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「1500人の前でダンス?」

「あのお〜、レオ先生踊れますか?」

「ええっ! ダ、ダンスですかっ!」

「いきなりで申し訳ないのですが、

秋の文化祭で私に代わって生徒達と

踊ってもらえませんでしょうか?」

3年生のクラスで担任を持つ先生が

話があると体育教官室にまで

突然訪ねてきたのだ。


俺は去年の春、ここZ高校着任直後に

水泳部顧問だけど指導には自信がない

学校イチ美人と名高いM橋先生から

顧問代理を頼まれて、

彼女の美しさにクラクラしてしまい、

即座に「オマカセくださいっ!」

と引き受けてしまった。

3年から水泳部の部長となった女子

S田は自分のクラスの引っ込み思案な

担任が全校生徒の前で生徒と一緒に

ダンスをすることになって

頭を抱えていることを知り、

「レオ先生に代わってもらうように

頼んでみてはどうですか?」

と提案したのだった。

なんで会ったこともない先生らが

いろいろ俺に頼んでくるんやろ。

高校受験に向けての英語の家庭教師も

去年頼まれたしなあ。


見るからにおとなしそうな先生が

困った顔をして若造の俺に

頭を下げてきたのをとても

ほおっておくことはできずに

「わかりました。

代わって参加させて頂きます。」

と答えた。

うつむいていた先生は顔をパッと

輝かせて叫んだ。

「ええっ! ほ、本当ですかっ!

わあっ! 助かりますわー!

よかったあーー!

レオ先生ありがとうございますう!」

よっぽど悩んでたんやろなあ。


ダンスなんてやったことない。

でも高校の時からディスコには

よく行ってたし、

ライヴハウスで何回か200人近い

観客の前でロックのライヴをしたりで

人前でパフォーマンスをするのは

好きやから、まあなんとかなるやろ。

確かにダンスをしたこともないひとが

約1500人もの前で踊るというのは

相当緊張することなのかもな。


放課後にS田のクラスへと向かった。

男女生徒20人ほどが体育祭の

ダンスのための初のミーティングを

始めていた。

「レオです。

担任の先生の代わりにみんなと一緒に

参加することになったんよ。

よろしくね。」

ほとんどの生徒は初めて見る俺に

まったく無関心な様子だ。

ダンスの企画に乗り気でない生徒が

多いようで半分以上がミーティングに

出ることなくさっさと帰ってしまい、

こうして残っている生徒もほとんどが

あまり楽しそうじゃなかった。

無気力な表情の生徒が多い。

S田が走り寄ってきた。

「レオ先生来てくれたんやあ!

よかったあ!」

男子のM田とJ坊がリーダーシップを

発揮して、ダンスに使う曲の選択や

どういう振り付けにするかを

決めようとしていた。

でも活発な発言の出る話し合いには

ならず話はあまり進まずに終わった。

うーん、これは難航しそうやなあ。


翌週2回目のミーティングのために

教室に行くと10人くらいしか

いなかった。

多くの生徒はやる気がないようだ。

でもM田とJ坊はくじけない。

「曲はオールディーズでいこう。

60年代ファッションで。」

S田と、そしてもう1人前向きに

このダンスイベントを成功

させようと取り組む女子を加えた

メンバーを中心にまず曲を決めた。

チャックベリーの

ジョニービーグッド。

オールディーズの名曲であり、

この間大ヒットした映画

バックトゥーザフューチャーの

ダンスパーティーのシーンで

使われたばかりだし、

これはナイスな選択だろう。

S田がちょっと恥ずかしそうに

「レオ先生、私とペアに

なってもらえますか?」

と言ってきた。

「おおーっ。 喜んで。」

「やったっ!」

教室から廊下に出て、

男女が向かい合って踊ったり、

手をつないでターンしたり、

動きを検討した。

今日は参加人数は減ったものの

中心となるメンバーの熱意を

感じれていいミーティングだった。

その後2、3回練習してるうちに

参加する生徒が段々と増えてきて

放課後の廊下でのダンスの練習は

活気づいてきたのだった。


M田は長身でけっこうハンサムだけど

なぜかモテるという感じではない。

自然な振る舞いで好青年やのにな。

M田は俺に親しげに話しかけてきた。

「レオ君、ありがとう。

振り付け一生懸命考えてくれたり。

最近みんな練習楽しそうやわ。」

彼が時々俺を先生と言わずに

レオ君、と呼ぶのが気になっていた。

「おまえ、レオ君、てなあ。

近所のニイチャンと違うんやから。」

「わかってるよ、先生。

年が6つしか変わらん若い先生やから

ナメてる、とかとは違うんよ。

レオ君はこの学校の他のどの先生とも

全然違うねん。

俺にはわかるんよ。

だからレオ君はもちろん先生やけど

俺にとってはレオ君やねん。

ちゃんと他に誰かいる時は

レオ先生、って呼ぶよ。

いいでしょ?」

M田は意思の強さと純真さが

感じられる目で俺をじっと見つめた。

「そっか、、、わかった。」

「そうや、先生。

GPz1100に乗ってるって聞いたよ。

あれ、ゼロヨン加速11秒ちょっとで

世界一やんか!

スっゴいよねえー。」

「よー知ってるなあ。

めっちゃ速いでえ。

バイク好きなんか?」

「この前買ったとこ。

学校に乗ってきたらアカンけど

乗るのが禁止ということはないんよ。

レオ君、今週土曜ヒマ?

俺のバイク見てくださいよ。」


  ー続くー


次回「講師生活奮戦記」

ついに最終回。

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