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彼らのはなし  作者: りら
2章
16/60

勾玉

朔良と一緒に俺が公園で遊んでいる。

あぁ、これは夢か。2人で遊んでいる風景をみながら、過去のことを思い出す。


朔良と俺は、幼稚園からの仲だ。


朔良はやんちゃだったが、小心者で、俺が背中を押したり守ってあげていたと思う。

地元は田舎であまり子供が多くない場所だったから、小学校でもクラスは一クラスだった。ずっと一緒にいた。学校へ行くときは待ち合わせして、帰りは途中まで、手をつないで帰った。朔良が手を繋いでくれた。


5年生の宿泊研修で、2人で勾玉のキーホルダーをつくった。おそろいのものができて嬉しかった。俺たちは特別なんだって思った。その時、自分の気持ちをやっと自覚した。俺は朔良が好きなんだと。


俺は自分で言うけど顔は整っていた方だ。足も速いこともあり、女子がキャーキャー言ってくれていた。でも、女子に優しくされても、話しかけられても、朔良と一緒にいるほうが楽しいし、嬉しかった。女子にくっつかれるのはなんとなく嫌だった。朔良が他の子と遊ぶのを見るのが嫌だと思った。朔良は俺のものなのにと思った。


そんな時裕也が言った。俺のことを面白く思っていなかったやつだった。

「おまえら、いっつも一緒にいて、手つないで帰ってるのおかしくね?お前らこいびとなんだろ!楓、お前の顔女みたいだもんな。朔良のこと好きなんだろ」

俺はその言葉にうまく反応できず顔を赤くしてしまい、黙ってしまった。自覚したばかりだった。まだ、朔良に知られたくなかった。気持ち悪いと思われるのが怖かった。

「うわ、楓顔真っ赤じゃん。俺知っているよ、そういうのホモっていうんだよね。ホーモ!ホーモ!ホーモ!!」他の男子たちも混ざってホモコールした。


「そんなわけないだろ!俺は楓のこと好きじゃねぇし。一緒にいてやってるだけだし。ホモなんて気持ち悪い。」朔良はそう言い放った。

()()()()()()()()()()()

「じゃぁ、楓だけがホモなんだな。女子に人気があるくせにホモなんだ。男子たち気をつけろよ、楓は男が好きなんだって~にげないと!」女子もくすくす笑っている。男子がゲラゲラ笑っている。朔良も顔は引きつっていたけど、()()()()()()


俺は走って家に帰った。その日俺は初めて一人で家に帰った。次の日俺は初めて一人で学校に行った。

楓が教室に入ってきた。「かえ」と俺に話しかけようとした時、ちょうど来た裕也が「うわ、ホモやろうがいる~ホモ菌うつるぜ」と騒ぎ出した。「やだ~襲われちゃう~」男子がふざける。俺に話しかけようとする朔良に「やっぱりお前もホモなの~」と裕也が言う。「そんなわけないじゃん」と朔良は否定する。「楓君ホモだったんだ・・・ちょっとショック」女子たちがひそひそ話している。「やめなよ」とほかの男子が注意すると、「お前もホモなのか~」と裕也がニヤニヤする。女子が注意しても、「ホモやろうかばうなんて気持ちわりぃ~」とひやかす。


1日が苦痛だった。

下校のチャイムと同時に教室からでる。

「楓!」と朔良が追いかけてくるが、止まらなかった。校門を出たとき朔良に追いつかれ、肩をつかまれた。

俺はその手を払いのけた。

「触らないで」そう言って俺は家に帰った。


次の日も一人で学校に行った。からかわれながら一人でいた。一人で帰った。

もう耐えられなかった。学校に行きたくなかった。

俺のうちは母子家庭だ。母に心配かけたくない。学校に行くふりして、母が出勤後家に戻った。

ピンポーンとチャイムが鳴った。窓から見ると朔良がいた。無視した。


先生から連絡があった母が仕事を抜けて戻ってきた。怒られた。心配させた。

母に話した。自分は男の子が好きだ。それをからかわれるのが嫌だ。学校に行きたくない。

朔良のことは言わなかった。


母は看護師だ。どこでも働けるから、と転校を決めてくれた。

それから神奈川に転校した。梨奈たちにあえた。達臣さんにあえた。幸せな時間を手に入れたはずなのに。



はっと目が覚める。もう外は薄暗らかった。


机の引き出しを開け、小箱を取り出す。中には何度も捨てようとしたけれど捨てきれずにいた勾玉がある。

「朔良・・・」

なんで今さら俺を揺さぶるんだ。やめてくれ。勾玉をごみ箱に投げ捨てようとした。


けどできなかった。

朔良はいつまでたっても俺の心から消えてくれない。



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