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ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


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事件解決編-4

「このネコの雑貨店、絶対に泉美さんにも気に入って貰えると思うんだ」

「へえ、そうなんだ」


 さっそく泉美と風早のデートが始まった。まずは風早と電車に乗り、彼が進めるネコの雑貨店へ。


 隣の街にあるネコの雑貨店で、隣にはネコカフェもある。隣町は泉美が住む江田町と比べ、都市開発も進んでいるので、商業施設もオシャレだ。若い子たちも人気なお店らしく、風早も自信たっぷりだ。泉美の少し前を歩くネコ雑貨屋に案内してもらったが。


「ああ、ネコ様だらけ! 拝みます!」


 風早は店内に入ると、本当に手を合わせて拝んでいた。


 店内はアインティーク風の雰囲気もあり、ネコのぬいぐるみの種類の多さにも驚くが、風早の仕草に引いてしまう。本当のネコを神にように見ていた。これは聖書でいう偶像崇拝か?


 とはいえ、風早はイケメン。定員や客の女性にも好意的に取られていた。これが藤河がやったら犯罪者に見えそうだが、イケメンは色々とバイアスがかかって見える。それに風早にミャーに似たぬいぐるみも買って貰い、何の文句も言えない。この手のひらサイズのぬいぐるみは、確かに可愛い。


 他にも皿、コップなど日用使いできる雑貨も可愛く、若い女性の目がハートになるのは分かる。ここに咲を連れてきたら、語彙力崩壊するはずだ。泉美もどうにか大人らしくしていたが、うっかりキーホルダーやボールペンなども購入。咲にお土産だと言い訳しつつも財布の紐はゆるゆる。もっともミャーに勝てるほどの可愛い雑貨は見つからず、一万円札を消さずに済んだ。


「おお、本当にネコ様のグッズ可愛いよ」

「ねえ、風早さん。神様のようにネコが好きね。何か宗教やってる?」


 この言い方は婚活女子としてマナー違反と思ったが、聞かずにはいられない。


「宗教なんて胡散臭いのはやってないよ。僕は無神論者だ」

「そう?」


 ネコ=神にしている自覚はないようだ。


「そんな宗教なんて集団で何かやっているのは胡散臭いですよ。僕は個人主義だよ。非科学的だし、宗教なんて時代遅れでしょ?」

「そうですか」

「そうですよ。戦争の火種だし、個人でネコを愛している方が平和で寛容でしょう? まあ、日本人らしく僕は全ての宗教は尊重はしますけどね、一応」


 なぜか風早が泉美を見下したような視線を向けてきた。実際、風早の方が背が高いわけだが、なぜか背中がゾクっとしてしまった。


 そういえば藤河は口も性格も悪かったが、こういう人を下に見るような視線を向けた事はない。そもそも藤河は背も低めだったが、なぜ今、この瞬間に彼を思い出しているのか不明だ。冷静に頭の中の電卓を動かすと、どう答えを出しても風早がハイスペイケメンなのに?


「まあ、次は隣のネコカフェへ行きましょう!」

「そ、そうね」

「泉美さんもきっと気にいるはずですよ」


 という事で次はネコカフェへ。なぜ藤河について考たのか、どうでも良くなった。


 しかしそこは泉美にとって良い場所ではなかった。確かにネコは可愛く大事にされていたが、フード系の出来が全然ダメ。明らかに冷凍食品もあり、解凍も不十分だった。使っている食材の質の悪さ、調理の雑さが透けて見え、気になって仕方ない。コーヒーカップも汚れが落ちてないのも気になる。職業病が発症してしまう。


「泉美さん、機嫌悪いですか?」

「いえ、別にそんな事はないわ」


 といっても風早には関係ない事なので、無理矢理笑顔を作り、頷く。


 このカフェのテーブルは傷が多く、シミも残っていた。職業病は抑えきれず、また小さなアラに気づくが、ここのいるネコは幸せそう。ネコが幸せなら、それでいいはず。泉美はまた無理矢理笑顔を作った。


「ところで、泉美さんたちは事件を調べているんだって?」

「え?」

「その後、どんな感じ? 織田は捕まった?」


 そういえば、風早は以前カフェに来た時、ベラちゃん事件の詳細を藤河から聞いていたが。


「どう? ベラちゃんの件は?」


 風早は泉美の目をじっと見ていた。何か試しているような、探っているような目。


 ここはネコがワチャワチャと遊ぶこの場所。ネコ大好きな風早はなぜこんな表情?


 また泉美の背中がゾクリとする。


「いえ、全然何も進んでいない。というか私たち、素人だし」

「そっか」

「ええ」


 泉美はぬるいコーヒーを口に入れた。想像以上に不味かったが、目の前の風早の視線が気になって仕方ない。


 とても婚約者候補の女に見せる顔ではない。むしろ……。


「まあ、だったら良いか。ネコ様ー!」


 風早もコーヒーを読むと、ぶちネコを追いかけていた。エサのガチャガチャも何回も引き、ネコの関心を引いていたが、店員に注意されるほどだった。


「お客様、ネコは神様ではありませんよ。ネコはネコですよ。大事にしてあげて」


 風早に呆れた店員の声を聞きながら、何かがひらめきそうだが、いまいちピンとこない。


「まさか風早さんも事件に関係ある……?」


 わからない。直接聞くわけにはいかないが、このネコ好きっぷり。ネコを生贄として殺しているカルトに強い恨みがあっても不自然ではない?


 織田に危害を加えたのも風早?


 偶像崇拝も風早のことを指してるの?


 そんな疑問が次々に浮かぶが、風早はカフェでネコを追いかけ回し、結局、店員から追い出され、デートも終了となった。事件について風早に聞くチャンスはもうなさそう。それに風早は次の約束について何も言わない。婚活的にも大失敗だったかもしれない。


 泉美は一人、江田町の駅につき、ミャーを迎えるために教会へ向かっていたが、風早への不信感は募るばかりだ。


 今はかなりの確率で風早が織田を襲ったと見ていた。動機はネコ。ベラちゃんを殺されて逆恨みした。


「もしや、ベラちゃん事件を立件できなくても、風早が犯人だったら、この事件も動く?」


 そんな気もしたが、風早が犯人というのも泉美の憶測だ。何の証拠もない……。


 その時だった。背後から何かお物音がして振り向くと、怪しい人影があった。


 しかも木崎苺!


「きゃ、こっち見るなー!」


 苺は踵を返すと逃げるが、そうはさせない。泉美は素早く彼女の首根っこを掴んだ。おそらく風早のストーキングをやっていたのだろうが、苺はプルプルと小さなリスのように怯えていた。


「助けて! 私は何も知りませんから!」


 苺は金切り声を上げる。住宅街で大きな声を出されてもたまらない。とりあえず、苺を藤河の教会へ連行した。


「警察にはいかない。その代わり、知っている事は全部話してくれるわよね?」


 泉美は笑顔を保ちつつも、低く、ドスのきいた声を出す。怯えているリスだがこれぐらい威嚇しても悪くないだろう。


「わ、わかりましたよー!」


 苺は涙目だった。

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