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プロローグ

 まさか。ネコが話すわけがない。そんな非科学的な事があってはいけない。


『泉美! 聞いて!』


 しかし、目の前にいる飼い猫のミャーは、確かに日本語を話していた。


 幻聴だろうか。ついに頭がおかしくなったのだろうか。水川泉美は、耳をほじくったが、やはり目の前の飼いネコは、日本語を話す。


『幻聴じゃないわよ。ネコと人間が会話するなんてフツーよ』


 ミャーの声は、鈴の音みたいに可愛く、夢ではなかったら、ずっと聞いていたいぐらい。


 泉美は、右手で頬をつねる。きっと夢なんだと思いたかってが、ヒリヒリと痛い。どうやら、目の前に起きている事は現実らしい?


「疲れてるのかしら、私」


 これでも泉美は、しっかり者で現実的なタイプだ。親から引き継いだカフェを経営していたが、現在はSNSも上手く活用し、新規客も増えてきた。お金の計算も大好きで、売り上げの帳簿をつけるのが実は一番至福の時間だ。何でも損得勘定で割り切るので、両親や友達からは「頭の中に電卓が入ってるでしょ?」と揶揄われる事も多い。


 今はその電卓を叩こうとそても、答えなど出るはずがない。「飼いネコが突然話し始めたんですが、なぜですか?」と聞いたらGoogleに答えがあるだろうか? AIも答えてくれる? チャットGPTどこ!?


 目の前にいるミャーは、相変わらずモフモフの綺麗な毛。黒く、光沢もあり、金色の目も美しい。元は野良とは思えないほどの美ネコだが。泉美の自慢の黒ネコなのに。


「いや。やっぱり疲れてる、私……」


 仕事のカフェ経営では、悪い口コミや嫌がらせも受けていた。カフェのある商店街では、万引き騒ぎもあった。それにアラフォーなのに、未だに独身で、母からのプレッシャーもある。今は彼氏すらいなのに、さっさと孫の顔を見せろという圧も。


 それに常連客の一人も問題があった。母の友達でもある北村麗奈の飼いネコが、行方不明になり、泉美もSNSで呼びかけたり、近所を見回ったり必死に探していた。名前はベラちゃん。シュッとしたクールな顔つきの三毛ネコだった。


 カフェにもベラちゃんの捜査願いのポスターも貼り、できる事は何でもしていたが、未だに良い結果がない。手がかりもなく、もう行方不明になってから半月以上たっていた。


 泉美はチラリと部屋の窓の外を見る。窓からは大きな満月も見えた。月の大きさからでも、ベラちゃんがいなくなった時間経過を考えてしまう。ミャーが日本語を話している事も、不可解すぎる。やっぱり疲れてる? アラフォーだが、老化が一気にきた?


『いいえ、現実よ! 遠くを見て現実逃避しないで、泉美! 私の話をよく聞いて』


 ミャーは日本語を話すだけでなく、聞き取る事もできるらしい。もう何が何だが。遠くを見るなという方が無理があるが、ミャーはとんでも無い事を言ってきた。


 ネコは人間ほど表情豊かでは無いと思い込んでいたが、今の目の前のミャーは、焦り、必死だった。目を見開き、熱っぽく飼い主の泉美に訴えていた。


『大変なのよ、泉美! ベラちゃんが事件に巻き込まれたかもしれない』

「どういう事?」

『動物のカン!』


 ミャーは毛を逆立て、尻尾も上にピンと張ってる。確かにこの尻尾はアンテナのよう。もしかしたら、何かを受信していた?


『もしかしたら、ベラちゃんは殺されたかもしれない』

「本当?」

『私の言う方向について来て! ベラちゃんを助けに行きましょう!』


 こうなったら、ミャーに付き合うしかないだろう。ネコと会話するなんて、頭おかしい事になった。泉美はこんな展開に笑えてきた。


【悲報】独身アラフォーのカフェ店長、ついに猫と会話し始める。


 ネットニュースの見出しみたいな言葉が頭の中でグルグルしていたが、この時の泉美はまだ笑える余裕があった。


 まさか、ネコと共に事件に巻き込まれてしまうとは、想像もしていなかった。しかも聖書とか宗教とかカルトとか、陰謀論や都市伝説みたいな奇妙な事件に。


【必見】独身アラフォーのカフェ店長、ネコの生贄儀式事件に巻き込まれてしまった!


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