「Cheers!」
ついに最終回ですう。
ー前回からの続きー
土曜の昼。
約束の時間に港に行くとM田とJ坊が
もう来ていた。
「おおーっ! コレかあ!!
カーカーのマフラーの音スゲエ〜!」
「GPz1100! 初めて見たわあ!」
二人がコーフンして近寄ってくる。
「うわあ〜、おっきいなあ!
重さは何キロくらいなんですか?」
「乾燥重量で244キロ。
オイル類、バッテリー、工具、
ガソリンとか全部積んだ装備重量は
280キロ以上になるかなあ。
めっちゃ重たいで。」
「コカしたら起こすのタイヘンや。」
「J坊のはRZ250か。
乾燥で120キロ代やから倍やな。」
「ウッソー! 2台分かあ!」
「M田のはスーパーホーク3か。
おお〜、ピカピカやんか。」
自販機で缶コーヒーを買って、
岸壁をよじ登る。
「あ〜、めちゃええ天気やねえ。
レオ君、今日は保健の授業ないのに
わざわざ来てくれてありがとう。
いっぺんゆっくり話をしたくてね。」
M田は高校を卒業したらしばらく
オーストラリアへ行くそうだ。
希望に満ちた表情で話す。
コイツはガッツがある。
きっと大きく成長するやろう。
仲良しのJ坊は少し寂しそうだ。
1時間ほど話して別れた。
Z高校体育祭当日。
今日は授業の時のジャージと違って
オールディーズスタイルだ。
トイレの鏡を見ながらディップを
ベッタリ付けて髪をバックに。
ミラーサングラスをかける。
さあ、ダンスイベント本番だ!
廊下を歩いていくとすれ違う生徒が
どよめいている。
M橋先生が声をかけてくれる。
「レオ先生、踊られるんですね〜。
今日は特にカッコイイです!」
び、美女にホメられてやる気が出た。
グラウンドに出る。
丸く囲んで全校生徒約1500人が
見守る中、60'Sスタイルの生徒達と
ポジションにつく。
S田は少し化粧をしている。
「今日初めてお化粧してみて〜ん。
レオ先生、よろしくお願いします。
うわあ〜、緊張するわあ!」
チャックベリーの軽快なギター。
ジョニービーグッドが流れ出す。
最初はこのイベントに向けて
まとまりのなかった生徒達が
今、イキイキと踊っている。
毎週廊下で練習してきた成果だ!
男女向かい合って片足を軸にして
ツイスト。
男子が女子の手を取りリード。
派手な赤白水玉スカートの女子が
ターンすると裾が華やかに拡がる。
ボニーテールが揺れる。
全校生徒の大歓声に包まれながら
ダンス! ダンス! ダンス!
S田が楽しそうに笑っている。
曲が終わってフィニッシュポーズ。
やり終えた生徒達はコーフンして
肩を叩きあった。
「やった! やった! 大成功や!」
グラウンドに大きな拍手が
巻き起こった。
グラウンドから退場すると
生徒達が次々と写真を撮りたいと
やってくる。
大騒ぎだ。
「レオ先生、あのお〜、、、
お願いがあるんですけどお。
お姫様だっこしてもらえませんか?」
「だっこ? ああ、いいよ。」
S田はテレながら抱きついてきた。
翌年春、S田、M田らは卒業。
数カ月後、M田から絵ハガキが。
メルボルンからだった。
「レオ君、お元気ですか?
先生と港で話したこと、
そしてあのダンスイベント。
最高の想い出になりました!!
この国で自分に何ができるのか
これからゆっくり考えてみます。」
1990年春に初めての海外旅行で
ひとりでアメリカを1ヶ月近く
廻った俺はその強烈な
カルチャーショックから
帰国後すぐに飲食業未経験ながらも
アメリカンバー開業を決意。
8月、新装開店(2004年まで営業)。
そして秋。
カランカラン。
ドアに付けたベルが鳴った。
「ええーーーっ!!!
めちゃキレイなお店やあーん!
ああーっ!
レオ先生、白シャツなんか着てる!
バーテンダーやあ!」
「いらっしゃいませ。
いやあ〜、久々やなあ!
キミらが卒業して以来か。
T上はもう結婚してお母さんかあ。」
Z高校水泳部で指導していて
特に慕ってくれていたS田とT上が
店に来てくれたのだった。
「スゴいスゴい〜っ!」
二人はコーフンして店中を
見廻しながらカウンター席に座る。
やっと落ち着いてきた二人は
「カクテルって全然わかれへん。
先生、オススメ何かありますかあ?」
「お客さん、ここではワタシのことは
マスターと呼んでくださいよ〜。」
「わあ! マスターかあ!」
「うそうそ。
いつも通り先生でいいよ。」
カウンターの横に座っていた
常連のお客さんが驚く。
「ええーーっ!!!
マスターってもしかして
学校の先生やったんですか!?」
「いくつかの高校とかで
体育と保健の講師を3年してました。
彼女らは水泳部で教えてたんです。」
「へえーっ、体育??
そうかー、生徒さんなんやあ。」
「えーっと、オススメやったな。
それではステキな淑女には
ホワイトレディとビューティフル
なんかどうでしょうか?」
「わあー、ビューティフルやてえ!」
「もし他のお客さんに俺の
先生時代の悪口をしゃべったら
ダーティーマザーに変更やでえ。」
「ダーティーマザーって、、、
汚いお母さんやんかあ!」
「わははははっ!」
まえよりも少し大人びた二人と
カウンター越しに話しながら、
強烈な個性の妖怪教師達や
情熱的な生徒達と過ごした日々を
ゆったりと想い起こしていた。
「40年近く前のことをなあーんとか
想い出しながらストーリーに
書き起こすのは難しかったあ。
まさか32話も続くとは。
現在ではとても考えられないような
ハチャメチャなこともいろいろと
書いてきたけどまあ大目に見てねっ。
レオの刺激的な講師体験を楽しんで
もらえたのならウレシイです。」
新シリーズ「不死身??」で
またお会いしましょう。




