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彼らのはなし  作者: りら
6章
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やっぱり俺は楓が好きなんだ


「朔良くんおはよ~講義一緒に行こっ」

梨奈ちゃんの声が耳に響く。


あれから山縣さんからの連絡・接触は以後全くない。梨奈ちゃんが抑えてくれているのか、何をしているのか…想像するのが怖いが。凛ちゃんともいつも通りだ。梨奈ちゃんは前のように友好的だ。何もなかったかのように俺と接する。楓は、体調を崩し数日大学を休んだ。念のため俺の家で休んでもらっている。仕掛けられているだろう盗聴器などを懸念して提案したが、楓もそう望んでくれた。まだ、自宅にいるのが恐いらしい。


復帰後、梨奈ちゃんと楓と久しぶりに3人で講義を受けた。

「今日はカフェテリアでお昼食べようよ」梨奈ちゃんが誘ってきた。「凛ちゃんも一緒に来るから」

カフェテリアに行くと、凛ちゃんはすでに待っていた。

「遅れてごめん」と言いながら、席につく。


「お兄ちゃんのことはもう気にしなくていいから。楓も凛ちゃんも、もちろん朔良君も。私がちゃんと教育するから」笑っていた。ただし、目の奥は暗い。でも今は梨奈ちゃんを信じることしかできない。梨奈ちゃんにしかお願いできない。

「良かった」と、凛ちゃんはつぶやく。

ふと、凛ちゃんは大丈夫なのだろうと思った。凛ちゃんは幼い頃から、梨奈ちゃんに好意を抱いていた。別れたと言え、一度は付き合ったのだ。凛ちゃんを見つめてしまっていると、目が合った。「だいじょうぶだよ」と口の動きで教えてくれた。凛ちゃんのことだ。梨奈ちゃんがどんな形であれ幸せであれば自分の気持ちを我慢するのだろう。一番残酷な『親友』という立場で。


「俺は、本当に別れられたのか?」楓がうつむきながら質問する。「別れられたというか私が別れさせた。大丈夫、絶対に近づけさせないから。楓スマフォかして。……入っていたGPSアプリ設定かえたから。もしお兄ちゃんが万が一楓に近づきそうなら、アラームなるよう設定した。お兄ちゃんのことは私が見張っておくから安心してね」

梨奈ちゃんの発言がいちいち安心できないけれど…。


「今まで私とお兄ちゃんのことで迷惑かけてごめんなさい」梨奈ちゃんは深々と頭を下げた。これは心からの謝罪だと伝わってくる。本当に安心していいのかもしれない。

「今日は授業終りに当直器とカメラといろいろ回収しに行ってもいい?場所は吐かせたから安心して」またもやにっこりと笑っていた。


俺はバイトだったので、梨奈ちゃん、凛ちゃん、楓の3人で自宅に戻ったらしい。盗聴器は、合計5日、カメラは3台見つかった。…本当恐怖だ。楓への執着ぶりが徹底している。


バイトから帰ると、楓が炬燵に入って寝ていた。人の家で安心して寝られるのは良い傾向だ。起こさない様にシャワーを浴び、夜食の準備をする。ごぞごそしていると、楓が起きてしまった。


「…お帰り。ごめん、寝ていて」

「大丈夫。だけど風邪ひくから布団浸かって」

「朔良は?」

「少し食べてから寝るよ。今日は塾の方だったから賄いないんだ」

「俺も一緒にいていい?」

「お腹すいてる?一緒に食べない?軽いものにするから。お酒は?」

「…少し飲みたい。軽めの」

「サングリアがあるからそれ飲もう。今おつまみつくるね」


何気ない会話ができてきている。

夜食、いや、晩酌か、を終え、布団の準備をする。俺はベットで楓が布団だ。電気を消して「おやすみ」と告げる。


「…朔良。起きてる?」しばらくすると、楓の声がした。

「どうした?寝られない?」

「怖くて。…今日一緒に寝てもいい?」

「え!!?」つい、大きな声がでる。

「…嫌なら」「いや、大丈夫だよ。おいで!」


楓がはいってくる。俺は壁向きに横になる。楓は俺の方を向いている。楓の頭が背中にくっついた。「朔良、ありがとう」そう言って、楓は数分もせずに寝入ってしまった。



案の定俺は寝られない。だって楓が同じベットにいるんだから。頭がくっついている。吐息が聞こえる。寒くなってきたのか、身体全体がだんだんくっついてくる。


あぁ、やっぱり俺は楓が好きなんだ。友達以上に。改めて自覚する。…この感情のまま楓といることは果たして良いのだろうか。楓をさらに傷つけるのではないだろうか。


眠れぬ夜は続く。


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