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調査開始編-2

 もう雨は降っていなかったが、住宅街の歩道には水たまりもあり、風も湿ったい。泉美も癖毛なので、今夜はしっかりトリートメントもしておかないと。


 途中でコンビニに寄り、ネコ缶もいくつか購入すると、藤河の教会へ向かった。


 また一階の教会の入り口は開けっぱなし。わざわざチャイムで呼び出すのも面倒なので、そのまま上がる。それにしてもこの防犯意識の薄さは何だろう。ベラちゃんが酷い殺され方をし、闇バイトもこの地域で起きているのに。やっぱりミャーをここに置いておくのは不安になりつつ、声がする方に向かう。


「お、水川かよ。何の用だよ」


 その部屋は藤河の住居スペースだったらしい。ソファと机、ダイニングキッチンなど一通り生活するものが揃っているようだが、泉美はここに入って後悔した。


 藤河はソファの上でミャーとリラックスし切ってきた。ジャージ姿で髪もボサボサ。藤河のプライベート空間など世界一興味がないが、ミャーも藤河にべっとりし、ミャーミャー鳴いている事にショック。部屋の片隅にはネコ用のトイレ、ベッド、ハンモックまで完備。他細々としたおもちゃも新しく買って来たようで、本格的に飼い主の立場がない。ミャーを連れ戻すのは相当難しそうなのだが……。


「藤河、一応これがミャーのご飯。このネコ缶がお気に入りだから」

「お、おまえ、マウントとってるか。ミャーは俺の子だぞー!」

『そうよ! 私は七道おじ大好き!』

「ミャー、七道おじって何よ。若い女の子じゃないのよ」


 呆れてものも言えない。とはいえ、この部屋は独身男性らしく雑多で散らかっていた。オカルト雑誌や怪しい電磁波カットグッズもあり、引く。やっぱり相容れない男だが、ピザでも食べながら、ベラちゃん事件について話し合う事にまった。


 なぜか藤河も犯人逮捕に乗り気らしい。


「ミャーたんと暮らし始めてわかったぞ!」

「ちょ、ミャーたんって何? 藤河、よっぽどミャーにメロメロになってしまったのね!」


 本当に呆れるが、藤河はおかげでベラちゃんを殺した犯人が余計に許せなくなったらしい。自分なりに繁栄のミラクル聖母教につい調べた資料も泉美に見せてきた。分厚い資料で、正直泉美が調べた事以上のものはありそうだった。その上、ポスターまで作っていた。


「何これ、キリスト看板風?」


 藤河はポスターも見せてきたが、黒と白、黄色の配色がホラー風のデザインだった。「神は全部見ている。犯人よ、名乗りでなさい」と大きく書かれ、泉美が作ったものより、出来がいい。悔しいが、これは泉美も認めざるおえない。


『そうよ、泉美。宗教がらみの事は七道おじがプロなんだから、一緒にベラちゃんの捜査した方が効率良くない?』


 ミャーはいつの間にか泉美の足元に擦り寄り、提案もしてきた。


 泉美の頭の中の電卓は、「こんな変な陰謀論牧師と協力するなんてムリ!」という答えを出していたが、やっぱ可愛いミャーに言われると逆らえない。


『ベラちゃんの犯人を探しだしたら、泉美と和解してもいいわよ』


 ミャーは顎をつんと上げて偉そうだったが、この条件にみ逆らえない。そもそもなんでもミャーと喧嘩してたんだっけ?


 そんな事まで忘れそうになってきたが、今はとにかくベラちゃんの調査。これに関しては泉美の頭の中の電卓も「OK!」とゴーサインを出してきた。


「そうね。藤河の事は好きじゃないけど、ベラちゃんの件では協力しましょう」

「俺も水川なんて嫌いだがな」

「なんか言った?」


 また喧嘩になりそうになったが、ピザも注文し、二人ともお腹が減っている事に気づく。届くのは二十分ぐらいかかるらしいが、二人ともお腹の音がなり、喧嘩もやめる事にした。


 そして藤河は立ち上がり、胸も張る。


「ベラちゃんの犯人は必ず捕まえるぞ! 宣言したぞ。はじめに言葉があった。聖書の言う通り、俺も言葉にした」

『きゃー、七道おじ、その調子よ! 前向きに頑張りましょ!』

「おー!」


 藤河とミャーはすっかり悪ノリ。


 泉美はこの二人のテンションにはついていけなくなったが、壁に貼られた例のポスターと目があった。


「神は全部見ている。犯人よ、名乗りでなさい」と書いてある。ホラー風デザインは目を引き、確かにこれは犯人が見たら、肝が冷えるかもしれない。


 泉美は藤河のような牧師でもクリスチャンでもない。うっすらと宗教が嫌いな普通の日本人だ。神様がいるからどうかも分かっていないような普通のカフェ店長。


 それでも、このポスターを見ていたら、腹の底が燃えてきた。


 そうだ、絶対に悪事は神様も見逃す事はない。ベラちゃんの犯人も捕まる。その為のヒントも絶対に表にあるはずだ。もし、本当に正義の神様が存在するなら。

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