番外編短編・モフボウズと貴子
すっかり事件も解決し、カフェも平和だ。ミャーは話さなくなってしまったが、看板ネコとして活躍中だ。おかげでネコを連れてカフェに遊びにきてくれるお客様も増えてきたところ。
「店長! 貴子さんってお客様来てまーす」
「え、ほんと?」
閉店近く、バイトの咲に言われて、厨房から出来上がったフルーツパフェを持って行き、貴子の前に置いた。
相変わらず貴子は黒髪ロングヘア。アジアン美女風。クールな表情でフルーツパフけェを食べていたが、モフボウズの待ち受けを見ながらニヤニヤ。咲にも話しかけ、飼いネコ自慢をしていた。
泉美は椅子の上で女王様のように座っているミャーをチラリと見る。確かにモフボウズも可愛いが、うちのミャーだって可愛い。わざわざ口にはしないが、心の中で「ミャーが一番」と思うのは、自由だろう。
「ところで貴子さん、なんでモフボウズって名前なんですか? ちょっと矛盾してませんか?」
「確かに! 咲ちゃんの言う通りね。なんでこんな名前なの?」
「いやー、うちの子は可愛いすぎるんで、名前はちょっとボケたものの方がちょうどいいかなて」
貴子は目を細めてフルーツパフェを食べる。
「でも面白いセンスですよ。貴子さんのアジアンビューティーな感じとも合う感じ!」
「あら、咲ちゃん、ありがと」
貴子と咲は盛り上がっていたが、泉美はミャーの近づき、深く頷く。
「ごめん。ミャーの名前はけっこう適当に決めた」
「なぁ?」
そのミャーの声は少し不満そうだったが、今となってはミャーの本心などはわからない。ミャーが話さなくなり、数日が経っていた。
「水川、何、ミャーちゃんと会話しているのよ」
貴子に突っ込まれ、泉美はすぐに仕事に戻る。
今まではミャーとの会話も慣れていたが、客観的に見るとおかしい。
咲も少し傷ましそうにこちらを見ているし、ミャーが話さなくなっても仕方ないだろう。これで良いかもしれないと納得する泉美だった。




