凛に嫉妬している俺がいる。
そして4月2日、朔良と再会してまる1年がたった。俺の20歳の誕生日でもある。今日はタコパをしながら3人が家でお祝いしてくれている。俺一人20歳のためひとりでだったがお酒も飲んだ。ビールは正直苦かったが、ソースのついたたこ焼きと合うような気がする。ジンジャーエールで割ると飲みやすかった。今いい感じにふよふよしている最中である。
梨奈と凛は電車で帰るため途中で抜けていった。朔良も帰ろうとしていたが、俺が引き留めた。まだ、飲むのに付き合ってほしいと。朔良と2人きりになるのは思えば久しぶりだ。
「楓大丈夫?」朔良がグラスにミネラルウォーターを入れて持ってきてくれた。
「大丈夫。あー、早く皆と飲めるようになりたいなぁ」
「俺が12月で誕生日一番遅いからね。けど、遠慮しないで飲んでね」
「あ、朔良は必ず初めては俺がいるところで飲んでな」
「なんで?」
「なんでも」バレンタインのような状態になったら心配だからなんて言えないけれど。
「朔良とさ、再開して1年だな~今日」
「引っ越ししてきたときびっくりしたよね」
「はじめ態度悪くてごめん。途中もだけど」
「何度も行ってるけど楓は悪くないから。また仲良くなれてよかった」
「俺も」なんだか恥ずかしくなってグイっと残っていた缶チューハイを飲み干した。
誕生日プレゼントは、朔良からピアスをもらった。20歳になったらピアス穴あけるとずっと言っていたのを覚えていてくれたらしい。しかし、ピアッサーは買ってあるが、ビビってしまってまだあけていない。
「朔良、これつけたいから穴開けて。今ならいける気がする」
「いや、お酒飲んでるからダメだから」
「え~これつけたかったのに」
「また今度」
「朔良のプレゼント今日使えないじゃん。…なぁ、違うのもらってもいい?」
「え、あとなんも用意してないよ」
「してほしいことがあるんだよ」
「肩もみとか?」
「ううん。朔良ここに横になって」とベットをたたく。
少し固まってたけど、ベットに横になってくれた。棚から100均でかっておいたプラネタリウムを取り出して、机の上におく。電気を消して、スイッチを付けると、くるくると部屋中に星が回りはじめた。
「結構悪くないだろ」俺もベットに横になる。
「うん!これどこで買ったの?」
「100均。まぁ、550円だけど」
「へ~こんなの売ってるんだぁ。綺麗」
しばらく2人でベットに横になり、天井を眺めていた。
指をかるくつまんでみる。ビクッとしてたけれど、何も言ってこない。
指を握ってみる。
指を絡めてみる。
手を繋いでみる。
肩を寄せてみる。
身体を寄せてみる。
頭をくっつけてみる。
「か、楓」
「ん~、やだ?」
「嫌っていうか」
「さくらぁ…俺さ、朔良のこと好きだ」
「え?」
「朔良が好きだ。朔良は俺のこと好きになる権利ないって思ってるかもしれないけど、なくない。勝手にないことにしないでほしい。逆に、俺のこと好きになってくれる権利はない?」
「それは…」
「もちろん恋愛的な意味で」
「…酔ってるよね。水持ってくるよ」起き上がろうとした朔良に覆いかぶさる。
「酔ってなくはないけど本心」目をそらされる。
「さっきの話覚えてる?」
「な、なに?」
「プレゼントほしい。本当に嫌なら突き飛ばして」
そう言って唇を合わせた。