「みんなどうかしてるで」
「きりぃーつ 礼 着席。」
いつも通り1年生の保健の授業を始める。
今日のポイントになる部分を黒板に
書いていくと、小さい音で
教室の前側のドアがノックされた。
え? なんやろ? 誰?
ドアを開けると2人の女子生徒が
ニコニコして立っている。
2、3ヶ月前に廊下を歩いている時に
話しかけてきた3年生だ。
「何曜日に学校に来てるんですか?
そうかー、木曜に1年生だけ
受け持ってるんやあ。
私らも教えてほしかったですう。
レオ先生のファンなんです。」
「ファ、ファン??」
それからというものどこから
見ているのか、中庭や廊下を
歩いていると毎週のように現れて
楽しそうに話しかけてくるのだった。
「ええっ? キミらか。
なんや? どうしたんや?」
教室の生徒全員が何事かと
じっと見守っている。
「あのお〜〜、コレを渡したくて。」
両手で差し出してきたのは
チョコレートだった。
「初めて2人でつくったんです。
よかったら食べてください。」
バレンタインデーかあ!
「あ、ありがとう。
いや、なんで今持ってくるねん!
もう授業始まってるやないかあ。
はよ教室に戻り。」
「ごめんなさい。
今日中に先生に会えるかどうか
わからんかったから。
失礼しましたあ〜。」
ペコッと頭を下げると2人は
「きゃあっ! やったやったあー!」
と小さく叫んで廊下を走っていった。
ドアを閉めて振り返ると
生徒らが大騒ぎした。
「先生! モテモテやなあ!」
「ヒューヒューっ!」
「あのひとら3年生でしょー?」
「知ってるひとですかー?」
「うーーん、
俺のファンなんやってさ。
さあさあ、授業続けるぞー。」
もう〜、、、収拾つかへんがなあ。」
学生時代は全然モテなかった。
つきあってたカノジョから以外は
義理チョコしかもらったことない。
年の変わらない若い先生というのは
まあオジサンの先生よりは
よく見えるんやろか?
授業が終わって体育教官室に戻る。
学校で一番のモテ男と言われる
I民先生と、去年の体育科主任の
ヌリカベT田先生がバカ話で
盛り上がっていた。
ふと見るとI民先生の机の端には
5、6個チョコレートが置いてある。
このひとほんまにフザケてるけど、
全校集会とかで真面目に話すと
堂々としててやっぱりカッコイイし、
ずうっとモテてきてるんやろなあ。
T田先生の机にチョコレートはなく、
保健体育科指導要領、
スポーツルールブックの隣に並べて
立て掛けてあるのは、、、
「団地妻シリーズ 痴女の誘惑」。
オイオイーーーっ!!!
なんでこんなビデオを
教官室にフツーに置いてるねん!!!
ここには生徒もたまに入ってくるのに。
授業中にチョコレートを
渡しに来る生徒といい、この先生といい、
ホンマにこの学校の感覚は
いったい どうなってるんやろ???
放課後に体育館で全教員の集合写真を撮影。
卒業アルバムに載せるものだ。
中2から喫茶店に入り浸って月1回くらい
学校の塀を乗り越えて3時限目から
登校したりだった俺がまさか
教員の側としてこんな写真に残るとは。
もうちょっとでこの高校に赴任して
1年になるのかあ。




