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「Fragile」

Z高校水泳部のS田との文通は続いていた。

(第15部分参照)


カレシS堂との交際のことで悩んでいることを

なぜか水泳部顧問代理の俺に相談してきた。

それからはS堂とのことだけでなく

他愛もない日々の出来事を月に1、2回、

便箋3枚くらいに楽しそうに

綴ってくるのだった。

彼女のピッタリした競技用水着での

大人びた体型からは不釣り合いに思える

丸みがかった字での幼い文面や

子ネコのイラスト。

高2という大人と子どもの間の時期。

繊細な精神状態の彼女を傷つけないように

ことばを選んで明るい文面で返信する。

一体なんで俺は生徒と文通なんて

するようになったんやろう?

S田は俺にまさかの告白をしてきたT上と

一番の親友だ。

(第14部分参照)

T上にはもちろん、水泳部部員全員に

ナイショの文通。

「バイクの後ろに乗せてもらえませんか?」

ある時、手紙にそう書かれていた。

うう〜〜ん、、、。


日曜の昼にS田の家からの最寄り駅で

待ち合わせした。

すがすがしい秋晴れだ。

学校の外で会うのも、

お互いの私服を見るのも初めて。

バイクで走ったら寒いからジャケットを

羽織ってこい、と伝えておいた。

ミニスカートを履いてきている。

「うわあーーっ!

こんなおっきいの乗ってるんやあ。」

「GPz1100っていうねん。」

「1100?

ナナハンより大きいの?」

「そうやで。」

エンジンをかける。

カーカーの集合マフラーから野太い排気音が

吐き出されるとS田は身を固くしてビビった。

「先生、ゆっくり行ってやあ。」

「安全運転や、安心しろ。

こうやって腰に腕を廻して。」

15分ほど走って港に着く。


「最初ちょっと怖かったけど

風がすごく気持ちよかったですう。」

岸壁に座って缶コーヒーを飲む。

沖を白いボートがゆっくり進んでいく。


「レオ先生、初体験って何歳でしたか?」

「え? ええーーっ!!

おまえ、いきなり何を言うて、、。」

からかってると思って彼女の方を向くと

真剣な表情で俺をじっと見つめていた。

「、、、高3や。

同じクラスの子で向こうも初めてやった。

キスは高1。」

「高3かあ、、、。

S堂さん、大学に行くんです。

春からは今までみたいには

会えなくなるのかなあ。

この前キスして、、、胸を触ってきて

やっぱり怖くなって拒んだら

ちょっと怒っちゃって、、、。

俺のこと好きとちゃうんか?って。

それから電話でも気まずいし、

会ってないんです。

今、すごく不安で、、、。」

彼女が涙ぐんでいる。

「そうか、、、。

まあ、あいつもおまえがどう思ってるのか

わからんから悩んでるんちゃうかなあ。

落ち着いてなんとか会って素直に話してみ。」

彼女の背中をポンポンと叩く。

「先生、ごめんなさい。

ヘンなこと言うて。

話を聴いてもらってなんかスッキリしました。

えへへ。

なんか恥ずかしいわあ〜。」

S田は涙を拭うと顔を上げてニッコリ笑った。


港をあとにする。

S田はもうバイクに慣れたようで

リラックスして乗っている。

駅までもうすぐだ。

S田が俺の腰に廻した腕にギューッと

力を入れてきた。

エンジンを止めて静かになる。

「レオ先生、

今日は会ってくれてありがとう。」


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