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地には妖精、月には天使  作者: 仲島 鏡弥
第3章 熾天使の涙
18/49

問い

 ずっと誰かが泣いている。

 頭の中で、すすり泣くような声が途切れることなく聞こえている。いつからだろう。自分の中に別の自分がいる。

 使徒の記憶を思い出した今、ある程度の記憶を掘り起こすことができる。

 バンシーを討伐し、あの叫び声を聞いてからなにかがおかしい。自分らしくない行動もあったし、自分の知らない記憶があるし、時折自分らしくない考えが浮かぶ。

 もしかしたら、あの叫び声を聞いた時、他の使徒と同じように自分も死んだのではないのか。

 死体になった自分の体を記憶ごとバンシーに乗っ取られた。バンシーの本来の能力は自分を殺した相手の意識を乗っ取ることだった。そう考えれば、バンシーが無抵抗に№0122の刃を受け入れたことにも多少の納得がいくというものだ。

 そして記憶が混在した。

 自分にないはずの記憶は、自分の本来のものであるかもしれない記憶は、いつだって泣いている。

 ベッドの上で縛り付けられている。注射針で何かを体に注入されている。体の変質に恐ろしい痛みが襲ってきて、涙が出て、それでも必死に叫び声を上げまいと歯を食いしばっていた。

 歯を食いしばっていられたのは、誰かが手を握ってくれていたから。

 声も思い出せない。

 顔も思い出せない。

 名前も、何だっただろう。

 君はいったい誰なんだろう。

 わからないことだらけだ。



 俺は、いったい誰なんだろう。

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