表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/58

事件解決編-3

 性能が悪くなってきたかもしれない泉美の頭にある電卓だったが、完全に壊れている訳ではない。


 風早とのデート当日、泉美は髪をクルクルと巻き、女子アナ風の清楚なワンピースを着込み、しっかりとメイクをしていた。


 カフェ店長の時はメイクも薄め。衛生面の問題もあるので、香水やマスカラもできない。アクセサリーやマニュキュアもそう。疫病の時はマスクをつけっぱなしだったのでメイクも手抜きだったが、今日はマスカラも塗る。


 といってもアラフォーの泉美だ。派手すぎず、清楚風のチークや口紅の色を選んだ。風早の好みとは違うかもしれないが、もう泉美の中では彼への興味・関心は薄い。


『まあ、泉美。典型的な婚活女子っていうルックスね!』

「そうかね?」

『ルックスというより鎧ね! 攻撃力高いわ。これで風早から事件の事情も聞けるんじゃない?』

「そうね」


 手鏡で前髪を整えつつ、ミャーの声を聞く。今のところ、風早が事件に関わっているかは謎だが、何か知っている可能性は捨てきれない。特に木崎苺の件は風早から直接話を聞きたい。


 そうは言っても木崎苺について立件する気も失せていた。窓ガラスの修繕費と謝罪の言葉があれば良いだろう。動機が風早への恋心としたら、あまり大事にもしたくない。同じ女として気持ちはわかる。


「さあ、もう支度はできたわ。そろそろ行きますかね」


 泉美は家のクローゼットの中にある小さなカバンを取り出し、そこに貴重品やメイクポーチを入れた。小さなカバンは婚活女子には必須という記事を見たことあるので、実践してみる事にした。


「ミャーはどうする? 家にいる?」

『うーん、退屈ね。七道おじのところへ行きたいわー』

「まだ時間あるから一緒に行くか。じゃあ、ミャーもキャリーケース入って。行きましょう」


 こうして準備を終えると、まずは藤河の教会へ向かう事にした。


 今日は気持ちのいい秋晴れだ。空は澄み、風も穏やか。ベラちゃんや織田の事件があった事など信じられないぐらい平和な空だが、脚を進め、あっという間に藤河の教会の前までつく。


 教会の行事なのか不明だが、花壇や門の周辺を教会の人達が何人か掃除をしていた。もちろん藤河も軍手をはめ、作業着姿で教会の前を箒で掃いてる。美緒子も花壇の草むしりをしていたが、ミャーを見せると、教会の人達はキャーキャー騒ぎ始めた。あっという間にミャーはアイドルネコ化したらしい。さっそくミャーはぶりっ子ポーズをとっていた。


「という事で、藤河。ミャーの事よろしく」

「いいけどさ、あの風早と会って大丈夫なん?」


 珍しく藤河が心配してきた。明日は雪でも降るのだろうか。


「そうかな? 風早はベラちゃん事件には本当に関係ないと思う?」


 それも一つの疑問だった。今のところベラちゃん事件とは何の関わりもなさそうだが、織田が被害を受けた今は全ての可能性を捨てきれない。


「さあ。でも風早さんのSNS、けっこう酷いな。本名でやってるけど、相当な女好きだぜ」


 藤河は露骨までに嫌な顔。


「そんなダメ?」

「ダメだよ。キリスト教ではな、童貞と処女が尊いのだ。そして一途に愛し合う夫婦が一番なんだよ」

「へー」


 力説するけど藤河を見ていると目がしらける。藤河はおそらくイコール年齢の魔法使いだろうが、こんな形で知りたくもなかった。


「そうよ。性的な乱れはダメよ」


 なぜかミャーと遊んでいた美緒子も話題に入ってきた。


「そうだ。性的な乱れと偶像崇拝はセットだからな」

「ええ!」


 藤河と美緒子は二人とも鼻の穴を膨らませて力説。藤河の教会はカルトではないが、やはり一般的な価値観とは違う所もありそう。


 泉美の頬は少し引き攣るが、「偶像崇拝」という言葉がやっぱり心の残る。この言葉は事件のキーなのだろうか。


「泉美ちゃんも偶像は避けなさい」


 美緒子も大人しそうなキャラのくせにはっきりと言う。


「これって事件に関係ある?」


 といっても答えはでないが。


「まあ、とりあえず行ってくるわ。藤河、美緒子さん、ミャーをよろしくね」


 とりあえず今は風早と会うのは事件の手がかりになりそうだ。


 二人に手を振り、住宅街を抜け駅前の方まで歩く。駅前ローターリーで風早と待ち合わせの予定だった。


 風も空も相変わらず平和だ。事件が起きた事など信じられないぐらいだが、今日は駅前ロータリーでは、あのカルトの布教活動もやっていないようだ。代わりに大学生のボランティアが募金を集めているぐらい。人通りは老人や主婦、子供連れも多く、見れば見るほど事件が起きた事など嘘みたい。


「泉美さーん! 遅れてすみません!」


 ちょうど時間ピッタリ。待ち合わせ場所に風早が手を振りながらやってきた。


 髪はセットし、カジュアル系のジャケットも似合ってる。先程、藤河の作業着姿を見たおかげか、風早のルックスは目の補養。このまま風早への興味を失うのは惜しいか?


 泉美は風早が左腕につけていいるブランドものの時計をチラッと見つつ、笑顔を作った。前に婚活した時は、こんな高そうな時計をつけている人は見た事はない。ちなみに藤河は百均のデジタル時計をつけていた。


「いえ、全然待っていないです。風早さんに会う事をとっても楽しみにしていました」


 まだま泉美の頭の中にある電卓は壊れてはいないらしい。さらに女子アナ風の感じの良い笑顔を作った。これはミャーの言う通り鎧かはわからないが、攻撃力はあると信じてる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ