彼らの話
好きな人がいた。
笑顔が好きだった。
笑顔を見るためによく話しかけた。
いつも一緒にいた。
「お前らこいびとなんだろ!」
トモダチがからかった。
君はびっくりして何も言えなかった。顔が真っ赤だった。好意が伝わってきた。嬉しかった。君もなんだって、すごくすごく嬉しかった。
でも、トモダチの反応が気になって、恥ずかしくて、ふざけた対応をとってしまった。
君は傷付いた顔をした。
トモダチはからかった。
からかわれて涙目になって、君は教室から飛び出した。
次の日から君はイジリの、からかいの標的になった。
どんどん加速するそれは、君にとってはイジメだったろう。
声をかけると、トモダチはもっとからかった。
それから何も言えなかった。
助けなかった。
話しかけなかった。
守らなかった。
君と話せなくなってしばらくして、君は学校を休んだ。
そして来なくなった。
そして転校した。
また話したい。
そんな権利はない。
まだ君が好きだ。
そんな権利はない。
君に謝りたい。
そんな権利はない。
君の笑った顔が思い出せない。
泣いた顔が、傷付いた顔が笑顔をすべて上書きしていった。
トモダチを作るのが怖くなった。
コイビトを作るのが怖かった。
スキナヒトを作るのが怖かった。
誰とも基本的に話さなくなった。
無口にな人と言われるようになった。
君を忘れられない。
他の人を好きになれない。
どこにもすすめない。
ずっとあの時のままとまっている。
君に会いたい。
君の笑顔を見たい。
思い出したい。
いま、何してる?
そう考える権利もないのだけれど。
4月から大学生だ。
この町にいるのはつらい。東京へ行く。
出発する前にと、君とよく遊んだ丘の公園によって君のことを考えていた。
公園で子供たちが楽しそうに遊んでいる。
さて、そろそろ電車の時間だ。
佐藤朔良は駅へ向かった。