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ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・ある男の独り言

 一緒に会社を経営していた仲間が逮捕された。風早という男だ。カルト信者の頭を殴り、怪我をさせた。殺人未遂になるか、暴行事件になるかは裁判次第と聞いていたが……。


 その尻拭いで会社は大変だった。もちろん、今まで通り経営などできず、あっという間に消えた。


 という事で俺、山下悟朗(36)は仕事を変えた。というか戻った。元々自己啓発や引き寄せの法則などでセミナー講師をしていたので、それで何とか食い繋ぐ。


 こんな事になった風早には恨みしかない。元々経営方針の違いはあった。女とネコ好きなところも気持ち悪い。俺みたいに毎日筋トレでもした方がよっぽど良いのにと思う。


 ただ、風早が供述には一理ある。カルトという悪いものがなぜ放置されているのか。結局、カルトの生贄事件はもみ消されたし、神はいるのか。理不尽ではないか。


 そんな疑問を持ってしまい、藤河七道の教会へ。藤河は風早のカウンセリングをしている牧師で、事件の関係者でもある。なので、ついつい熱っぽく疑問をぶつけてしまう。


 どうもサブカル系、陰キャ、ヲタクっぽい雰囲気の牧師だ。パーカーでジーンズ姿。ドラマや漫画に出てくる牧師とだいぶ違うので、より俺の口調はくだけていたと思うが、彼は意外にも熱心に俺の主張を最後まで聞いてくれた。


「どうしてです? 神様はいるんでしょ? 俺は風早のした事は全部が悪い気がしない」

「それでも、神は愛だから。末端のカルト信者や教祖も愛している。そういう人に無理矢理正論言っても聞かんだろ?」

「でも悪を野放しにするキリスト教の神ってなんですか?」

「野放しにはしていない。死後にさばきがあるよう泳がせているんだ。むしろ現世で何も無い方がヤバいんだ」


 いまいち納得できないが、藤河は聖書のマラキ書という箇所を見せながら説明する。


「神様は罪も悪も必ず罰する」


 今度は新約聖書の黙示録を見せてきた。


「それにな、人間の頭では考えられない事を神様はなさるから」

「そうですかね」


 俺はいまいち納得できない。罪とかも説明されるが。


 とは言っても藤河の人間性は嫌いにもなれない。キリスト教にとっては都合が悪い俺の質問にもちゃんと聞いてはくれたし。


 という事で藤河の教会で主催しているゴスペル教室に参加してみる事にした。元々歌は好きだったし、大声で歌ったらストレス発散になるだろうと藤河からの勧めもあった。


 黒人のゴスペルシンガーの講師で来てくれた。生徒は十人ぐらいだったが、意外と宗教感はなく、ノリの良いリズムで楽しい。


 あれ、楽しい?


 そう気づいてハッとした。なぜかカラオケとかより楽しいし、妙な自信もつく。


 まるで自己啓発やスピリチュアルでいう「自分を愛する」時の感情が、ゴスペルを歌っている時に生まれている。いや、それ以上に楽しくて生き返るというか。


「人間は神様に似せて創られたんだ。なので神様を賛美する事は、もしかしたら世でいう自分を愛する事や自己肯定感にも繋がるかもしれない」


 俺の疑問に藤河が答えてくれたが、本当か?


 いまいち腑には落ちないが、ゴスペルを歌うのは純粋に楽しい。


 もうすっかり風早の件は忘れていた。


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