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「軟派で硬派な夏休み」

夏休みド真ん中。


なぜか学校のテニスコートで集合。

I民先生とO谷先生のいつもの

悪ノリコンビから誘いを受けて顔を出すと

4人でプレイをしていた。

ポーン、、、、ポーン、、、、。

黄色いテニスボールが行き交う。

「あはははっ。」

「きゃーっ。」

I民、O谷コンビとネットを挟んで

20代前半らしき女の子2人が

楽しそうに嬌声をあげている。


???誰???


ちゃんと白いスコートを履いている

だけあって、2人ともフォームが

しっかりしてなかなかキレのある

ショットを繰り出している。


近づいていくとO谷先生が

「いやいやいや、来ましたね。」

と笑顔を見せる。

プレイを中断して集まってきた。

「こんにちはー。」

女の子2人が明るい声を出す。

おお~、カワイイではないか。

「こんちはー。えーーっと、、、」

I民先生が2人を俺に紹介する。

「いやねー、この前お嬢さん達を見かけて

声をかけたんですよ。

いろいろ話してたら

テニス友達やっていうから

んじゃ今度ウチの学校のコートで

いっぺんやろか、ってね。

今日はテニス部の練習はないから。」


ええっ??

ナンパしてここへ連れてきたのっ??

お、おお~~い、こんな職権乱用って

聞いたことないぞお~。

なんちゅう大胆な遊びや、、、。

ま、カタイこと言わなくていっか。

それにしてもさっすが学校イチの

モテ男やなあ、I民先生は。

女の子の1人がやや興奮気味に話す。

「高校の先生~~??って

ちょっと疑ってたけどホンマやった!

レオ先生も若いですねえ。

いくつですか?

え? 23歳になったとこ?

いや、私らと同じやわっ!」

こうして5人での健康的なんだか、

不純なんだかよくわからない

フシギな夏の午後が過ぎてゆく。



彼女らを帰してO谷先生と別れた後、

I民先生が言う。

「レオ先生、今日は水泳部の指導は

ないんでしょ?

剣道部に遊びにきてくださいよー。」

I民先生は元5年連続剣道全国一の

スゴ腕である。


道場に入ると生徒らが練習している。

板の間を裸足で走るドタドタッ、

キュキュッ、という音、叫び声、

竹刀が面や銅を叩く乾いた音が交錯する。

「レオ先生、剣道やったことは?」

「いや、アニキの使ってた竹刀で

テキトーに素振りをやっただけで。」

「柔道は?」

「高校の授業での試合ではまあまあ

強かったですよ。

3年の時は7戦全勝。

大学(大体大)の授業では柔道部の

3段のやつと練習してて

時々技ありみたいに投げれました。」

「ほほおーーっ、

たいしたもんじゃないっスかっ。」


(38歳?でレーシック手術により

0.03だった視力が改善し、

友達ドミニク(現在のバンド仲間)の

勧めで彼が続けていた剛柔流空手を

7、8年続けて1級でやめた。

空手、ボクシングに興味があった。)


道着を借りて身に着ける。

なんだかちょっとウキウキする。

ちょっぴり武士になったような気分。

面を被ると視界がぐっと狭く、

不自然になって、閉塞感を感じる。

いつもおちゃらけているI民先生は

道着を着ると表情がキリッとして

さすが実力者の風格を備えている。

「これで素振りしてみてください。」

えーと、、、右足を前にして、

手は、、、こうかな。

足を前後に動かしながら

リズミカルに竹刀を振る。

「おおー、基本できてますね。

じゃ、組み手やってみましょうか。

おい、ちょっと来て。」

ひとりの生徒を手招きして呼ぶと

俺の相手をするように指示する。


ちょっとはにかんでいた彼だが、

動きはさすがにシャープだ。

単純な動きなのであろう俺は

面や銅を見よう見まねで打っても

かするくらいでなかなか

まともには当てられない。

剣道特有の掛け声とともに

面をバシーン!と打ち込まれると

痛いということはないけど、

やられたあ!という衝撃がある。

なんといっても他のスポーツでは

感じられない、相手と向かい合って

コーゲキし合うという

この原始的闘争本能を求められる

武道、格闘技というものは

奥の深い興味深い世界なんやなあ!

少し離れて対峙して竹刀を前にして

構え合うというのは

柔道とはまた違った緊迫感があって

ワクワクするものであった。

だって、考えてみてよ。

戦国の時代ではこれがホンモノの刀で

斬り合ってたわけで、

技量、経験の差でその場で一撃で

命を絶たれたりもしていたのだから。



のどかな夏空の下の平和なテニス。

本気の斬り合いの硬派な剣道。

今日はまったく違った2つの空間を

楽しませてもらえたのでした。


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