番外編短編・都市伝説YouTuberユージン
カフェの窓からは夕方の日差しが差し込んでいた。窓は木崎苺に割られた時はどうしようかと泉美も絶望したものだが、今はちゃんと修繕されていた。
「ニャ〜オ!」
看板ネコのミャーは、そんな窓際の椅子に座り、会計を済ませた客を見送った。可愛い鳴き声をあげ、アルバイトの咲は「可愛い!」と。相変わらずだ。事件の時は少し落ち着いていたが、根は騒がしい女子高生だ。
「そういえば店長、ユージンの動画みましたか? 呪いの人形の秘密が暴かれていまして、超怖かった!」
「ちょ、咲ちゃん。私は怖い系は苦手!」
「でも、ユージン、今は本当に楽しそう。牧師さんとも相性いいし、よかったんじゃないですか?」
そんな噂をしていたら、本当にユージンが来店。お気に入りのフルーツパフェとコーヒーフロートを注文した。
急いで厨房でそれらを作り始めた。テキパキと手を動かしながらも、ユージンの髪の毛も暗めの茶髪に変化し、服装もだいぶ落ち着いた。今は以前よりも世の中を舐めている感じがしない。やはり、今の都市伝説YouTuber路線があっているのかもしれない。
「おお、うま! フルーツパフェうま! コーヒーフロートもうま!」
無邪気に食事を楽しむユージンは子供のようで、泉美は苦笑してしまうが。
「そうだ、店長。また店の宣伝動画作ろうぜ。今度は都市伝説要素をたっぷりと入れて」
「都市伝説要素って何よ?」
「そうですよ、ユージン。それってなんです?」
泉美だけでなく咲にも聞かれ、ユージンはカバンから台本の下書きも見せてくれた。
「は? うちのメロンソーダが秘密結社から材料を得て作っている媚薬!? どういう都市伝説よ……」
台本の内容はため息がでるほど下らない。
「でも店長、ホラー風に撮影したら、ワンチャンいけるかも?」
咲は逆に乗り気だ。
「そうだよ、店長! このカフェも都市伝説に染め上げるぜ!」
「わーい! やろう!」
若いユージンと咲は盛り上がっていたが、泉美は全くついていけない。世代格差と、自分の老いも感じ、口元が引き攣る。
「ミャーオ!」
そんな泉美を慰めるかのように、ミャーは可愛い鳴き声をあげていた。




