仲直り
朝起きると、快晴な空が窓から見えた。時間を見ると9時を過ぎていた。
熱はすっかり下がっている。今日は土曜日というか、今日からゴールデンウイークだ。
スマホを見ると達臣さんからメッセージと着信が入っていた。
急いでメッセージを返す。「大丈夫です。心配ありがとうございます」
昨日食べた土鍋と皿を洗い、きれいに拭き、朔良の家へ向かう。
インターフォンを押すと、「齋藤君大丈夫なの?!」朔良が慌てて出てきた。
「・・・ん。これ、返しに来た」
「全部たべれた?」
「おいしかった」お盆に乗せたお皿と土鍋を返す。
「お昼なにか食べられる?また持っていくよ」
「いや・・・」朝ごはんを食べていないため、おなかの音が鳴る。
「よかったらうちあがって狭いけど。何か作るから。」
「いや、そこまでは」
「いいからいいから」
「・・・梨奈かよ」あまりにも強引で笑ってしまった。
「梨奈ちゃんのうつっちゃった」朔良も笑った。
ソファーに座り、ご飯を待つ。部屋を見渡すと、机の上に小学生の俺と朔良の写真があった。こんな笑顔で笑っていたんだなと、懐かしく思った。
「出来たよ~」と、朔良が机に出来立てを並べる。かに玉だ。美味しそうだ。机に皿を並べる朔良の首元に光る何かを見つけた。よく見ると勾玉だった。
「どうぞ召し上がってください」机には1膳分しかなかったため、一緒に食べないのか聞いた。「食べていいの?」と驚く朔良に「いいよ」と答えた。
『いただきます』
一緒にご飯を食べるなんて給食時以来だ。朔良のご飯はすごく美味しかった。
『ごちそうさまでした』
「片してコーヒー持ってくる。まってて」
「ん」
食後のコーヒーを2人で飲む。
しばらく無言だったが、「齋藤君・・・あのさ」と、朔良が話し始めた。
「・・・楓で、楓でいい」俺の中でなにかが吹っ切れていた。
「・・・楓、小学校の時守れなくてごめん」
「いいよ・・・とは、簡単に言えない」
「分かってる。謝って俺が楽になりたいだけだ。でも、謝らせてください。本当にごめんなさい」
「この間の・・・」
「・・・裕也君?」
「あれ、ほんと?」
「あ、うん、というか、小学校の時楓のこと好きになって以降、今まで女の子のこと好きになったことがないから、そうなのかなって」
「・・・あの時否定してたじゃん」
「本当にごめんなさい。本当は好きだった。楓のこと」
「なんだよそれ・・・」
「自分の中でまだ受け入れられてなくて・・・って言い訳だから。だから全部俺のせいなんだ。楓のこと守れなかった。好きな人のこと守れなかった」朔良の目から涙が流れる。
「泣くなんて卑怯だろ」
「う、ごめんなさい」
「机の上の写真・・・」
「あ、隠すの忘れてた・・・。気持ち悪いよね。楓のこと忘れられなくてずっと机の上に写真飾ってたから、こっちにも持ってきたんだ」
「首のも、ちらっと見えた・・・」
「あ、勾玉?本当ごめん、気持ち悪すぎだね。これもずっと持ってる」
「・・・今でも俺のこと好きなの」
「・・・好きだよ。ずっと」
「俺、彼氏いる」
「速攻振られたね。でも、付き合いたいとかそんなんじゃない。おこがましいけど、また・・・友達になりたい」
「・・・もうなってんだろ」
「いいの」
「いいもなにも、もう梨奈と凛と俺とずっといたんだから、友達だろ。てか、はずいわこの会話、大学生にもなって」
「はは、たしかに」
「・・・さくちゃんははずいから、朔良ってよぶから」
「ありがと楓」
朔良とまた友達に戻れた。いや、戻りたいと思った。あの写真のような笑顔で、朔良とまた過ごしたいと思った。