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地には妖精、月には天使  作者: 仲島 鏡弥
Apostle Memory 1/3
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Apostle Memory 1/3

 №0122は周りから浮いていた。

 彼はひどく周囲を気にしている。誰かの視線を気にして、その視線から逃れるように行動している。彼を見れば、いつだって三角座りで部屋の隅で縮こまっている。そのくせ、使徒たちの多くいる、このロビーにいるのはいったいどういうつもりなのか。他を避けたいのなら自分の自室に籠ればいい。他と関わりたいのならロビーの隅で俯いている必要なんてない。

 変なの。

 №0199は、時折№0122を横目で見つめた。

 要は、彼のことが気になっていたんだと思う。№0199には彼の行動原理が理解できない。いったい彼はなにを考えているのだろう。

 そして時が経つ。

 バンシー討伐戦の時、彼は周囲の意見に準じてバンシーにたった一人で立ち向かった。まったく物怖じすることなく、たった一言だけ了解と呟いて、ヒートナイフをバンシーの胸に何度も突き刺した。

 誰もが無謀だと思ったに違いない。

 妖精獣にあれだけ近づいて五体満足で済むはずがない。№0122だってそう思った。だからこそ、№0199のあのような行動に疑問を抱いた。

 そしてたどり着いた答えは、彼には、誰よりも気高い勇気が備わっているということだった。

 だって死は痛いし、そして怖い。

 これは、教育の過程で叩きこまれるすべての使徒の根っこにある感情だ。死ぬことを恐れぬ使徒には多大な戦果は期待できず、天使様からの評価は死ぬたびに著しく下がり、評価いかんによっては階層を落とされてコンシャスネスリボーンシステムを使うことができなくなってしまう。

 だけど彼は立ち向かった。

 そして、勇気のない卑怯者たちには死という罰が下された。

 №0199の目から見て周囲から№0122が浮いているように見えたのは、周囲の使徒に比べて彼が他の誰よりも勇気のある人物だったからに違いない。

 彼に少しでも近づこうと思った。

 彼とわずかにでも言葉を交わせたら嬉しかった。

 だからこれは憧れだ。

 彼を見つめた時のこの胸の高鳴りも、彼の傍にいる時の高揚感も、きっと、憧れに由来するものに違いないのだ。

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