「英語を学ぶ意義」
ー前回からの続きー
初の英語科の家庭教師。
体育大学を出てまさか英語を教える
機会が訪れるとは、、、。
まったく予想もしていなかった家族の
暖かい夕食の団欒に加えてもらって
すごくリラックスできたなあ。
さてと、ここからが本番だ。
まさかの俺と同姓同名という
タケシ君の部屋に移る。
高校受験まで2ヶ月もなく、
10数回のレッスンで英語が苦手な
彼を合格させるにはどうすべきか?
中学3年間で習う内容全てを復習する
時間などもちろんない。
ムダを省いた重要ポイントの抜粋と
期間内の進行具合、時間配分は
イメージトレーニングできている。
重要ポイントは3つだけだ。
1; I am、There isなど
Be動詞を使う文章と、
I go、She goesなど
Do動詞を使う文章の
肯定文から否定文、疑問文への変化の法則。
2; それにWhat、WhereなどWから始まる
5つの代名詞とHow、の5W1Hを加えた
文章の作成。
3; 2つの関連する文章を1つにまとめた時の
時間に関する単語の変化。(時制の一致)
これだけマスターしたらけっこう
基本はできたことになると思う。
英語の専門の学校ではない普通科の受験なら
これで合格するはず。
でもそれを彼に教える前に
するべきことがあるのだ。
リビングからタケシ君の部屋に移る。
椅子に座ると緊張した面持ちですぐに
筆記用具の用意を始めるタケシ君を制する。
「ノートとか出すのはあとでいいよ。
なあ、英語の授業は難しい?」
「え? あ、はい、1年の時は簡単やったけど
なんか急に難しくなってきて、、、。」
「そうか。 でも大丈夫やで。
さっき感じたけどキミにはひとの話を素直に
聴き入れる吸収力と集中力があると思うよ。
英語以外の成績がまあまあというなら
理解力は充分あるはずや。
もしかして英語の授業がわからなくなってきて
なんで日本人やのにこんな自分に関係のない
外国のことばを勉強せなあかんねん、
ってなんかナットクいかない気持ちが
大きくなってきてない?」
「ええーっ!
なんでそんなことわかるんですか!」
「なんかそんな気がしてね。
イヤイヤ勉強してたらなかなか覚えられないよ。
でも授業はどんどん先に進むから
さらにわからなくなるんよな。」
「数学なんかは答がわかったら
クイズが解けたみたいで楽しいって
感じたりするんやけど、
英語は勉強する必要あるんかな?って
思ったりします。」
「やっぱりそうか、、、。
映画は好き? 外国の映画。」
「あー、最近観てないけど好きです。
もうすぐバックトゥザフューチャー
っていうやつやるから受験勉強中やけど
気分転換に映画館に行こうかと思ってます。」
「あれ、アメリカで大ヒットしてるよねえ。
好きな映画の登場人物がしゃべる
英語のセリフがちょっとだけわかったら
楽しいと思えへん?
長い文章は難しくても短いひとことだけでも。
うわー! なんだコリャっ??、とか。」
「そりゃ日本人の吹き替えじゃなくて
俳優本人がしゃべってることばがわかったら
ずっとリアルですよね。」
「そうやろ。
音楽でもそうやんか。
メロディを聴くだけでもいいなあって
感じてる曲の歌詞の意味がわかれば
ああ! こんなことを伝えてるんや!
ってさらにその曲を深く理解できて
好きになったりできるんとちがう?」
「うわあー、ホンマやあ。」
「英語は受験のために作られたものとは違う。
日本語と同じ、意思や感情をひとに伝える
大切なものや。
東京のテレビとかメディアが発信することばが
日本の標準語やろ?
めちゃ方言のきつい東北や九州とかの
片田舎に住んでるひとにだって通じる。
英語は世界の標準語みたいなもんや。
この1つのことばさえ理解できたら
世界中の全てということはないけど、
遠い遠いいろんな国のひととも
意思の疎通ができるんや。
すごいと思えへんか?
これから高校に行って今までより
ずっと広い範囲の友達との交流が始まるよ。
さらに将来は仕事に就いて、
他府県の知り合いも増えていって、
もしいつか外国の知り合いもできて
いろんな見たことのない世界の話、
興味深いシゲキ的な話を生の英語で
聴かせてもらえたりするなら
英語も勉強する価値があるんとちゃうか?」
「先生! ホンマですねえ!
それってスゴいわ!」
タケシ君の目がみるみる輝き始めた。
「ちなみにこの前な、友達とミナミで
初めて白人の2人組の女のコに
飲みに行こうって声かけてみてん。」
「へえーっ! ど、どうなりましたっ?」
「フランス語わかる?って訊かれて、
ジュテームしかわからん、って答えたら
フラレたあ。」
「アハハハハッ! 残念!
先生はこれからフランス語も
勉強せなあきませんねえ!」




