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ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


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新しい事件編-5

 泉美と藤河は風早のSNSを調べていた。咲の説が本当だとすれば、風早の周りにいる女が窓ガラスの犯人の可能性が高い。動機も風早が泉美に近づいたから。つまり嫉妬だ。


 現在、別に風早とデートもしていない関係だ。彼氏彼女とうより、婚活で出会った知り合いレベルなのだが、そんなものは関係ない。


 ベラちゃんの事件と関係があるか謎だが、泉美達はまずは風早の交友関係を調べる為、SNSを見ていた。


 咲は事件については飽きてしまったようで、ミャーと遊んだり、勉強もしていた。登校拒否中でも学業については心配はなさそう。


『ほら、言ったでしょ。風早は事件に関係してるって』


 この結果にミャーは、さらに顎をつんと上げていた。女王様のようにカフェの椅子に座っていたが、悔しいぐらい似合う。


「うわー、風早さん、女の好み、めっちゃ、わかりやすいなー!」


 藤河は風早のSNSのフォロワーのアカウントを見ていたらしいが、どれも派手目、茶髪、しっかり者そうな雰囲気の女ばかりだという。


 実際、泉美もフォロワーを見てみたが、確かに女の好みがわかりやすく引いた。泉美がよく似ていると言われるアナウンサーや女優もフォローしており、確かに風早が泉美にちょかいをかけた理由は頷けるが。


 泉美は風早がSNSにネコ動画や画像ばかりあげ「ネコ様〜!」と拝んでいるのも気になった。現在はアメリカンショートヘアのメガミちゃんという子を室内飼いしているようだが、この名前って……。


 メガミちゃんには何の罪はない。美しいネコだ。それでも神のように拝まれているのは、聖書でいう偶像崇拝っていうもの?


 確か美緒子は偶像崇拝をすると、女関係にだらしなくなると言っていた。風早の女達のフォロワーを見る限り、同時進行で何人とも関係があるそうで引いた。泉美の頬は引き攣りっぱなし。


 風早はハイスペで見た目も良い男と思っていた。泉美の頭の中の電卓は、風早と付き合う事を正しいと答えを出していたが、全くそうでもなかったのか。


 失恋したようなもので、泉美の肩も落ちてくる。


 ベラちゃんの事件と関係はなさそうだったが、祈りの答「偶像崇拝は避けなさい」は、風早は辞めた方がいいというメッセージにも解釈でき、泉美は全く笑えない。泉美はクリスチャンでも何でもない日本人だったが、無神論者から「神様はいるかもね???」という方向性に変わってきてしまうものだ。


「お! 水川! 風早さんの会社の動画チャンネルも見つけた! しかしこの木崎苺っていう秘書、風早さんにイチャイチャしていないか?」


 藤河の言葉にみんな彼のパソコンの周りに集まってきた。


 会社紹介の動画だったが、確かに木崎苺という秘書は、風早に色目を使っている。ベタベタ触っていたが、彼は満更でもなさそう。


 そしてこの木崎苺の外見は、あの似顔絵とそっくり。


「店長さん! この人です! この木崎苺って人がカフェの窓ガラスを割っていましたよ!」


 咲の証言も得た。木崎苺が窓ガラスの犯人で間違いない。おそらく、動機は嫉妬。この様子では風早と木崎苺は深い仲だったのだろう。しかし風早が婚活をはじめ、泉美と仲良くなった。これに嫉妬し、窓ガラスを割った。


「筋が通るじゃん! 咲くん、君は天才か? 推理の才能があるよ!」


 藤河に褒められた咲は恥ずかしそう。顔を赤くしモジモジしていた。この点はミャーと大違いだが、咲のおかげで一歩進んだ。


 泉美はさらにナポリタン、パンケーキなどを咲に奢り、みんなで褒めた。


「へへ、推理っていいね! 褒められたし、美味しいもの食べれた!」

『そうよ、咲。登校拒否ぐらいで気を落とさないで。咲にもいいところがあるわ』

「わーん、ミャー、ありがとう! 織田さえいなくなれば学校戻れそう!」


 ミャーと咲はさらに仲良くなってしまい、カフェの中は大賑わい。藤河もパンケーキをもぐもぐしながら、大声で笑っていたが。


「ちょっと、みんな。犯人がわかったところで気を緩めないで。これでどうやって木崎苺を捕まえるの? それにベラちゃんの犯人、織田はどーやって立件するの? どっもちも警察が動くと思う?」


 泉美の現実的な発言に、カフェの皆は黙り込んでしまった。


「た、確かに! 警察が私の証言で木崎苺さんを捕まえる気がしない。織田さんの件も無視したし」


 咲はネガティヴモードに戻ったが、それは仕方がない。窓ガラスもベラちゃん事件も犯人の正体まで突き詰めたが、それを立件する手段がない。


 あれほど警察を馬鹿にしていた泉美達だったが、結局、犯人を捕まえてるのは警察だ。素人はそれ以上はできない?


 どんとカフェの空気は落ちてしまうが、ミャーだけは偉そう。


『でもま、素人なりに頑張ったじゃないの。聞いてくれるか分からないけれど、とりあえず、分かった事は警察に話したらいいんじゃない?』

「そーだけどー」


 藤河だけが口を尖らせ不満そうだが、これはもう仕方がない。


『犯人を推理して突き止めただけでも、素晴らしいじゃないの。そうよ、あとは警察のお仕事でしょ』


 女王様のように偉そうに椅子に座ってるいるミャーに、誰も逆らえない。


 結局、みんなで警察に行くことにした。咲も重要な証言者。警察に行くことも快諾してくれた。


 大急ぎでカフェの片付けを済ませ、掃除も終わらせると、みんなで外に出て、歩き始めた。ミャーは咲の腕に収まり、なぜか当たりをキョロキョロ窺ってていたが。


「ミャー、どうしたの?」


 咲が聞く。ミャーの耳はつんと立っていた。あのベラちゃんの事件の時のよう。


 それに警察のサイレンの音も響いてきた。住宅街の織田の家の方から?


『これは事件かも!? みんな、織田の家に行きましょう!』


 ミャーは咲の腕からすり抜けると、慌てて走る。


「待って、ミャー!」


 急いでみんなで追いかける。こうなったら、ミャーを止められないが、どういう事?


 泉美も不安になりつつとにかく走る。まさかまた事件?


「え?」


 その不安は的中してしまった。織田の家の周辺は、野次馬が連なり、大騒ぎ。警察も救助車も騒いでいたが、頭から血を流した女が織田家から運ばれるのを見てしまう……。


 あの女はカルトの聖書を配っていた一人だ。おそらく織田なのだろう。


『泉美、咲、七道おじ、これは事件よ! 新しい事件!』


 ミャーが教えてくれなくても分かってる。新しい事件が起きてしまった。


 ベラちゃん事件の第一容疑者が被害に。全く予想していない。


「私達の推理は間違っていた?」


 泉美は弱々しく呟く事しかできなかった。


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