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彼らのはなし  作者: りら
2章
18/60

仲直り

朝起きると、快晴な空が窓から見えた。時間を見ると9時を過ぎていた。

熱はすっかり下がっている。今日は土曜日というか、今日からゴールデンウイークだ。


スマホを見ると達臣さんからメッセージと着信が入っていた。

急いでメッセージを返す。「大丈夫です。心配ありがとうございます」


昨日食べた土鍋と皿を洗い、きれいに拭き、朔良の家へ向かう。

インターフォンを押すと、「齋藤君大丈夫なの?!」朔良が慌てて出てきた。

「・・・ん。これ、返しに来た」

「全部たべれた?」

「おいしかった」お盆に乗せたお皿と土鍋を返す。



「お昼なにか食べられる?また持っていくよ」

「いや・・・」朝ごはんを食べていないため、おなかの音が鳴る。

「よかったらうちあがって狭いけど。何か作るから。」

「いや、そこまでは」

「いいからいいから」

「・・・梨奈かよ」あまりにも強引で笑ってしまった。

「梨奈ちゃんのうつっちゃった」朔良も笑った。


ソファーに座り、ご飯を待つ。部屋を見渡すと、机の上に小学生の俺と朔良の写真があった。こんな笑顔で笑っていたんだなと、懐かしく思った。

「出来たよ~」と、朔良が机に出来立てを並べる。かに玉だ。美味しそうだ。机に皿を並べる朔良の首元に光る何かを見つけた。よく見ると勾玉だった。


「どうぞ召し上がってください」机には1膳分しかなかったため、一緒に食べないのか聞いた。「食べていいの?」と驚く朔良に「いいよ」と答えた。


『いただきます』

一緒にご飯を食べるなんて給食時以来だ。朔良のご飯はすごく美味しかった。


『ごちそうさまでした』

「片してコーヒー持ってくる。まってて」

「ん」


食後のコーヒーを2人で飲む。


しばらく無言だったが、「齋藤君・・・あのさ」と、朔良が話し始めた。

「・・・楓で、楓でいい」俺の中でなにかが吹っ切れていた。

「・・・楓、小学校の時守れなくてごめん」

「いいよ・・・とは、簡単に言えない」

「分かってる。謝って俺が楽になりたいだけだ。でも、謝らせてください。本当にごめんなさい」

「この間の・・・」

「・・・裕也君?」

「あれ、ほんと?」

「あ、うん、というか、小学校の時楓のこと好きになって以降、今まで女の子のこと好きになったことがないから、そうなのかなって」

「・・・あの時否定してたじゃん」

「本当にごめんなさい。本当は好きだった。楓のこと」

「なんだよそれ・・・」

「自分の中でまだ受け入れられてなくて・・・って言い訳だから。だから全部俺のせいなんだ。楓のこと守れなかった。好きな人のこと守れなかった」朔良の目から涙が流れる。

「泣くなんて卑怯だろ」

「う、ごめんなさい」

「机の上の写真・・・」

「あ、隠すの忘れてた・・・。気持ち悪いよね。楓のこと忘れられなくてずっと机の上に写真飾ってたから、こっちにも持ってきたんだ」

「首のも、ちらっと見えた・・・」

「あ、勾玉?本当ごめん、気持ち悪すぎだね。これもずっと持ってる」

「・・・今でも俺のこと好きなの」

「・・・好きだよ。ずっと」

「俺、彼氏いる」

「速攻振られたね。でも、付き合いたいとかそんなんじゃない。おこがましいけど、また・・・友達になりたい」

「・・・もうなってんだろ」

「いいの」

「いいもなにも、もう梨奈と凛と俺とずっといたんだから、友達だろ。てか、はずいわこの会話、大学生にもなって」

「はは、たしかに」

「・・・さくちゃんははずいから、朔良ってよぶから」

「ありがと楓」


朔良とまた友達に戻れた。いや、戻りたいと思った。あの写真のような笑顔で、朔良とまた過ごしたいと思った。


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