「クリスマスディナー」
「先生! 72点でした!」
玄関のドアを開けて迎え入れてくれた
タケシ君がコーフンして報告する。
体育と保健の講師なのになぜか、
目前に迫ってきた高校受験に向けての
英語の家庭教師を始めることになって2週間。
まだ5回しかレッスンしてないにしては
まあまあのデキと言えるんやろか。
「英語で70点代なんて1年の時以来
初めてです!
いやーめっちゃうれしいわー。
この前の中間テストは34点でした。
2年になってから今までいつも30か40点代、
たま〜に50点代みたいな。」
「おお〜、よかったやんか。
そのテスト見せてよ。
間違えたとことわからんかったとこを
確認しとこ。
あー、、、これな。
Haveのあとのgave。」
「これの答は何ですか?」
「givenやんか。」
「あ、そうか!
give gave gave と違うんやったあ〜。」
「んでこのswiming。」
「これはなんで間違いなんやろ?」
「mが重ならなあかんねんよ。」
「あーそうか、しまった!」
「あとこれ。
somethingじゃなくて
疑問文の場合は、、、?」
「えーっと、、、
ああ、anythingかあ!」
「凡ミスがいくつかあるやろ?
これだけであと6点取れてるやん。
わからん問題とか時間がかかりそうな問題は
後回しにして、最後に残った時間で
ゆっくり考えるんや。
んで全部書き終えてから最後に落ち着いて
もう1回全部見直してみる。」
「時間がなくなってきて
ちょっと慌ててしまいました。」
「でもたいしたもんやで。
努力がちゃんと結果に出てるよ。」
「やったあーっ!」
リビングからお母さんが声をかけてくる。
「さあさあ〜、
おっきいタケシ、小さいタケシ、
ゴハンできたよお〜!」
「お、おっきいタケシ?? 俺?」
「小さいタケシやて。
クラスで1番身長高いのにな〜。」
おっきいタケシかあ。
まあ、たまたま同じタケシやもんな。
お母さんは相変わらず
アダムスファミリーのママか
妖怪人間ベムのベラのように
アイシャドウがすごく濃く、色気ムンムンだ。
毎回いつもゴチソーを頂く。
今日はテーブルの真ん中にどおお〜ん!と
丸ごとの七面鳥が置かれている。
お母さんがオーブンで焼いたものだ。
「もうクリスマスでしょ、先生。
タケシねー、
先生に教えてもらうようになってから
英語が楽しくなった、って
すっごく喜んでるんですよ〜。
ホントにありがとうございますう。」
「ほんまにめっちゃイヤやったのに
ちょっとわかってきたら面白くて。」
「タケシ、ねえ小さいタケシ、
七面鳥は英語でなんて言うの?」
「えーと、、、ダックかな。」
「それはカモやな。 ターキーやで。」
「ああ! そうワイルドターキーですね!
ちょっとキツイけど好きですねん。
先生、今度ゆっくり飲みたいですね〜。」
「あ、ハイ。 いいですねえ、ぜひ。」
「うーわっ! お母さん、
このターキーめっちゃ美味しいわ〜。」
「いいよな、タケシ君。
お母さん明るくて、キレイやし、
料理すっごく上手やしな〜。
このスパゲティもグラタンも
店で出してるものみたいに美味しいよね。」
「先生、そんな、、、もっと言うてください。
スパゲティおかわりどうぞお〜。」
夕食が終わり、タケシ君の部屋に
移動しようとするとお母さんが言う。
「先生、今日はもう勉強おいときましょ。
さっそくテストの点も上がったし。
クリスマスでしょ。 気分転換。 ねっ。」
「ええ?」
「カラオケしましょ。
先生、歌は得意ですか?」
「カラオケ!
はあ、ロックバンドでギターとキーボードと
ヴォーカルをやってたんで、
まあフツーには、、、。
でも近所にカラオケボックスとか
あるんですか?」
「い〜え〜、ここでするんですよ。」
なんと高価で一般家庭には
まったく出回っていないであろう
レーザーディスクカラオケの
立派なプレイヤーがリビングにあった。
「先生、オフコース歌えますう?」




