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彼らのはなし  作者: りら
4章
31/60

おかえり


前期試験もおわり、夏休みとなった。俺は部活とバイトとで忙しく日々を過ごしていた。凛とは連絡を取っていない。もう俺たちは元の関係に戻れないのかと切なく思う。

加えて、試験やお盆もあり、達臣さんともなかなか会えずにいた。寂しさばかりが募っていた。


8月下旬、梨奈から達臣さんと3人で旅行に行かないかと誘われた。邪魔してごめんだけど、と。梨奈の両親の許可も取っているらしい。

達臣さんにも会いたかったし、梨奈の元気な姿もみたかったため、即了承した。達臣さんが車を借りて、運転してくれることになった。行先は那須にした。梨奈の希望だ。


9月に入り、旅行へ出発する。初日は那須ハイランドパークで遊んだ。福島に住んでた時に1回だけ行ったことがある。久しぶりに行ったが楽しかった。梨奈の好きなジェットコースターやバイキングなど絶叫系にいっぱい乗った。ここはそういうものが豊富だ。久しぶりにたくさん笑った。達臣さんも子供みたいで可愛かった。もうあの時の冷たい顔のことなんて忘れていた。


宿は朝夕食事付きのペンションに泊まった。メゾネットタイプのペンションで、部屋付きの温泉もある。夕食を食べ、梨奈、達臣さん、と順に入り、最後に俺がお風呂に入った。

ゆっくりつかって、浴衣を着る。火照ったからだに浴衣が気持ちがいい。部屋に行こうとすると、下から梨奈が達臣さんの膝で寝ているのが見えた。兄妹本当仲がいいなとほほえましく思う。俺には兄弟がいないからそういう関係はわからない。


梨奈を起こさないように足音を殺しながら部屋へ向かう。声をかけようとすると、達臣さんが梨奈にキスをしていた。

動揺して、ミシッっと床を鳴らしてしまう。達臣さんと目が合った。達臣さんは唇に人差し指を縦にあてた。口は微笑んでいた。見られたことへの動揺も焦りも無いようだ。

「少し散歩してきます」と小声で伝え、外に出た。自分だけ動揺しているのを悟られたくなかった。

砂利道をサンダルで歩く。木々が風でゆれ気持ちがいい、はずだった。先ほどの光景が頭に離れない。なかなか戻ることができなかった。

意を決して部屋に戻ると、梨奈が起きていた。「かえちゃん遅いよ~」とむくれていた。達臣さんは特に何も気にした様子もなく、「おかえり」と笑っていた。


その後はいつも通りに過ごし、達臣さんを残して俺は梨奈と二人で寝室に向かった。しばらく梨奈と話をしていたが、梨奈は疲れから早々と寝入ってしまった。俺はなかなか寝付けなかった。梨奈のかけ布団を直し、1階に降りる。達臣さんはソファでワインを飲んでいた。静かに達臣さんの隣に座る。


「達臣さん、さっきの・・・」と、意をけして聞こうとすると、あの時みたいに冷たい目で見られた、気がした。気がしたけれど急に口をふさがれてわからなくなった。舌を入れられ、口内にワインの味が広がる。どのくらいたったのだろうか、頭の中がぼーっとする。ふいに唇が外され、首に降りてきた。「りながっ・・・」と拒もうとするも「大丈夫」と止めない。人差し指を唇にあてられ、「静かにしてね」とにこりと微笑まれる。達臣さんに体を預けるしかなかった。


気崩れた浴衣を直される。ソファーに座らされ、またキスされた。口内にはワインが入っており、流し込まれる。んくっと飲み干すと、唇は離れていった。「先に寝るね。おやすみ」と達臣さんは寝室へ向かった。


俺は寝室へ行く気になれず、そのままソファーに沈み込み、そのまま寝入ってしまった。


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