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彼らのはなし  作者: りら
1章
2/60

再会


新しく住むアパートについた。

2階建ての1kアパート205号室。

今日からここが自分の家だ。


業者に荷物を運んでもらい、ベット、タンス、棚、机、家電製品ともくもくと片づけていく。

何もなかったただの部屋が、俺の部屋に変わっていく。基本、白と黒のモノトーンで揃えている。


ある程度片付けが終わり、近くのコンビニに昼ご飯を買いに行く。


帰ると、インターフォンに履歴があった。

「だれだ?ま、いっか」用があるなら又来るだろう。


後はこまごまとしたものの整理だけだ。入れてある段ボールを開く。真っ先にとりだしたのは、小学生の時の宿泊研修であの子と一緒に作った勾玉のキーホルダー、をネックレスにしたもの。俺が青であの子が緑。

6年生からの記憶はない。転校してしまったから。どこに転校したのかはわからない。


「東京なんて出てきちゃったら、こんなに人多いんだもんな。一生会えないな・・・」感傷に浸る。

ゴロンと横になり、日差しに勾玉をかざす。きれいな色が部屋に浮かぶ。

「さてと」と、再び整理に戻る。

机の上には写真盾を置いた。小学校の時の楓とのツーショットだ。この写真は実家にいるときから今までじっと机の上に置いてきた。楓を忘れないように、というよりも、楓にしてしまったことを忘れないように。

部屋が西日で赤く染まるごろ、やっと片づけが終わった。


階段を上がる音がして、外から女の子数人の笑う声と男の声が聞こえてきた。

彼女らは俺の部屋を通りすぎ、隣の部屋に入っていったようだ。笑い声はここまで聞こえてきて、壁の薄さを感じる。

その後、また、ドアが開く音が聞こえたと思ったら、


ピンポーン


うちのインターフォンがなった。玄関へ向かう。


「はい」


そこには男性が立っていたが、帽子をかぶっていて顔がよく見えない

「隣に引っ越しました齋藤(かえで)と申します。よろしくお願いします。これ、つまらないものですが・・・」

男性が頭を下げタオルを出してきた。「あ、ありがとうございます」と丁重に品物を頂く。


楓という名前にすごく引っ掛かりながら。


「あ、私も本日引っ越してきました佐藤朔良です。よろしくお願いします」

相手が、『朔良』に反応した、ように思う。

顔があがり、目が合う。

時が止まったように感じる。


あぁ、やっぱり・・・目の前には、俺が今でも忘れられない楓が、大きく成長した楓がいた。

朔良、と彼が小さく呟く声が聞こえた。


「・・・楓?楓だよね、ひ、久しぶり。俺、佐藤朔良。お、覚えてる?」俺はおそるおそる聞く。


楓は下を向き、帽子にかくれていてちゃんと見れない。どんな顔してるか分からない。


「かえ…」


「かえちゃん、まだ~」

隣の部屋から女の子がひょこっと顔を出す。


「あ、あぁ今行く。…佐藤くん、お久しぶり。覚えてるよ。今日からお隣なんてビックリだね。よろしくね。」

楓はそう言って部屋に戻っていった。



『佐藤くん』


さくちゃんって呼んでくれていた楓はもういないんだ。会えて嬉しい、またさくちゃんって呼んでくれるかもって思うなんてなんておこがましい。


楓が消えていったドアをしばらく見つめていた。


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