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ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


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新しい事件編-4

「まあ、確かのこの似顔絵、水川に似てるな。は! もはや水川が犯人か! 自作自演だったのだ! そうだ、そうに違いないぞ!」


 カフェに合流した藤河にコーヒーを出してやったが後悔した。例のイラストを見せると、藤河は泉美が犯人だと騒ぐ。


 咲はクリスチャンという事もあり、牧師の藤河には普通に接していたが、泉美は頭を抱えそう。ミャーも白けた目で椅子の上に座っていた。


「あのね? 窓ガラスが破られた夜、あんたと一緒にいたでしょ。何で私が犯人!? そもそも自分の店を割る必要ってどこ!? 動機ないでしょ?」

「いや、迷惑系のユージンも人気だ。自作自演の炎上商法っていうのもあり得る。うん、水川が犯人や」

「全く何なの……」


 藤河の推理能力に胃も痛くなる。これまでベラちゃんの犯人を見つけ出せたのも、もはや陰謀論者らしい妄想の賜物としか表現できない。


「だったら牧師さん、誰が犯人です? 私は窓ガラスの犯人を目撃したんですよ。店長さんじゃないですね。牧師さん、天然ボケですか?」

「咲ちゃん、あんた結構はっきりいうね?」


 こんな咲にも呆れてくるが、今はパフェやクリームソーダをモクモクと味わい、野暮ったい女子高生という雰囲気も薄れてくる。学年トップらしいし、この中だったら咲が一番頭がいいかも。


『だったら咲。あんたが誰が犯人だと思う?』


 ミャーは上目遣いで咲に近づいた。自分の可愛さが咲には弱い事を十分知り尽くしている。あざとい。あざといが、実際に可愛いミャーに誰も文句は言えない。


「そうだぞ。君はだれが犯人だと思うかね?」


 藤河もコーヒーを飲みつつ、意見を聞いた。それは泉美も同意見。


 今までの推理はこの三人で何とかしようとしていたからかもしれない。ネコ、陰謀論者、カフェ店長という三位一体では土台無理があるのだ。父、子、聖霊の三位一体とは違うのだ。泉美も咲に意見を求める事は賛成だ。


「えー、私が推理? きゃー、テレビドラマや漫画みたい! 推理してみるよ!」


 咲はテンションが高くなり、スクールバックからノートやボールペン、スマートフォンも取り出して考え始めた。ノートやボールペンも全部可愛いデザインのもの。スマートフォンのケースもクリームソーダの絵がついていた。よっぽど可愛いものが好きそうだが、果たして推理は?


 その間、藤河はこっそり泉美に話しかけてきた。


「ところで、あの子。学校行ってるんか?」

「登校拒否中よ」

『織田の娘のせいよ!』


 藤河の疑問に泉美とミャーが話すと、時に驚く事はなかった。


「ま、学校なんて悪の組織が作った奴隷製造機関だから、行かなくても気にすんな!」

「えー? 牧師さん、陰謀論者なの? おもしろ」


 藤河の陰謀論者らしい斜め上の励まし方に咲は手を叩いて大笑い。


 そんなこんなで推理は全く進まない。泉美も藤河も腹が減ったというので、パフェを作ったり忙しい。ミャーもぶつぶつ文句をこぼす。仕方がないので、一旦コンビニへ向かい、ネコ缶を買っきてミャーに与えた。


 帰ってくると、咲だけは真面目に推理をしていたが、藤河は教会からパソコンを持ってきて仕事も初め、ミャーはゴロゴロとマイペースに遊んでいた。


 カオスで自由すぎる雰囲気に泉美は引くが、本来カフェはこうい場かも。もう少し敷居を低くし、自由で誰でも楽しく遊べるようなカフェにしても面白いと思った時だった。


 咲が手を挙げた。


「はーい! 推理ができましたよ!」


 という事で自由にしていた面々も咲の周辺に座り、ゆっくりとコーヒーでも飲みながら、咲の推理を聞く事にした。


「まず、私は店長さんと犯人の雰囲気が似てることから、色々説をたててみました。一つは双子説」

「私は双子ではないわ。一人っ子のゆとり世代よ」

「あぁ、第一説だったのに!」


 咲は明らかにガッカリしていたが、ミャーに励まされ、二つ目の説を披露した。


「残念! でも二つ目の説行きます。ドッペルゲンガー説です! 店長さんとそっくりな架空の存在で!」

「おお、これは都市伝説だね! そうだよ、この世には自分とそっくりな架空の存在が確かに存在し……」


 咲と藤河は都市伝説と陰謀論で盛り上がり、推理はすっかり脱線。咲も藤河同様、推理能力などはなかったのだろうか……?


『もう都市伝説や陰謀論はいい加減にしてね。咲、三つ目の推理を言って!』


 ミャーがキリキリと怒り、ようやく二人は妙なテーマで盛り上がるのを辞めていたが。咲によると、女子高生でも都市伝説や陰謀論に興味がある子は特に珍しくもないというが。


「わ、わかったよ! だったら三つ目の説行きまーす! 三つ目は痴情のもつれ説です!」


 三つ目の説は、咲も自信があるのか、声が大きかった。


「そう、男がらみの説。店長さんが付き合っている男の元カノがこの犯人!」


 咲は似顔絵を描いた紙をボールペンでコンコン叩く。ネコのマスコットつきのボールペンのせいで、深刻度は全くない。


「そう、店長さんの彼氏は、女性の好みは茶髪でちょっと派手目な、しっかり者系の女性。で、元カノも店長さんに似ていた。動機は彼氏を店長さんが略奪したという逆恨み?」


 咲は鼻の穴を膨らませ、ドヤ顔。


「どうです? この推理、筋通ってません? って、店長さんが彼氏いる前提で話したけど!」


 咲は自画自賛してキャッキャと笑う。似たような動機のサスペンス漫画を最近読んだので、思いついたというが。


 ネコ、陰謀論者、カフェ店長の三位一体はこの推理を聞き、顔を見合わせる。


『そうじゃん! 咲ちゃんの言う通り! 風早の女関係! これが窓ガラス割った犯人!!!』


 ミャーが吠える。


 もっとも可愛いネコなので、吠えたとしても、たいして怖くはなかったが。


「っていうか、窓ガラスについては風早さん関係と判断していいって事?」


 ミャーも藤河も深く頷いていた。


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