恋人2
梨奈ちゃんたちが帰った後、バイトに行った。バイトから自宅に帰ってきたときにはもうすぐ日付が変わるころだった。
玄関の前で鍵を取り出そうとしていると、こつん、こつんと二人分の足音が聞こえた。足音は階段を上ってきた。
「あ、朔良」
「楓、お帰り。あ、その方が・・・?」
「ん。彼氏の達臣さん」
「佐藤朔良といいます」
「君が朔良君だね。楓をよろしく」彼氏さんはにこりと笑った。
楓たちが僕の後ろを通り過ぎ部屋へ向かうとき、
「楓が許しても俺は許さないから」
楓の彼氏さんが耳元でささやいた。
過去のことを知っているんだろう。・・・許せないのは仕方がない。当たり前だ。恋人にひどいことした相手なのだから。楓に許してもらえたことが奇跡なのだから。
「朔良、おやすみ」
「おやすみなさい」
彼氏さんは楓の肩をつかんで部屋に入っていった。ドアの閉まる音がいつもより重く感じた。
夜食を軽く食べて・・・と考えていたが、、ちょっと食欲がない。
シャワーを浴び、ベットにゴロンと横になった。今日は早めに寝ようと、少し暑かったため窓を開けると、楓も窓を開けているのか楓の声が聞こえた。
くぐもった、アレの声だ。
窓を閉めた。けれど、そもそこのアパート壁が薄いのもあり聞こえる。いや、聞いてしまう。
俺は上着を着て、部屋を飛び出した。
あの部屋にはいられなかった。
目的もなく夜道を走った。