小学生
楓と一緒に俺が公園で遊んでいる。
あぁ、これは夢か。
夢とわかっっても目が覚めない。
幽霊になった気分だ。
遊んでいる風景をみながら、過去のことを思い出す。
楓と俺は、幼稚園からの仲だ。
少々やんちゃだった俺にいつもついてきてくれて、そのくせ小心者だった俺の手を引っ張てくれて。
あまり子供が多くない場所だったからクラスは一クラスだったため、小学校でもずっと一緒にいた。学校へ行くときは待ち合わせして、帰りは途中まで、手をつないで帰った。自分から楓の手を繋いでいた。
宿泊研修で、2人で勾玉のキーホルダーをつくった。おそろいのものができて嬉しかった。俺と楓は特別なんだって思った。
周りがなんとなく、好きだの恋だのに興味を持ち、恥ずかしさを持つようになったころ、自分の気持ちを自覚した。男子としては早いのかなと思う。
でも、楓は顔も整っていたし、足が速いこともあり女子に人気だったのが嫌だった。俺の楓なのにって思った。楓が他の子と遊ぶのが嫌だった。ほかの子と接触するのが嫌だった。女の子と一緒にいるのが、優しくしているのが嫌だった。女の子が照れているところを見るのが、楓君ってかっこいいよねっていうのを聞くのが嫌だった。楓を独占したかった。
でも、そんな考えはおかしいって思った。自分が男を好きになるなんておかしいって、認めたくなかった。
そんな時トモダチが言った。女子に人気のある楓を面白く思っていなかったやつだった。
「おまえら、いっつも一緒にいて、手つないで帰ってるのおかしくね?お前らこいびとなんだろ!楓、お前の顔女みたいだもんな。朔良のこと好きなんだろ」
楓はその言葉に顔を赤くして、黙った。
とまどう楓が珍しいと思った。顔を赤くする楓が可愛いと思った。楓も俺のこと好きなんだって思って嬉しいと思った。
「うわ、楓顔真っ赤じゃん。俺知っているよ、そういうのホモっていうんだよね。ホーモ!ホーモ!ホーモ!!」
他の男子たちも混ざってホモコールした。
俺は恥ずかしかった。男が男を好きになるっておかしいと思ってたから。
「そんなわけないだろ!俺は楓のこと好きじゃねぇし。一緒にいてやってるだけだし。ホモなんて気持ち悪い。」
つい、そんな言葉を吐き出した。自分の保身に走った。
「じゃぁ、楓だけがホモなんだな。女子に人気があるくせにホモなんだ。男子たち気をつけろよ、楓は男が好きなんだって~にげないと!」
女子がくすくす笑っている。
男子がゲラゲラ笑っている。
俺はトモダチにあわせてへらへらしていた。
楓は走って帰っていった。
その日俺は初めて一人で家に帰った。
次の日俺は初めて一人で学校に行った。
教室についたら、楓がいた。
ちょうど来たトモダチが「うわ、ホモやろうがいる~ホモ菌うつるぜ」と騒ぎ出す。
「やだ~襲われちゃう~」男子がふざける。
楓に話しかけようとするけど、「やっぱりお前もホモなの~」といわれ、「そんなわけないじゃん」と否定する。
「楓君ホモだったんだ・・・ちょっとショック」女子たちがひそひそ話している。
「やめなよ」とほかの男子が注意すると、「お前もホモなのか~」とトモダチがニヤニヤする。
女子が言っても、「ホモやろうかばうなんて気持ちわりぃ~」とトモダチがひやかす。
下校のチャイムと同時に楓が教室からでる。
「楓!」と追いかけるも楓は止まらない。校門を出てやっと楓に追いつき、肩をつかむ。
その手を払いのけられた。
「触らないで」
そう言って楓は帰っていった。
また、一人で帰った。次の日も一人で学校に行った。
楓に謝りたいのに話しかけられない。
何日かして、楓は学校に来なくなった。
楓の家に行ってチャイムを鳴らすも誰も出てこない。楓の家は母子家庭で、お母さんが働いていてるこの時間は、楓はかぎっ子だからいるはずなのに。
ある日突然先生から楓の転校を知らされた。
楓は僕の前から消えた。
楓にまだ謝ってない。楓に嫌われたままだ。楓に本当は俺も好きって言ってない。傷つけて、守れなくてごめんって言ってない。
映像が消え、視界が歪む。
目を閉じ、再び開けると薄暗い俺の部屋の天井があった。
俺の目からは涙が垂れていた。




