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彼らのはなし  作者: りら
2章
15/60

うん、そうだよ

授業が始まった。

朔良とは関わらない様にしよう、という決意は早々に破られた。梨奈が朔良を一緒に授業受けようと誘ったのだ。次第に俺、梨奈、楓の3人で授業を受けることが多くなった。昼休みは凛も一緒にご飯を食べることが多い。流れで連絡先も交換した。朔良の連絡先が俺のスマホにある。何とも言えない気持ちに襲われる。そして、あの日以来朔良は『楓』とは呼ばない。

朝も一緒にはいかない。「なんで一緒に来ないの?」と梨奈にきかれたが、適当にごまかしている。


大学生活にも慣れたころ、大学に向かっていると梨奈から連絡が入った。体調不良で休むらしい。

大丈夫か?ゆっくりやすめよと送り、講堂に一人で座る。


「齋藤君、おはよう」後ろから、朔良がやってきて、自然に俺の隣に座る。

「おはよ」

「あれ、梨奈ちゃんは?」

「今日は休むって」

「そっか・・・」

無言になる。気まずくて俺はスマホをいじっていた。


「齋藤君」

「なに」

「今日午前だけだよね授業、おわったらちょっと話したいことがあるんだけど時間あるかな」

「・・・いいよ」

「ありがと」


授業が始まった。集中できない。何の話をされるんだろう。ふと朔良の視線に気づき顔を向けると目をそらされた。一緒に過ごすようになってからも、目はほとんど合わせていない。俺が合わせていないと思っていたけど、朔良も合わせないようにしているんだ。ズキっとなぜか胸が痛んだ。


午前中の授業が終わった。ここまで会話はほとんどない。

「齋藤君、お昼食べながら話せない?近くにいいカフェがあったからそこに行こうと思うんだけど」

「分かった」

再び無言になる。梨奈がいないと何を話したらいいかわからない。大学を出て歩いて朔良の後ろを歩く。気まずくて隣に並べなかった。しばらくして、朔良が前から来た人とぶつかってしまった。


「あ、すみません」

「いってぇな・・・って、お前朔良か?」

「そうですが・・・、もしかして裕也君?」裕也という名に、身体がこわばる。あいつだ。

「そうそう裕也。中学ぶりだな。こっちの大学に入学してさ。お前も?」

「うん、そう」

「・・・っつうか、後ろの奴どっかでみたことあるんだけど誰だっけかな・・・あ、お前楓だろ!おまえら、まだつるんでたんだ、うけるわ~ホモ楓くん久しぶり~」裕也がニヤニヤする。ほんと変わっていない。イライラする。

「じゃあやっぱり、朔良もホモだったんだな」


「うん、そうだよ」


は?


裕也も唖然としている。「あ、そうか、よ、気持ちわり。じゃな。」裕也は去っていった。

「齋藤君、行こう」

俺は唖然として朔良を見ていた。目が合ったが、不自然に目をそらされた。

「・・・あそこの角曲がって少ししたらカフェがあるんだ」

「・・・ん」駄目だ。考えがまとまらない。

「え?」

「ごめん、俺帰る」俺ははそのまま走って逃げた。


意味が分からない。

頭がぐるぐるする。

達臣さんに会いたい。

落ち着きたい。

落ち着かせてほしい。


達臣さんに「会いたい」と連絡しようとスマホを触るが、やめた。

達臣さんは入社して今は忙しい。邪魔したくない。


とりあえず家に帰って、布団に横になる。頭が痛い。ぐるぐるする。気持ち悪い。

「うん、そうだよ」といった朔良の顔は本当のことを言っている顔だと思う。

じゃあなんで、と心の中で朔良を責める。なんであの時、過去のことがよみがえる。涙がこぼれる。

俺は泣きながらいつの間にか眠っていた。


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