表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/58

ネコと和解編-4

 カフェの窓ガラスが割られ、ユージンの配信にまで主演し、大騒ぎになった訳だが、陽はまたのぼる。


 翌日、泉美はカフェの窓ガラスの修理の為、業者を呼んだり、事務作業に追われた。ちなみに警察によると、カフェには指紋や犯人の遺留品は全くないという。窓ガラスも修理して良いという。


 修繕費は自腹。その見積もり金額を見ながら、ますます犯人への怒りが募った。


 すっかり忘れていたが、風早からもトークアプリに連絡が来た。あの動画配信を見ていたら、面白がり、何か協力できることはないかと言ってくるぐらい。


 残念ながら、風早にできることは無さそうだったが、今度食事に誘われた。正直、今は婚活どころではないが、ハイスペ高収入の風早に断るのも気が引ける。


 また、藤河とミャーは織田家の近くに調査しに行ってしまった。ミャーもこの事に怒り、潜入調査をする事は決定事項になった。泉美としてはミャーに危険な事はさせたくなかったが、もう止められそうにない。モフボウズの事も心配だった。


 こうして午前中は忙しかったが、カフェは営業できず、暇になった。


 確かに織田家に潜入調査中のミャーは気になるが、泉美がそこで出来る事はないだろう。


 結局、いてもたってもいられず、ご近所さんに窓ガラスの犯人について聞き込みをする事に。警察は当てにならないし、ご近所さんだったら泉美の方が詳しいという自負もあった。


 まずは糸原の本屋へ。


 平日の午後は客も来ないようで、糸原はカウンター席で暇そうにしていた。相変わらず万引き防止のキリスト看板風のポスターが貼ってあり、そこだけは華やかな書店の中で妙に目立っていたが。


 泉美は書店の新刊コーナーが気になりつつも、糸原に何か知っていないか聞いてみた。


「それが知らんのだよ。何か若い女を見たって人はいたんだがな」

「そっか」


 人の良い糸原は、心底困った顔を見せた。


「しかし窓ガラス割るのは暴力的だよ。なんとなくカルトのせいでは無い気がする」


 糸原は顎をなでつつ考え込んでいた。


「なんかカルト的な『正義感』のようなものが無いんだよな。むしろ、突発的というか、イライラしてやったというか、暴力的過ぎるのが引っかかる」

「そうなのよねー。誰かしら。うちの店にカルト信者以外でアンチがいると思う?」


 糸原の話に頷きつつ、泉美は首を傾げる。これでも長年、地域に密着して営業してきたつもりだ。恨まれる理由はどう考えてもわからない。


「でも逆恨みってあるから」

「そうねー」


 結局、答えなどせず、サスペンスの新刊を買って店を出た。糸原の推し作家の作品らしい。サスペンスは得意じゃないが、何となく買ってしまった。そういえばまだ「私達の幸せな結婚式」は読めていない。このまま事件が解決しなければ、永遠に読む機会も無さそうだ。


 そんな事を考えつつ、カフェの周辺のご近所に聞き込みをしたが、糸原の証言以上のものは一つも出なかった。


「困ったな」


 カフェの前を通る。割れた窓ガラスにはシートは被せられ、明日、業者が修繕してくれる予定だった。踏み荒らされた植木鉢はそのまま。仕方なく、これを片付けていたら、背後から声が。


「麗奈さん!」


 ベラちゃんの飼い主の麗奈だった。あの日に比べて少し痩せた模様だ。実年齢よりも老け込んでしまったようだが、無理もないだろう。それでも目は元気そうで、ずっと落ち込んでいる訳でもなさそうだった。


「大変だったわね、泉美さん」

「いえ、いいんですよ」

「こんな事になるなんて、責任感じちゃう。もうベラの調査はいいわよ?」


 力無く笑っている麗奈。それを見ているとやるせない。こんな目に遭って不満しかなかったが、麗奈の事を忘れていた。やはり当初の目的だ。窓ガラスの犯人がベラちゃん事件と関わっているか不明だが、再度麗奈に調査を続ける事をハッキリと口にした。


「乗り掛かった船ですよ。犯人を見つけるわ」

「そ、そう……。でも無理しないで。危険な事はやめて。心配よ」


 現在進行中、ミャーが危険な事をやっている訳だが、泉美は少し笑顔を見せて深く頷く。


「麗奈さんは他に気になる事や気づいた事は無いですか?」

「そうね。昨日、このカフェから大きな音が聞こえて出たら、もう野次馬がいっぱい」


 麗奈は目を少し上の方に上げ、昨日の事を思い出しているようだった。


「女子高生ぐらいの子がいてね、若い派手な女を見たって言ってたけど、見失ったわ」

「本当ですか?」


 泉美の声が弾む。それはミャーの証言とも一致するではないか。


「それは警察には?」

「言うわけないじゃない。ベラの事もろくに調査していないところに。あ、ちなみ女子高生はおとなしい感じの子だったね。じゃあね」


 麗奈はそう言い残すと、手を振って去っていく。


「女子高生?」


 やはり窓ガラスの犯人=カルト信者ではない?


 まだ何もわからないが、今はこの女子高生を探すのが先決?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ