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「乙女ゴコロ」

秋になり、プールが使えなくなった水泳部に

春までトレーニングとして器械体操の

床運動を教えることになって数週間が過ぎた。

プールにさえもたまにしか練習しに

来てなかった3年男子1人と1年男子1人は

残念ながら全く顔を出さなくなったらしい。

俺が学校に行く木曜には2年女子の

キャプテンS田と仲良しのT上は必ず、

2年女子のあとの3人は2回に1回ほど

練習しに来ていた。


筑波大学卒のT見先生(女)は器械体操で

高校時代から地域ではトップクラスで

有名だったし、F田先生はなんとっ

オリンピックの補欠選手だった!と聞いて

腰を抜かしそうになった。

そんな2人には比べようもない

低いレベルの俺だけど、

道具を使う球技や、対戦相手がいる格闘技

などと違って自分の体の動きだけを

コントロールする器械体操の指導をして

水泳での動きに役立てられると

感じることはできた。



たかが前転や後転の練習といえど、

全身のスムーズな動きの連動と柔軟性、

回転運動に対するバランス、

そしてつま先まで伸ばすことなど

姿勢保持に対する高い集中力が必要とされる。


倒立で歩く、というのはバランスをキープして

安定してリズムよく進むのが難しいけど、

その場で動かずに立ち続けるのはさらに難しい。

お尻をグッと締めてつま先まで伸ばして

全身の筋肉を棒状に固くする。

前に倒れそうになると開いた指先に力を入れて、

手前に倒れそうになると少し肘を曲げて

手の平の手前の方に力を入れてバランスを保つ。


慣れない運動に苦戦しながらも部員たちは

少しずつ上達するのを肌で感じて

楽しんでいるようだった。

達成感、自信は運動のためだけでなく

自己を成長させるのに重要だと思う。



ある日、部活動のあとにT上に誘われて、

S田と一緒にT上家に夕飯を頂くことに。

水間鉄道に初めて乗車。

まるで30、40年前にタイムスリップ

したような駅舎や車両の造りにコーフンした。

同じ大阪でも地域によっていろんな顔が

あるんやなあ、と改めて感じる。


昔ながらの平和な空気が漂うT上家に

上がらせてもらい、

お好み焼きをゴチソーになる。

「いや〜、

ホンマにお若い先生ですねえ!

この子がいつもすごく面白くて

カッコイイ先生やねんで〜、って言うてますよ。

水泳の練習も楽しくなったみたいで

よかったですわ。

最近は器械体操まで教えて頂いて。

いつもいろいろお世話になって

ありがとうございます。」

「もお〜、ちょっとお母さん!

喋りすぎやわあーーっ!!」

T上のほっぺたがいつも以上に

まっ赤になるのを見てS田が笑う。

「あはははっ!

アンタ、赤ちゃんみたいやでえ〜。」

和やかなひと時を終えて

S田と2人で再び水間鉄道に乗る。


「お母さん、感じいいひとやなあ。

ビールまで出してもらって。」

「レオ先生、あのお〜、、、。

ちょっと相談とかあるんやけど、

手紙送らせてもらっていいですか?

水泳部のみんなにはナイショで。」

「手紙?? あー、いいよ。」



数日後S田から手紙が届いた。

水泳部の3年とつきあって数ヶ月経った先日

キスをされて、彼のことは好きだけど

少し怖い気持ちもあってすごく戸惑っている、

とのことだった。

う〜〜ん、俺にこんな繊細なこと

相談してくるとはなあ、、、。


それから月に1、2回彼女から

手紙が送られてくるようになった。

他愛もない日々の出来事を

思いつくまま書いているような。

まあ俺もきちんと返事は書くから

生徒と文通をするということに

なってしまったのだった。

彼女の一番の親友であり、

この前俺にまさかの告白をしてきた

T上(14部分参照)にさえもナイショで。


う〜〜ん、なんだかなあ〜、、、。


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